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意外と知らない「役員」の仕事と報酬
たいていの会社には「役員」がいますが、あまりにも「雲の上の人」であるためか、意外とその実態は知られていません。ここでは役員の定義や役割、年間報酬などを調べてみました。
『法律用語事典』(有斐閣)によると、一般には会社において、その業務の執行、業務・会計の監査などの権限をもつ者、会社法上は、株式会社の取締役、会計参与及び監査役を指します。これに加えて、会社法施行規則では「執行役・理事・監事」などが含まれますが、厳密には「役員等」の「等」の部分に当たると解釈できます。
役員は経営者であり、従業員の延長ではありません。従業員と会社の間で結ばれるのは「雇用契約」(労働契約)ですが、取締役と会社の間には「委任契約」が結ばれます。役員は会社経営のプロとして、実際の業務に加えて、業務執行についての「意思決定」と業務執行に関する「監督」行為を行うことになります。
従業員の解雇については「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が求められますが、契約関係が違うため役員はそうではありません。取締役の契約は「相互解除の自由」の元にあるため、いつでも株主総会の決議によって解任することができます。
また、役員の定義は「会社経営のプロ」ですから、メガバンクなどの銀行出身者が役員に配置されることも多くあります。銀行側が給料を払うのが「出向」、配置先の会社が給料を払うのは「転籍」となります。2017年の映画『終わった人』(中田秀夫監督、内館牧子原作)では、舘ひろしさんが銀行員から出向させられた子会社の役員として定年を迎えた主人公を好演していました。
そして、当然のことですが、新しく「起業」された会社では、会社の設立メンバーが役員に名前を連ねます。会社法では「未成年」を取締役の欠格事由に挙げていないので、未成年者が役員になることも可能です。ただ、民法上15歳未満は「印鑑登録」ができないため、対外的代表者として社印を行使する代表取締役には事実上なりにくいのが現状です。
非役付の執行役員の年間報酬は、従業員規模で見ると、1000人以上の会社では1,985万円、300~999人の会社で1,356万円、300人未満の会社で1,163万円となっています。これは取締役報酬の85%程度であることが労務行政研究所の調査で分かりました(2019年7月~9月調べ)。
執行役員とは逆に、取締役ではあるものの「専務」でも「常務」でもない取締役は「平取(ひらとり)」と呼ばれたりします。肩書きの有無は、本来的には取締役会における上下関係にはつながりません。
最高額は住友不動産の高島準司元会長の22億5,900万円。基本報酬6,500万円のほか、退職時報酬として留保されていた21億9,400万円が支払われたため、超ビッグな報酬となりました。
2位はソフトバンクグループのマルセロ・クラウレ副社長COOの21億1,300万円、3位は武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長の20億7,300万円、4位はソフトバンクグループのラジーブ・ミスラ副社長の16億600万円、5位はトヨタ自動車のディディエ・ルロワ元副社長が12億3,900万円となっています。
基本報酬で見ると、トップはソフトバンクグループのマルセロ・クラウレ副社長で15億2,700万円。賞与では、トヨタ自動車のディディエ・ルロワ元副社長が9億8,000万円の支払いを受けています。
また、デロイト トーマツ グループが毎年実施する上場企業中心の928社が対象の調査では、売上高1兆円以上の企業(該当は2019年度で52社)における社長の報酬総額水準は中央値で9,946万円(前年比+0.9%)と報告されました。これだけケタが違うと、うらやましいのかどうかも分からないのが正直な庶民の感想です。
そもそも「役員」とは何をする人?
「役員」は、文字通り「その役に当たる人」を示す言葉ですが、明治以降会社・団体などで、そこを代表したり、業務を執行したりする幹部職員を指すようになりました。『法律用語事典』(有斐閣)によると、一般には会社において、その業務の執行、業務・会計の監査などの権限をもつ者、会社法上は、株式会社の取締役、会計参与及び監査役を指します。これに加えて、会社法施行規則では「執行役・理事・監事」などが含まれますが、厳密には「役員等」の「等」の部分に当たると解釈できます。
役員は経営者であり、従業員の延長ではありません。従業員と会社の間で結ばれるのは「雇用契約」(労働契約)ですが、取締役と会社の間には「委任契約」が結ばれます。役員は会社経営のプロとして、実際の業務に加えて、業務執行についての「意思決定」と業務執行に関する「監督」行為を行うことになります。
従業員の解雇については「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が求められますが、契約関係が違うため役員はそうではありません。取締役の契約は「相互解除の自由」の元にあるため、いつでも株主総会の決議によって解任することができます。
役員になるのは、どんな人?
