テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.06.19

世界一「肥満が多い」国はどこなのか?

 世界で一番肥満の人が多い国はどこだと思いますか? ファストフードが豊富なアメリカと思う人も多いかもしれませんが、実はアメリカが肥満トップクラスというわけではありません。CIA(アメリカ中央情報局)が191の国と地域の肥満率をまとめた情報によると、アメリカは24位に留まっていることが分かります。上位3位に名前を連ねたのはアメリカ領サモア、ナウル、クック諸島などの南の島国だったのです。

世界一肥満が多い国はどんな国?

 ランキングトップのアメリカ領サモアは太平洋に浮かぶ小さな島国ですが、2007年時点の成人肥満率は74.6%と、世界で一番肥満が多い国といわれています。それはポリネシア人がもともと太りやすいこと、野菜や魚を中心とした食事から欧米の食文化が変化したことが大きな理由なのです。

 実はランキング上位10国のうち9国は島国。かつては自給自足が基本の質素な生活をしていた島国が、食の欧米化によって肥満人口が増加したという例は少なくありません。こうした国に暮らす人びとはもともと多くのカロリーを摂取しない生活だったために、遺伝的に肥満になりやすい体質を持っていることも大きな要因のひとつです。

 しかし、粗食が基本の日本人も食の欧米化によって太りやすくなってはいるはずですが、日本の肥満度は約5%で191か国中156位と、ランキングのかなり下位に位置しています。ここで見られるのは価値観の違いで、日本は痩せ型の方が良いという風潮がありますが、ランキング上位の国では太っていることが富や豊かさを象徴することもあり肥満がポジティブに受け入れられる傾向にあるのです。

 しかし、肥満が増えすぎたことで国民の健康が害される問題も起きていて、肥満を減少させるためにさまざまな取り組みを行っている国もあります。

肥満を減らすために

 2013年、肥満が深刻化するサモアの航空会社は世界初の「体重別運賃」を導入しました。1kgごとに単価を設定して乗客と荷物の重さで航空券の価格が決まるという、肥満に歯止めをかけるビジネスを始めたのです。痩せれば運賃も安くなるこの試み、少しでも痩せて運賃を節約したいという倹約心をくすぐるユニークな試みといえるでしょう。

 また、ノルウェーやアメリカの一部、タイやインドが導入している砂糖税も肥満対策の一環。清涼飲料水など砂糖が含まれている食品に税金を課すことで、なるべく抑制しようというものです。実際、メキシコでは砂糖税の導入によってソフトドリンクの売上が減少していて、一定の結果が出ているといわれています。

貧困地域で深刻化する肥満も

 肥満が多い国で肥満を減らしていこうという動きがある中、見過ごしてはいけない深刻な問題があります。多くの貧しい途上国では、飢餓が深刻な問題と思われがちですが、その一方で肥満も課題となっているのです。

 貧困地域では食事にお金をかけられないため、子どもの頃に充分な栄養を得られず発育に影響を及ぼすことも少なくありません。それが飢餓の問題を招いているのも事実ですが、そんな幼少時代を過ごしてしまうと代謝機能がおかしくなり、食べ過ぎや運動不足で肥満になりやすくなってしまいます。この悪循環が世代を超えて続き、負の連鎖を断ち切れずにいることが、今もなお大きな問題になっているのです。

 いま世界的に深刻な問題となっている肥満。私たちを取り囲む環境は油断すると肥満になってしまうリスクが高くなっていますが、肥満になってしまうと病気のリスクも高まってしまいます。日々の生活の中で肥満にならないように気を付けるようにしましょう。

<参考サイト>
・世界・成人の肥満率ランキング(CIA版)│世界ランキング
http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2228R.html
・世界初!肥満の人が多い国サモア航空が、体重別運賃を導入│なんとかしなきゃ!プロジェクト
https://www.jica.go.jp/nantokashinakya/sekatopix/article0104/
・肥満と飢餓の「深い関係」│国連WFP
https://ja.news.wfp.org/18-45-86e4da49faec
・砂糖税、チョコレート税、ジャンクフード税ーー世界の「肥満拡散」は防げるのか?│AMP
https://amp.review/2018/07/09/sugar-tax-2/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(1)ChatGPT生みの親の半生

ChatGPTを生みだしたOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの進化・発展によって急速に変化している世界の情報環境だが、今その中心にいる人物といっていいだろう。今回のシリーズでは、サム・アルトマンの才能や彼をとりまくアメ...
収録日:2024/03/13
追加日:2024/04/19
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
2

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元

日本語の発音は、漢字到来以来一千年の歴史を通してどう変わってきたのか。また、なぜ日本語は「文明語」として世界に名だたる存在といえるのか。二つの疑問を解き明かす日本語学者として釘貫亨氏をお招きした。1回目は古代日本...
収録日:2023/12/01
追加日:2024/03/08
釘貫亨
名古屋大学名誉教授
3

歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える

歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える

運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」

歴史における「運」とはどういうものだろうか。例えば、富裕と貧困という問題について、「運」で決まるのか、あるいは「運」とは異なる努力、教養、道徳などの要素で決まるのかという点でも、思想家たちの考え方は分かれる。第1...
収録日:2024/03/06
追加日:2024/04/18
山内昌之
東京大学名誉教授
4

急成長するインドネシアとトルコ、その理由と歴史的背景

急成長するインドネシアとトルコ、その理由と歴史的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(3)インドネシアの成長とトルコの外交力

グローバル・サウスの中でも高度経済成長を遂げているのがインドネシアだ。長期のスカルノ時代とスハルト時代を経てその後に民主化が進んだ、東南アジアで最大のイスラム教国である。また、トルコは多国間に接する地理的特性と...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/17
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?

ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?

和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1

日本古来の詩の形式である和歌。しかし、その中身について詳しく知っている人は少ないのではないだろうか。渡部泰明氏が和歌のレトリックについて解説するシリーズレクチャー。第一弾である今回は枕詞についてで、その知られざ...
収録日:2019/03/11
追加日:2019/06/15
渡部泰明
東京大学名誉教授