社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.12.05

コンビニより多い「マッサージ業」の現実

 たまった疲れを解消するためにマッサージ院や鍼灸院、整骨院や整体院を利用している人は少なくないはず。これらマッサージ業の店舗数が日本全国にいったいどのくらいあるかご存知ですか。実は驚くべき数の店舗があります。

 マッサージ業のお店はなぜそれほどに多いのか。開業障壁が低いからなのか、はたまた高齢化社会やストレス社会による需要の高まりからなのか。マッサージ業の経営の実態をリサーチしました。

店舗数はコンビニの2倍以上

 厚生労働省の統計によると、マッサージ業の店舗数は13万6千カ所以上(2016年)でした。日本フランチャイズチェーン協会によれば、コンビニエンスストアの店舗数が5万5千店舗ほど(2018年11月)なので、マッサージ業の店舗数はコンビニの2倍をはるかに超えていることになります。これは驚くべき数です。

 ところで冒頭にも書いたように、マッサージ業といえば、マッサージ院、鍼灸院、整骨院、整体院などがあります。おそらくマッサージ院と鍼灸院は分かるかもしれませんが、整骨院と整体院の区別はつきますか。

整骨院と整体院の違い

 はじめに整骨院について説明します。整骨院は、接骨院や柔道整復師施術所とも呼ばれ、柔道整復師という国家資格者が施術します。痛みの発症している部分に対して温熱パック、低周波治療器などを用いて治療するのが一般的です。限定的ではありますが、保険が適用される施術もあります。また、脱臼を治療できることも特徴です。

 整骨院が部分を処置するのに対して整体院は、筋肉のコリをほぐしたり、ゆがみを矯正することで体全体のバランスを整えていきます。整体院では保険は適用されません。

なぜお店がこんなにも多いのか

 さて、本題に戻ります。どうしてマッサージ業のお店はこんなにも多いのか。おそらく一番大きな理由は開業のしやすさにあります。初期投資があまりかからない点が魅力です。サービスの内容によりますが、自宅の一室からスタートでき、資格もいりません。

 東京商工リサーチによると、資格が必要な柔道整復師についても「柔道整復師はかつては養成校卒業後、5~10年ほど実務勤務した後、独立開業することが一般的だったが、最近は卒業生の約2割が資格を取得直後、すぐに開業」することが多いのだそうです。さらに、「十分な知識や経験がないまま、不正行為に手を染めるケースもある」とのことです。

倒産は10年で最多、前年比36.7%増

 もっとおおもとを探ると、もともと国は柔道整復師養成校などの設立数を制限していたのですが、1998年に規制緩和し、これによって学校が急増し、人材もたくさん輩出されるようになりました。

 しかしながら、参入しやすいということは、それだけライバルも多いということ。東京商工リサーチによると、昨年2018年のマッサージ業の倒産は93件で前年比36.7%増となり大幅に増加。2009年以降の10年間では最多、5年連続で前年を上回りました。

 店舗数の増加の勢いは今のところ収まる様子はありません。競争が熾烈なだけに、どこも生き残りに必死で、「~に効きます」「~が治ります」といった事実とは異なる不正な広告を出すお店もあるようです。現在進行形で厚生労働省が広告ガイドライン作りを進めていますが、お店を探すときは皆さんもどうぞ気をつけてください。

<参考サイト>
・マッサージ業・接骨院の倒産が激増 過当競争で不正広告や不正請求も横行
https://www.sankeibiz.jp/business/news/190117/bsd1901170645002-n1.htm
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か

アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
2

近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ

近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性

ますます進む高齢化社会において医療を根本的に転換する必要があると言う長谷川氏。高齢者を支援する医療はもちろん、悪い箇所を見つけて除去・修理する近代医学から統合医療への転換が求められる中、今後世界の医学をリードす...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/19
3

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方

人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
4

島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本

島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本

編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは

ある国について、あるいはその社会についての詳細な実状は、なかなか外側からではわからないところがあります。やはり、その国についてよくよく知るためには、そこに住んでみるのがいちばんでしょう。さらにいえば、たんに住む...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/20
5

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授