社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
全ての悩みは対人関係にあり~「アドラー心理学」って?
ズバリ「対人関係に悩む人」には、ぜひアドラー心理学をお勧めしたい。アドラーは、「すべての悩みは対人関係の課題である」と言っている。対人関係について考え抜いた人なのだ。この世は、対人関係に悩む人ばかりだろう。つまり、ほとんどの人にアドラー心理学は有用というわけだ。
さらに、アドラーは「自己啓発の父」とも言われている。いま、書店に並ぶ多種多様な自己啓発書は、どこかでアドラー心理学に影響を受けているのだ。他の自己啓発書を読む前に、アドラー心理学を押さえておいて損はない。
この1・2年、「アドラー心理学」が流行している
『嫌われる勇気』というタイトルの本を見たことはないだろうか。2年前の発売以来、長らくベストセラーとなっており、書店に行けば目立つところに置いてあることが多い。この本が扱っているのは、アドラーという人が創った「アドラー心理学」というものだ。『嫌われる勇気』をきっかけに、この1~2年、アドラー心理学はブームとなっており、多くの関連書が発売されている。アドラーは承認欲求を否定する!
では、アドラーはいったいどのようなことを言っているのだろうか。その一端を紹介していきたい。第一に、アドラー心理学は、他者から承認を求めることを否定する。相手から承認を求めてはいけないというのだ。これは、特に「承認欲求」が大事だと考える人々にとっては、驚きの考え方だろう。
相手を他人と比較してはいけない、一番大切なのは他者を評価しないということだ、といった主張もしている。誰とも競争することなく、ただ前を向いて歩いていけばいいというのが、アドラーの考え方なのだ。他者と自分を比較したりせず、他者への貢献、共同体への貢献を続けていくことが、幸せになる方法だ。そして、そのためには何よりも「勇気」が必要なのだとアドラーは説いている。
アドラーの語る「勇気」「共同体」「貢献」などは、ここではとても説明し尽くせない。他にも、アドラーはさまざまなことを語っている。気になる方は、『嫌われる勇気』などをぜひ読んでいただきたい。
コーチングやファシリテーションの源流にアドラーがいる
なぜいま、アドラー心理学が日本でこれほど流行しているのか。理由はいくつか考えられる。間違いないのは、昨今の自己啓発ブームが、ようやく源流に辿り着いたということだ。さらには、何かと周囲と比較しがちな日本社会に必要な考え方だという一面もあるだろう。最近、ビジネスの世界で流行している「コーチング」や「ファシリテーション」などの源流に、アドラー心理学があることも影響しているかもしれない。アドラーはドイツ人だが、ドイツ以上にアメリカで広まってきた経緯がある。アメリカのビジネス技術とともに、アドラー心理学も流れ込んできたのだ。
自己啓発やコーチングが日本に根づきつつあることを考えると、アドラー心理学の流行は一過性で終わらず、今後も長く続くだろう。『嫌われる勇気』の人気が落ちないのが、何よりの理由だ。
<参考文献>
・『勇気はいかに回復されるのか』(アルフレッド・アドラー著、岸見一郎訳 アルテ出版社)
・『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著 ダイヤモンド社)
・『アドラー 人生を生き抜く心理学』(岸見一郎著 NHK出版)
・『勇気はいかに回復されるのか』(アルフレッド・アドラー著、岸見一郎訳 アルテ出版社)
・『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著 ダイヤモンド社)
・『アドラー 人生を生き抜く心理学』(岸見一郎著 NHK出版)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?
東洋思想を研究する中で、50年間追求してきた命題の解を得たと田口佳史氏は言う。また、その命題を得るきっかけとなったのは松下幸之助との出会いだった。果たしてその命題とは何か、生涯の研究となる東洋思想とどのように結び...
収録日:2024/09/19
追加日:2024/11/21
次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂
今求められるリーダー像とは(3)原敬と松下幸之助…成功の要点
猛獣型リーダーの典型として、ジェネラリスト原敬を忘れてはならない。ジャーナリスト、官僚、実業家、政治家として、いずれも目覚ましい実績を上げた彼の人生は「賊軍」出身というレッテルから始まった。世界を見る目を養い、...
収録日:2024/09/26
追加日:2024/11/20
冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う
ポスト冷戦の終焉と日本政治(1)「偽りの和解」と「対テロ戦争」の時代
これから世界は激動の時代を迎える。その見通しを持ったのは冷戦終焉がしきりに叫ばれていた時だ――中西輝政氏はこう話す。多くの人びとが冷戦終焉後の世界に期待を寄せる中、アメリカやヨーロッパ諸国、またロシアや同じく共産...
収録日:2023/05/24
追加日:2023/06/27
遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
『江戸名所図会』を手がかりに江戸時代の人々の暮らしぶりをひもとく本シリーズ。今回は、遊郭として名高い吉原を取り上げる。遊女の過酷さがクローズアップされがちな吉原だが、江戸時代の吉原には違う一面もあったようだ。政...
収録日:2024/06/05
追加日:2024/11/18
国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題
教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担
人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行...
収録日:2024/07/13
追加日:2024/11/19