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DATE/ 2020.06.19

最も「研究力」のある国と研究機関は?

 世界的に権威のある科学雑誌といえば、イギリスの『Nature』。創刊は19世紀で、あの進化論のダーウィンも寄稿したことのあるという長い歴史をもつ雑誌です。

 その『Nature』が発表している「研究力」ランキングを知っていますか。ノーベル賞受賞者がたくさん排出している日本なら、当然上位にランクインしていると思いきや、実はトップ10入りすらかなわないのが実情です。

 日本の研究機関は今、世界でどのように評価されているのか。はたまた、どこの国のどの研究機関が世界で最も「研究力」が高いと評価されたのか。2020年4月に発表された最新の情報をお届けします。

日本のトップは世界で何位?

 イギリスの科学雑誌『Nature』は2020年4月29日に世界の研究機関の研究力ランキングを発表しました。このランキングは、82の科学雑誌に発表された論文の貢献度にもとづいて統計をとった結果です。その82の雑誌の選出は、自然科学における主要な研究者58名の委員会によって選出されたもの。

 まずはいちばん気になる日本勢の順位を見ていきましょう。冒頭に書いた通り、残念ながらトップ10にはランクインしませんでした。日本で最も順位が高かったのは、やはり最高学府の東京大学。しかしながら、順位は惜しくもトップ10入りならずの11位です。

 東大は前回8位だったので、降格したことになります。今回、他国の研究機関が代わりにトップ10入りしたということです。

日本の大学はトップ50にいくつある?

 日本のナンバーツーは京都大学です。世界ランキングでは東大から大きく離れて37位。前回は29位だったので、京大もかなり降格しています。このほか大阪大学、東京工業大学などが高く評価されていますが、トップ50にランクインしたのは東大と京大だけでした。

 日本の国としてのランキングは5位。この国のランキングの1位から7位までは2015年以降、変わっていません。1位アメリカ、2位中国、3位ドイツ、4位イギリス、5位日本、6位フランス、7位カナダという順番です。

 このなかで見逃せないのはやはり中国の躍進です。中国科学院はなんと5年連続で1位を獲得。他にも中国科学技術大学が8位、北京大学が10位とトップ10に3つもの大学がランクインしています。東大に代わってトップ10入りしたのが中国科学技術大学です。前回は18位だったので大幅アップです。さらに中国はトップ25に清華大学、南京大学が名を連ねています。

急上昇ランキング トップ50

 急上昇ランキングという指標もあって、またまた驚くべきことにそのトップ50のうち49が中国の研究機関です。中国の圧倒的な進撃を如実に表していると言っていいでしょう。ちなみにトップ50の唯一の中国以外の研究機関はアメリカのコロラド州立大学でした。45位でした。

GDPランキングと比較 日本だけ…

 国別ランキングの上位はほぼGDPのランキングの通りになっています。GDPのランキングは1位アメリカ、2位中国、3位日本、4位ドイツ、5位イギリス、6位フランスという順番です。こう見てみると、日本だけおかしなポジションにいるように見えますね。

 GDPは日本より低いにもかかわらず、なぜドイツやイギリスは日本よりも高い「研究力」を保つことができているのか。これが分かれば、今後の日本の「研究力」向上の役に立つかもしれません。

ドイツと日本は何が違うのか

 ドイツはマックス・プランク研究所が3位、ドイツ研究センターヘルムホルツ協会が7位にランクインしています。ちなみにイギリスはオックスフォード大学が9位、フランスは4位にフランス国立科学研究センターがランクイン。

 当然のことですが、上位の国は1つ以上の研究機関がトップ10入りしています。負け惜しみのようですが、11位の東大から7位や8位までそれほど大差がついているわけではありません。なので、トップ10入りは日本もまだまだ挽回できる可能性があります。

 話を戻すと、ドイツという国は研究環境が恵まれています。1000以上の公的な研究機関と約400の高等教育機関があり、また、比較的低い生活費、安定した成長、および高い研究開発支出を誇っていると『Nature』は評価しています。

役に立つかどうかわからない基礎研究の軽視

 ドイツに比べて日本の科学研究費も決して少なくないので、ドイツに対する評価は日本にも当てはまりそうですが、そう単純な話ではないようです。例えば、日本のノーベル賞受賞者たちが、日本では基礎研究が軽視され、予算が削減されていることを訴えているニュースがたびたび報じられているのをご存知でしょうか。つまり、予算の分配に問題があるようなのです。

 分配の問題は科学研究に限ったことではありません。日本ではこのところ経済格差が拡大し、今や貧困率は先進国のなかでも上位に位置しています。特に問題なのが、経済格差が教育格差に直結してしまうことです。こうした事態は将来の研究者の可能性を奪ってしまうことでもあります。家庭環境に左右されることなく誰もが望むような教育を受けられて、役に立つかどうかは別にして、研究者が好奇心にしたがって研究に集中できる環境を守ることが長期的にみて、日本の研究力を底上げしていくのではないでしょうか。

<参考サイト>
・Nature Index 2020 Annual Tables
https://www.natureindex.com/annual-tables/2020
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01232-9
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01231-w
https://www.natureasia.com/ja-jp/info/press-releases/detail/8785
(10MTV編集部)

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