日本の企業では、社員の出世レースのゴールが「役員」ということになっています。大企業では、役員になれるのは1000人に1人ほどと言われていますから、ごくわずかな人だけの特権席といえます。また、親会社から派遣されて「子会社(関連会社)の役員」になるという人事はよくみられます。いわゆる「民間版天下り」のケースも多いですね。また、役員の定義は「会社経営のプロ」ですから、メガバンクなどの銀行出身者が役員に配置されることも多くあります。銀行側が給料を払うのが「出向」、配置先の会社が給料を払うのは「転籍」となります。2017年の映画『終わった人』(中田秀夫監督、内館牧子原作)では、舘ひろしさんが銀行員から出向させられた子会社の役員として定年を迎えた主人公を好演していました。
そして、当然のことですが、新しく「起業」された会社では、会社の設立メンバーが役員に名前を連ねます。会社法では「未成年」を取締役の欠格事由に挙げていないので、未成年者が役員になることも可能です。ただ、民法上15歳未満は「印鑑登録」ができないため、対外的代表者として社印を行使する代表取締役には事実上なりにくいのが現状です。
「執行役員」の報酬と役割は?
取締役の機能を「意思決定と監督」に集中させ、その意思決定に基づいて業務執行に専念するのが執行役員の役割です。会社法に明確な定めがないため、従業員身分のまま執行役員を務めるケースと取締役が兼務するケースがあります。執行役員制度を導入する上場企業の割合は、2019年のアンケートでは75.5%に上っています(日本監査役協会調べ)。非役付の執行役員の年間報酬は、従業員規模で見ると、1000人以上の会社では1,985万円、300~999人の会社で1,356万円、300人未満の会社で1,163万円となっています。これは取締役報酬の85%程度であることが労務行政研究所の調査で分かりました(2019年7月~9月調べ)。
執行役員とは逆に、取締役ではあるものの「専務」でも「常務」でもない取締役は「平取(ひらとり)」と呼ばれたりします。肩書きの有無は、本来的には取締役会における上下関係にはつながりません。
「役員報酬1億円以上」の実態とは?
では、いよいよ役員報酬についてです。役員報酬については開示義務がなく、毎年の業績によって大きく変動するものなので、平たく言うと「ピンからキリまで」あります。東京商工リサーチによると、2020年3月期決算で「役員報酬1億円以上」を個別開示したのは241社、開示人数は495人に上りました。最高額は住友不動産の高島準司元会長の22億5,900万円。基本報酬6,500万円のほか、退職時報酬として留保されていた21億9,400万円が支払われたため、超ビッグな報酬となりました。
2位はソフトバンクグループのマルセロ・クラウレ副社長COOの21億1,300万円、3位は武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長の20億7,300万円、4位はソフトバンクグループのラジーブ・ミスラ副社長の16億600万円、5位はトヨタ自動車のディディエ・ルロワ元副社長が12億3,900万円となっています。
基本報酬で見ると、トップはソフトバンクグループのマルセロ・クラウレ副社長で15億2,700万円。賞与では、トヨタ自動車のディディエ・ルロワ元副社長が9億8,000万円の支払いを受けています。
また、デロイト トーマツ グループが毎年実施する上場企業中心の928社が対象の調査では、売上高1兆円以上の企業(該当は2019年度で52社)における社長の報酬総額水準は中央値で9,946万円(前年比+0.9%)と報告されました。これだけケタが違うと、うらやましいのかどうかも分からないのが正直な庶民の感想です。
<参考サイト>
・東京商工リサーチ:2020年3月期決算 上場企業『役員報酬1億円以上開示企業』
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200710_04.html
・デロイト トーマツ グループ:役員報酬サーベイ(2019年度版)
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20191203.html
・東京商工リサーチ:2020年3月期決算 上場企業『役員報酬1億円以上開示企業』
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200710_04.html
・デロイト トーマツ グループ:役員報酬サーベイ(2019年度版)
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20191203.html
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