社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
大人の学び方とリベラルアーツの必要性
AIやIT技術、医療、社会制度など、生活に関わるあらゆる面で多くの事象が大変なスピードで変化し、それに伴って価値観も変化する時代です。そうした変化の時代、不確実性の時代に対応するため、あるいはその中にあって揺らぎのない自分ならではの意見や見方を身につけたい。こうした欲求から「大人の学び」やより深く幅広い教養・リベラルアーツを身につけたいという傾向も、強まってきているようです。東京大学の教授陣が、「教養とは何だろうか。教養を身につけるためには何をどう学べばいいのだろうか」という疑問に答えるべく『大人になるためのリベラルアーツ:思考演習12題』(東京大学出版会)をまとめたのも、こうしたニーズを受けてのことといえるでしょう。
また、知識を覚える、暗記することにこだわらないというのも大人の学びのコツの一つです。今や、ネットを通じてさまざまな知識にたどり着くことができますし、何度でも読み返すことができます。なので、そうした知識を自分の頭に格納することにはこだわらず、むしろ、そのような知識を自分の「知恵」に替えていくことが重要なのです。
つまり、得た知識は単なる素材や材料であって、そのままではおいしい料理にはなりません。自分なりに素材の特徴を把握したり、組み合わせや調理の仕方を工夫する。要するに、素材である知識を使って、自分なりに考えて掘り下げて、他者に説明できるようにもなる。こうすることで、知識という材料は味わい深い知恵になる。他の人に提供すると「おいしい」と言ってもらえる価値を生む、ということなのです。
狭い分野にこだわるより、一見関係なさそうな分野を学ぶことで、意外な共通項や新たな価値に気がつくかもしれません。そういう意味でも、大人の学びには人文科学・社会科学・自然科学・芸術といった複数の分野に橋をかけるようにして学ぶリベラルアーツが不可欠なのです。
知識を本やネットの中のだけのものにしておかない。自身の経験と照らし合わせながら、視野を広くもって、学び続ける。これこそが大人の学び方であり、その有効手段としてリベラルアーツ的な知へのアプローチがあるといえるでしょう。
学生は学問や知識を就職のためだけのツールにはせず、社会人はいくつになっても学びを継続していくことで、学んだ知識を生き生きとしたものにしていく。そして、学生も社会人も、分野という垣根を越えたリベラルアーツを一生の友にしたいものです。
大人には大人の学び方がある
しかし、「大人には、学生時代とは異なる大人ならではの学び方がある」と言うのは、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授で経済学者の柳川範之氏です。柳川氏が勧める大人の学び方は、まず「休み休み勉強する」ということ。大人には大人の事情、仕事や家庭の事情というものがあり、いざ勉強しようと思っても時間がとれないことがしばしばあります。柳川氏は、「途中で中断してもいい。中断しながらでも、止めずに続けていくことが大事であり自信にもなる」と言います。また、知識を覚える、暗記することにこだわらないというのも大人の学びのコツの一つです。今や、ネットを通じてさまざまな知識にたどり着くことができますし、何度でも読み返すことができます。なので、そうした知識を自分の頭に格納することにはこだわらず、むしろ、そのような知識を自分の「知恵」に替えていくことが重要なのです。
つまり、得た知識は単なる素材や材料であって、そのままではおいしい料理にはなりません。自分なりに素材の特徴を把握したり、組み合わせや調理の仕方を工夫する。要するに、素材である知識を使って、自分なりに考えて掘り下げて、他者に説明できるようにもなる。こうすることで、知識という材料は味わい深い知恵になる。他の人に提供すると「おいしい」と言ってもらえる価値を生む、ということなのです。
異分野を広く学ぶことの意味
また、こうして自分なりに知識を深めていく際に必要なのが、いろいろな異なる分野の知識を結びつけることだと柳川氏は言います。自分の得意分野や専門分野だけで学びを深めても、それは新しい価値創造には結びつきにくい。いわゆる「専門バカ」になってしまう可能性すらあります。狭い分野にこだわるより、一見関係なさそうな分野を学ぶことで、意外な共通項や新たな価値に気がつくかもしれません。そういう意味でも、大人の学びには人文科学・社会科学・自然科学・芸術といった複数の分野に橋をかけるようにして学ぶリベラルアーツが不可欠なのです。
知識を本やネットの中のだけのものにしておかない。自身の経験と照らし合わせながら、視野を広くもって、学び続ける。これこそが大人の学び方であり、その有効手段としてリベラルアーツ的な知へのアプローチがあるといえるでしょう。
リベラルアーツで一生学ぶ
より豊かな経験を積んだことを学びに生かす。この大人の学び方を、東京大学では学生にも体得させるべく、後期教養課程というプログラムを導入しているそうです。通常は、大学に入って最初の2年間、1、2年生のうちは教養学部に所属するのですが、この後期教養課程では、3、4年生になってある程度専門の知識を学んでから教養課程の広い分野の科目をとるというものだそうです。つまり、経験を積んだ社会人が、その経験や専門知識にこだわらず幅広い分野の教養に触れて、自らの知の財産に新しい命を吹き込む大人の学び直しスタイルを、大学のプログラムで実践しているわけです。学生は学問や知識を就職のためだけのツールにはせず、社会人はいくつになっても学びを継続していくことで、学んだ知識を生き生きとしたものにしていく。そして、学生も社会人も、分野という垣根を越えたリベラルアーツを一生の友にしたいものです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12


