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DATE/ 2020.02.20

訪日中国人は日本で何を検索しているのか?

中国人は“百度”で日本の何を調べている?

 世界的な影響力を持つIT企業といえば、アメリカの代表的な4社の頭文字を取った“GAFA”を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。Google、Amazon、Facebook、Appleは日本でもよく知られていますよね。実は現在、この4社をしのぐ勢いの企業が中国の“BATH”です。こちらは百度(バイドゥ)、阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング)、騰訊控股(テンセント)、華為技術(ファーウェイ)の4社の頭文字を取っています。近年はBATHの4社もよく耳にしますよね。

 BATHの一角に上げられる百度は、「中国のGoogle」と呼ばれるようにウェブサービス全般を提供しており、特に検索エンジンは中国人なら知らない人はいないといえるほどです。そんな百度の日本法人である百度ジャパンが、2019年12月25日に訪日中国人の百度検索動向ランキングを発表しました。これは2019年1月1日から12月15日までの期間、日本における中国人が百度検索で検索した結果を統計し都道府県、観光地・名所、グルメ、アニメの4分野について順位づけしたものです。

 今回はこのランキングの中でも訪日旅行に関わりが深い都道府県、観光地・名所、グルメのランキングをご紹介します。

2019年の百度ジャパン検索ランキング

 それでは、発表されたランキングを前年の2018年の結果と比較しながら見てみましょう。

 まず都道府県ランキングは以下のようになりました。

1位:北海道
2位:東京都
3位:京都府
4位:沖縄県
5位:大阪府

 前年3位の北海道が初の1位を獲得。これは2022年の冬季オリンピック・パラリンピックが北京で開催されることから、中国国内でウィンタースポーツへの関心が高まっているためと考えられます。前年5位の東京都が2位に浮上しているのも、東京オリンピック・パラリンピック開催イヤーだからなのでしょう。前年1位の大阪府は5位に後退しましたが、梅田や心斎橋のようなより細かいエリア名での検索は変わらず多いです。また、東京都周辺の横浜、伊豆、軽井沢などの検索も増加しています。

 次に、観光地・名所ランキングは以下のようになりました。

1位:河口湖
2位:富士山
3位:東京スカイツリー
4位:皇居
5位:お台場

 前年3位の河口湖が初の1位を獲得。また、富士山が2年ぶりに5位圏内に返り咲きました。観光地・名所ランキングは入れ替わりが多く、前年の5位圏内で2019年もランクインしたのは河口湖と前年1位の皇居のみ。元号が令和に変わったこともあり、皇居への関心は変わらず強いようで、皇居正門から二重橋濠に架かる正門鉄橋と正門石橋の総称である二重橋も多く検索されました。

 続いて、グルメランキングは以下のようになりました。

1位:うどん
2位:和牛
3位:みそ汁
4位:温泉卵
5位:タイ焼き

 こちらも入れ替わりが激しいグルメランキングで、1位に輝いたのはうどんです。そんな中、前年3位の和牛は2年連続、前年1位のみそ汁は3年連続で5位圏内にランクインと、健闘しています。特にブランド牛への注目度は高いようで、兵庫県の神戸牛や三重県の松坂牛なども多く検索されています。

詳細な検索をする「日本通」の中国人が増加

 こうしてランキングを見てみると、たとえば都道府県では大都市の東京都や大阪府に留まらず、北海道から沖縄県まで広い範囲に中国人の興味が示される結果となりました。これに加えてより詳細なエリアや都市の検索も増加し、それが東京都からさらに一足伸ばした地域にまで広がっている点からも、関心が周辺地域にまで拡大していることがわかります。

 実はアニメランキングでも、おなじみのナルトやワンピースを抑えて、文豪たちが異能力で戦う「文豪ストレイドッグス」が1位にランクインしており、日本に詳しい「日本通」の中国人が増えていることを物語っています。

 オリンピック・パラリンピック開催で日本中が盛り上がる今年は、中国人の関心もさらに高まるでしょう。訪日中国人がさらに日本を好きになってくれるよう、このランキングからおもてなしのヒントを読み取って役立てていきたいですね。

<参考サイト>
・百度ジャパン 中国人は日本の何が好き?? Baidu Japan、2019年訪日中国人の検索動向ランキング発表
https://www.baidu.jp/info/906/
・JPRIME 次なるGAFAはどこから?中国BATHはいかに?
https://j-prime.jp/archives/168
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授