テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.12.08

ネットで炎上しないための「マナー」とは?

 暴言、失言、犯罪自慢、バイトテロ、デマ、煽り……、これらは全て炎上のもとです。炎上はこれまでにもさまざまな問題を起こしてきました。バイトテロの動画がアップされたことによって炎上が起き、店舗が損害を受けた事件も記憶に新しいところです。また、犯罪事件への義憤に駆られた人たちのデマにより、全く関係のない人や組織が攻撃を受ける被害が生じるといった事態も起きています。また、あえて炎上させて売る「炎上商法」や「炎上マーケティング」といった言葉もあります。いずれにしろ、「炎上」は気持ちのいいものではありません。では、なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか。

承認欲求と自己顕示欲は炎上を呼ぶ

 まず意図せずして起こる炎上について考えてみましょう。インターネットだと見えるのは目の前の画面だけです。バイトテロにしても、本人は仲間内での遊びやちょっとした憂さ晴らしといったように、気軽なものかも知れません。また「ちょっとだけ自分のことを誰かに知ってほしい」といった軽い承認欲求や、「自分はこんなこともできるんだ」という自己顕示欲もあるかもしれません。しかし、インターネットでの発言や行動は、その画面の先にいる数千、数万の人の目に留まります。また炎上させるネタを探しているような人たちも画面の向こうには潜んでいます。さらに、ネット上に一度発言したものは、転載されて長く残り、しばらく経ってから発言が掘り出されて炎上するといったことも起こります。こうして一度火がつくと手の打ちようがありません。

稼ぐためにあえて炎上を狙う

 もう一つは、もっと積極的に自己顕示欲や承認欲を全面的に押し出して、あえて過激な発言や行動をする人たちです。この手のものは過激で陰惨なものになることもあります。こういった投稿が起きるのはYouTubeで特に多いようです。凶悪な犯罪の現場から事件直後に動画配信したり、あえて犯罪行為を行って炎上を起こしたりするといったものが挙げられます。こういった類の炎上に関しては、自己顕示や承認の欲求というよりも、むしろ稼ぐ手段としての側面も強いことは知っておいたほうがいいでしょう。YouTubeはアクセス数などに応じて広告収入が入ることもあり、こういった過激な内容でアクセス数を稼ぐ人たちがいます。

暴言のリスクは計り知れない

 また、現実の場面での小さなつぶやきは誰にも届きませんが、Twitterでのつぶやきは、無数の人にダイレクトに届きます。私たちはなかなか感覚的にこの事実を感じ取ることができません。できることは、これまでの出来事からリスクを「学び、知る」ことだけです。結果に対する想像力の欠如から炎上は起きます。単に自分のアカウントが炎上するだけならまだましかもしれません。もし炎上に加われば、集団の心理を刺激して他の誰かを追い詰めるといった、いわゆる集団リンチに加担することもありえます。集団リンチを正当化する理由はありません。たとえ義憤からの発言だとしても同じです。

ネット上の怒りはスワイプして閉じていい

 ネット上では匿名性の高さから、身勝手だったり、激しかったりするようなさまざまな意見が飛び交っています。こういった言葉に感情を刺激されて同じ土俵に上がれば、あとは巻き込まれて心を乱され続けるだけです。ネットの表現は吐き捨てるようなものが多く、感情的になってしまいます。だからこそ、冷静になりましょう。また、営利目的の過激な言葉や動画に心を痛める必要もありません。そういったものに触れたら、スワイプして閉じることが最善の策です。

マナーは現実と変わらない

 炎上は発信する人間のモラルが問われます。インターネットは無機的な世界ですが、利用しているのは人間です。現実で人が周囲にいればやらないことは、コンピュータを介したネット上でも同じです。マナーがない行動は他者を不快にさせます。炎上を防ぐには現実と同じように「自分勝手で人が嫌がる、嫌な気持ちになることはやらない」ことしかないと思われます。また、マナーに欠けた人がいれば、また現実と同様に関わる必要はありません。

<参考サイト>
炎上望むYouTuber、過激化の危うい実態~川崎事件から考える|現代ビジネス
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65028
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道

機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01
木下康司
元財務事務次官
2

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

地政学入門 ヨーロッパ編(9)EUの深化・拡大とトルコの問題

国際政治の理論として国同士の経済交流、相互依存が安全保障、つまり平和を維持できると伝統的に考えられてきたが、今般の国際政治ではそれは必ずしも当てはまらないようだ。そこでEUの問題である。国の垣根を越えて世界国家に...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/30
小原雅博
東京大学名誉教授
3

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ

反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
柿埜真吾
経済学者
4

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か

昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
與那覇潤
評論家
5

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション

私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授