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DATE/ 2020.01.07

災害大国・日本で生きていくための防災の心構え

 トンボを意味する「あきづ」に由来する秋津島、花や実、葉を編んでつくる飾りにあやかった花綵(はなづな)列島。いずれも美しい自然に恵まれている日本に与えられた呼称です。しかし、このように呼ばれる自然豊かな日本は、常に自然の脅威にさらされている「災害大国」でもある。私たちはこのことを強く認識しなければなりません。

防災の心構え1:相手を知る

 防災にはもちろん「備え」が重要なのですが、大きな自然災害で必ず聞かれるのが「想定外」ということです。多くの災害は私たちの想定範囲を超えた被害をもたらします。この「想定外」の事態をできるだけ軽減するためには、まず「相手を知る」ということが重要です。相手を知る、つまり地震、台風などによる風水害、火山の噴火、雪害など、各災害の特徴を知っておくことが重要だと、各防災のスペシャリストたちは提言しています。

 その災害はどうやって起こるのか、どのような条件化で規模が大きくなるのか、どんなタイプがあるのか、時間経過に伴いどのような影響が考えられるか。このような知識があると無いでは、防災意識も、また、実際に災害に直面したときの行動も違ってくるはずです。

 たとえば、「異常気象」といった言葉がしばしば聞かれ、その大きな原因として地球の温暖化傾向が挙げられます。この温暖化問題は、「国連気候行動サミット2019」でスウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさんがスピーチで訴えたように、早急にかつ長期的に取り組むべき地球規模の問題です。しかし、異常気象は温暖化のような気候変化だけが原因で起こるのではありません。長期的な気候変化に、年ごとの激しい気候変動が重なることが思いがけない異常気象を引き起こすのです。このことを知れば、もはや「異常」気象は特別視するものではなく発生は必然のもの、と意識が変わるでしょう。

 また、地球温暖化に伴い、雪については「暖冬少雪」傾向にあると言われていますが、むしろ日本では近年2メートルを超える多量の積雪をたびたび記録しています。いわゆる豪雪地帯でなくても、南岸低気圧の影響で関東の平野部に大雪をもたらすといったことも珍しくなくなってきました。

 そのほかにも、地震については日本では世界平均の約10倍の地震が起こっている。海で起こるプレート境界地震は比較的頻繁に起こる。対する陸の地殻内地震は頻度もまれで規模も小さいことが多いが、都市部で直下型地震になると甚大な被害を及ぼす。以上のような基本的な知識は地震に限らずどんな災害についても持っておくべきことなのです。

防災の心構え2:災害は必ず起こると認識する

 各災害について基本的な知識を身に付けたら、次のポイントは「災害は必ず起こる」と常に認識すること。それは「早めに避難、しっかり逃げる」の心構えにも通じます。

 大災害として東北を中心に大きな傷跡を残したのが2011年の東日本大震災です。多くの方が地震、津波の犠牲となりました。実は、工学者で防災研究に詳しい東京大学大学院情報学環特任教授の片田敏孝氏は、三陸沿岸には100年周期で海溝型地震が発生していることに早くから着目していました。そのため、震災の8年ほど前から釜石市の学童に対して、いざというときは「とにかく逃げる、しっかり逃げる」という防災教育を行っていたのです。

 あの震災の日、釜石にも容赦ない津波が襲いましたが、子どもたちは片田氏の教え通りにとにかく高台に向かって走り続けました。波にのまれる自分の家を目にして家族を心配する小学生を、「後ろを振り返るな」と中学生が励まし皆で走り続けたそうです。その結果、釜石の学童約3000人が無事に避難できました。

 どの防災専門家も、「自分だけは大丈夫」とか「避難しても何事もなく空振りに終わるんじゃないか」といった考えは捨てるべきだと力説します。地震でも土砂災害でも台風でも、「必ず起こる」「早めに避難」。これが防災の鉄則です。

2人の学者のメッセージ

 最後に、防災の重要ポイント「知る」「必ず起こる」について、2人の学者の言葉をご紹介しておきましょう。物理学者、そして雪の研究の第一人者である中谷宇吉郎は「雪は天から送られた手紙である」と言っています。ほんの一片の雪の結晶にも、自然全体のメッセージが込められているのです。そこに、次に何が来るのか、いつ頃起こり得るのかのヒントが隠されているかもしれません。

 また、科学者で随筆家としても知られる寺田寅彦は、しばしば「天災は忘れた頃にやってくる」と口にし、防災意識を常に持っていることの重要性を説きました。「自然災害はいつわが身に降りかかってもおかしくない」と強く意識すること。こうした意識を持って被害を最小限にくいとめることが、今まで災害で犠牲になった方々への供養にもつながるのではないでしょうか。
(10MTV編集部)

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