テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.05.24

全ての悩みは対人関係にあり~「アドラー心理学」って?


 ズバリ「対人関係に悩む人」には、ぜひアドラー心理学をお勧めしたい。アドラーは、「すべての悩みは対人関係の課題である」と言っている。対人関係について考え抜いた人なのだ。この世は、対人関係に悩む人ばかりだろう。つまり、ほとんどの人にアドラー心理学は有用というわけだ。

 さらに、アドラーは「自己啓発の父」とも言われている。いま、書店に並ぶ多種多様な自己啓発書は、どこかでアドラー心理学に影響を受けているのだ。他の自己啓発書を読む前に、アドラー心理学を押さえておいて損はない。


この1・2年、「アドラー心理学」が流行している

 『嫌われる勇気』というタイトルの本を見たことはないだろうか。2年前の発売以来、長らくベストセラーとなっており、書店に行けば目立つところに置いてあることが多い。この本が扱っているのは、アドラーという人が創った「アドラー心理学」というものだ。『嫌われる勇気』をきっかけに、この1~2年、アドラー心理学はブームとなっており、多くの関連書が発売されている。


アドラーは承認欲求を否定する!

 では、アドラーはいったいどのようなことを言っているのだろうか。その一端を紹介していきたい。

 第一に、アドラー心理学は、他者から承認を求めることを否定する。相手から承認を求めてはいけないというのだ。これは、特に「承認欲求」が大事だと考える人々にとっては、驚きの考え方だろう。

 相手を他人と比較してはいけない、一番大切なのは他者を評価しないということだ、といった主張もしている。誰とも競争することなく、ただ前を向いて歩いていけばいいというのが、アドラーの考え方なのだ。他者と自分を比較したりせず、他者への貢献、共同体への貢献を続けていくことが、幸せになる方法だ。そして、そのためには何よりも「勇気」が必要なのだとアドラーは説いている。

 アドラーの語る「勇気」「共同体」「貢献」などは、ここではとても説明し尽くせない。他にも、アドラーはさまざまなことを語っている。気になる方は、『嫌われる勇気』などをぜひ読んでいただきたい。


コーチングやファシリテーションの源流にアドラーがいる

 なぜいま、アドラー心理学が日本でこれほど流行しているのか。理由はいくつか考えられる。間違いないのは、昨今の自己啓発ブームが、ようやく源流に辿り着いたということだ。さらには、何かと周囲と比較しがちな日本社会に必要な考え方だという一面もあるだろう。

 最近、ビジネスの世界で流行している「コーチング」や「ファシリテーション」などの源流に、アドラー心理学があることも影響しているかもしれない。アドラーはドイツ人だが、ドイツ以上にアメリカで広まってきた経緯がある。アメリカのビジネス技術とともに、アドラー心理学も流れ込んできたのだ。

 自己啓発やコーチングが日本に根づきつつあることを考えると、アドラー心理学の流行は一過性で終わらず、今後も長く続くだろう。『嫌われる勇気』の人気が落ちないのが、何よりの理由だ。

<参考文献>
・『勇気はいかに回復されるのか』(アルフレッド・アドラー著、岸見一郎訳 アルテ出版社)
・『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著 ダイヤモンド社)
・『アドラー 人生を生き抜く心理学』(岸見一郎著 NHK出版)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ハミルトン経済学の継承者クレイのビジョンと歴史的影響

ハミルトン経済学の継承者クレイのビジョンと歴史的影響

米国派経済学の礎…ハミルトンとクレイ(2)クレイの米国システム

歴史への回帰――トランプ第2次政権がその復活を標榜するのは、1820年代に登場したヘンリー・クレイの「米国システム」だった。そこには高関税、国内インフラの開発、第二合衆国銀行の設立という3つの柱があった。それによって、1...
収録日:2025/05/15
追加日:2025/07/15
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
2

胆のう結石、胆のうポリープ…胆のうの仕組みと治療の実際

胆のう結石、胆のうポリープ…胆のうの仕組みと治療の実際

胆のうの病気~続・がんと治療の基礎知識(1)胆のうの役割と胆石治療

消化にとって重要な臓器「胆のう」。この胆のうにはどのような仕組みがあり、どのような病気になる可能性があるのだろうか。その機能、役割についてあまり知る機会のない胆のう。「サイレントストーン」とも呼ばれる、見つけづ...
収録日:2024/07/19
追加日:2025/07/14
糸井隆夫
東京医科大学病院 消化器内科 主任教授
3

私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える

私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える

進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態

宗教の起源について、進化生物学はどう考えるか。イギリスの自然人類学者ロビン・ダンバーの著書『宗教の起源』によると、宗教はヒトにとって普遍的な現象であり、そこには脳が大きな役割を果たしているが、文化の影響も否めな...
収録日:2023/12/20
追加日:2024/01/30
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長
4

ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは

ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは

ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか

オープンAI(マイクロソフト)の「ChatGPT」やグーグルの「Bard」は、“対話型の生成AI”と呼ばれ、私たちの質問に対して分かりやすい文章で答えてくれる。一見すると、ChatGPTも「考えて」答えを返してきているように見える。し...
収録日:2023/03/15
追加日:2023/05/18
西垣通
東京大学名誉教授
5

スターバックスのコンセプトは「サードプレイス」

スターバックスのコンセプトは「サードプレイス」

ストーリーとしての競争戦略(6)事例に見る経営者の戦略

一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建氏が、ホットペッパーとスターバックスを事例として、コンセプトの重要性を解説する。スターバックスやホットペッパーは、「第3の場所」・「狭域情報」といったコンセプトを的確に...
収録日:2017/05/25
追加日:2017/07/18
楠木建
一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授