テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.07.07

なぜ日本の禁煙レベルは世界でも最低なのか?

 2020年4月1日より全面施行される改正された健康増進法はご存じでしょうか。オリンピック開催に合わせて、望まない受動喫煙を防止するため、禁煙はマナーからルールになったということができます。では、具体的にどんなルールになるのか見ていくことにしましょう。

受動喫煙を防止するためのルール

 改正法の施行は、2020年に向けて段階的に進められる予定となっており、一部の施設(学校・病院・児童福祉施設等、行政機関)における原則敷地内禁煙は2019年7月から施行されます。ちなみに、今年(2019年)の1月から、喫煙する際の周囲の状況への配慮義務はすでに施行されています。

 まとめると、
・多くの施設において屋内が原則禁煙
・20再未満は喫煙エリアへの立ち入り禁止
・屋内での喫煙には喫煙室の設置が必要
・喫煙室には標識掲示が義務付け

 ちなみに、罰則としては施設管理者は50万円以下の過料、喫煙者は30万円以下の過料という行政処分が科せられます。

まだまだ「禁煙後進国」といえるニッポン

 こうした改正健康増進法が施行されたとしても、日本は国際的なレベルで公衆の集まる場における屋内全面禁煙義務の第二段階に留まっています。公衆の集まる場所として定義されるのは、医療施設、大学以外の学校、大学、行政機関、事業所、飲食店、バー、公共交通機関です。国際的にはこの8種類全てに屋内全面禁煙義務がある国は55あるのに対して、日本は改正してようやく4種類(学校・病院・児童福祉施設等、行政機関)になったという状況なのです。改正前は、国際的なレベルで最低ラインでした。

 このように、まだまだ「禁煙後進国」といえるニッポンなのですが、なぜ、全面禁煙が進まないのでしょうか?

全面禁煙が進まない、その理由は?

 たばこの煙を吸うことで健康上の害があることは、今や周知の事実となっています。それにも関わらず、「禁煙推進運動」や「受動喫煙対策」をしようとすると、立法を担う国会で賛否の議論がぶつかり合うという事態に。健康増進法改正においても、厚生労働省と自民党との間で調整が難航していたことを思い出すまでもないでしょう。

 全面禁煙が進まない、その理由としては、第一に、利権と税収があげられます。

 日本においては、国が売っているともいえる「たばこ産業法」とその利権、たばこ税収の総額は国・地方を合わせると平成28年度総額で2兆1,154億円、総税収の約3%に及びます。なかなかインパクトのある数値であることは理解いただけるのではないでしょうか。禁煙の趨勢から生産数の減少に対して、税をあげることで凌いでるといったところでしょうか。

 第二に、喫煙の文化、習慣を擁護し、嫌煙権運動をファシズムになぞらえて発言するようになった「知識人」の存在もあげておきましょう。

 日本国内においては、こうした喫煙派、禁煙派の議論の決着がつかない状況であり、喫煙が及ぼす健康的なリスクのエビデンスが積み上がりつつ、オリンピック開催からの国際的な禁煙ムーブメントに後押しされている現状のようです。

<参考サイト>
・厚生労働省:受動喫煙対策
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000189195.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授