テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.08.08

日本人はなぜ「白い肌」に憧れるのか?

 「色の白いは七難隠す」と言われるほど、日本人女性は“色白”こそが美肌の象徴とされてきました。化粧品売り場を覗けば“美白”を謳う商品であふれています。なぜ日本人は、これほどまでに美白を愛するのでしょうか。日本人の美白意識の根源と、世界各国の“美肌”事情について調べてみました。

日本人が美白を求めた理由

 日本人が「白い肌になりたい」と強く意識したのは今から約1300年前、飛鳥・奈良時代のころ。仏教を始めとする大陸文化とともに、多くの化粧品や化粧法が中国から日本へ伝えられたことがきっかけでした。

 輸入された化粧品の中でも特に評判だったのが、鉛で作られた「鉛白粉(おしろい)」。それまで使われていた米や貝殻の白粉よりもはるかに美しく仕上がることや、大陸文化への憧れもあいまって、宮中の女性を中心にもてはやされます。

 平安時代になるとより真っ白に、繊細に塗り上げることが良しとされ、男性を含め貴族達はおしみなく白粉を塗って肌を白くしました。白粉は高級品でしたので、白い肌は美しさであると同時にステータスの象徴でもあったのです。また、中国の書物にたびたび「白い肌」が美女の象徴として描かれていたため(かの楊貴妃も色白だったといいます)「肌の白さは美しさ」という概念が定着。日本人の美白信仰は、こうした貴族たちの美白への憧れから始まったのです。

 時代が移るにつれ、白く塗る美白から素肌美を追求する風潮が生まれ、1300年のうちに美意識・美容法は大きく変化していきます。しかし「肌の白さ」への思いそのものは今も変わらず、脈々と私たちに受け継がれているのです。

“小麦色の肌”がクローズアップされた時代も

 1000年の時を通じて美白への憧れが根強い日本人ですが、日焼けした「小麦色の肌」が人気となった時代もありました。

 小麦色の肌にスポットライトが当たったのは昭和40年代、日本人全員がイケイケだった高度成長期のこと。素肌に近い、ナチュラルメイクにトレンドが移りつつあるころ、「太陽に愛されよう」というコンセプトのもと資生堂が打ち出したサマーキャンペーンが大ヒット。“夏は小麦色の肌”という考え方が広まりました。同時に日焼けできない人はブラウン系のファンデーションを使うという風潮まで生まれます。

 今でこそ紫外線ダメージの懸念から抵抗を感じる人が多い「小麦色の肌」ですが、各化粧品会社の戦略が功を奏して、最先端のオシャレとして受け止められていたのです。

色白は不健康? 世界の美肌事情

 日本では色白がよしとされていますが、世界ではどのような肌が美しいとされているのでしょうか。

 まず中国や韓国、タイのようなアジア圏では、日本と同じく色白が好まれる傾向のようです。しかしアメリカをはじめとする欧米やブラジルのような南米では、色白よりも小麦色の肌のほうが良い印象を与えることが多く、肌が焼けている=アクティブで健康的、バカンスを楽しめる富裕層というイメージになるそうです。日本とは真逆ですね。

 肌の色だけではなく日本では「うらやましい」と感じる高い鼻や小顔に関しても、欧米人にとってはコンプレックスにあたる人も多いとか。美意識の違いから、お国柄の違いも見えてきそうですね。

<参考サイト>
・ポーラ文化研究所「美白の化粧文化史」(ポーラオルビスホールディングズHP)
https://www.po-holdings.co.jp/csr/culture/bunken/facial3/index.html
・小麦肌は「リア充」の証!?ちょっと不思議な欧米肌事情(TABIZIN)
https://tabizine.jp/2015/07/22/38647/
・国によって異なる「美の基準」 - 外国人に聞いてみました
https://news.mynavi.jp/article/20130426-a263/
・平安貴族も戦国武将も 男はみんな「化粧好き」だった(NIKKEI STYLE)
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO18826040T10C17A7W11301/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に

世界では「創造性がどれくらい大事か」という問題意識が今、急激に高まっている。創造性とは全ての人にあり、偏差値などでは絶対に計れない、まさに無限軸の創造性のこと。そうした創造性を育む学びが「STEAM教育」である。最終...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/18
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
2

なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか

なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景

国際的に見て、政府の債務残高が大きい日本。その背景には、バブル崩壊後の財政赤字を取り戻せていないことがあった。その一方で、預金残高も高い日本。所得が低いのに預金が多い日本の謎を解説する。(全4話中第2話)
※...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
3

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
4

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率

日本の政治史を見る上で地理的条件は外せない。「島国」という、外圧から離れて安心をもたらす環境と、「山がち」という大きな権力が生まれにくく拡張しにくい風土である。特に日本の国土は韓国やバルカン半島よりも高い割合の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/15
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
5

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い

外交とは国益を最大化しなければいけないのだが……。35年にもわたる外交官経験を持つ小原氏が8年がかりで書き上げた著書『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)。小原氏曰く、外交とは「つかみどころのないほど裾野が広い...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/05
小原雅博
東京大学名誉教授