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DATE/ 2020.07.24

今日からできる「ドライアイ」対策は?

 日本を代表する最新情報知識事典かつ、流行語・時事用語事典である『imidas(イミダス)』では、1992年の[新語流行語]で「ドライアイ」を取り上げ、以下のように説明しています。

 「ドライアイ」(『イミダス 2018』[新語流行語]より)
 涙が出なくなったり、目の痛みや異物感があったり、角膜・結膜が損傷する現代病の一つ。ワープロ・テレビゲーム・コンピューター画面を見続けるため、瞬き回数の減少、エアコンの普及で、乾燥した環境での作業が増えたことが原因とされる。

「ドライアイ」は“涙の質”に注意

 「ドライアイ」はその名称から単純に“目の乾き”=“涙の不足”だけで起こると思われがちですが、涙の不足だけではなく、涙に含まれる水と油のバランスの問題、つまり“涙の質”が原因となる症例が多々あります。

 眼科医・医学博士の平松類氏は“涙の質”について、『本当は怖いドライアイ』で1)~5)のように説明しています(〔 〕内は補足)。

1)質のいい涙は水の表面に油の層がきれいに張っています。肌に保湿のクリームを塗っているようなものです。そのため〔目が〕簡単には乾きません。

2)〔涙に含まれる〕油はまぶたにある油の腺(マイボーム腺)から出てきますが、血流がよくないと油として溶け出てきません。血流をよくして油を分泌させることで〔涙に〕きれいな油の層をつくる必要があるのです。

3)水の層も単なるさらさらの水ではありません。質のいい涙は水の成分もさらさらとしていなくてとろみがあります。とろみをつけるのが「ムチン」という成分であるということも最近わかってきています。

4)水をこぼしたときとゼリーをこぼしたときではどちらが乾きやすいかというと、答えはお水です。〔目を保護するために涙にも〕ゼリーのような水の層をつくる必要があるのです。

5)つまり〔涙に〕油の層をちゃんとつくり、水にとろみをつけてあげるようにすると、「ドライアイ」は治るのです。

まずは自己チェック。そして眼科受診を

 自分が「ドライアイ」かどうかが気になっている人も多いと思いますが、様々な機関や専門家が「ドライアイ」のチェックリストを紹介しています。

 その中から、日本眼科学会が紹介している【ドライアイ・チェックリスト】での自己チェックと、【ドライアイ・10秒間チェック】を以下に取り上げてみました。まずは自己チェックしてみてください。

【ドライアイ・チェックリスト】
□ 目が疲れる
□ 目が乾いた感じがする
□ ものがかすんで見える
□ 目に不快感がある
□ 目が痛い
□ 目が赤い
□ 目が重たい感じがする
□ 涙が出る
□ 目がかゆい
□ 光を見るとまぶしい
□ 目がごろごろする
□ めやにがでる

【ドライアイ・10秒間チェック】
 10秒間瞬きをせずに目を開けていられますか?

 【ドライアイ・チェックリスト】で5項目以上チェックがあった場合、もしくは【ドライアイ・10秒間チェック】で10秒間のまばたきを我慢できなかった場合はドライアイの可能性があります。

 以上のように「ドライアイ」は自己チェックができますが、個人に合わせた適切な治療を行うための診断として、特殊な検査が必要になります。自己チェックで気になった人はぜひ早めに眼科受診のうえ、眼科医に相談し、ドライアイ検査を受けてください。

今日からできるドライアイ対策・3点

 そのうえで、具体的な今日からできるドライアイ対策として、以下の3点を心がけてみてください。

1)「まばたき」
 まばたきはもっとも手軽で有効なドライアイ対策です。目を酷使しているとき、例えばパソコンでの作業時やスマホに熱中しているときなどは、まばたきが減少しています。また、上まぶたが下まぶたにつかない“不完全なまばたき”になっている場合も多々あります。目を使う作業中は意識して、1時間ごとにぎゅっとまぶたを閉じる“しっかりまばたき”を行ってください。

2)「保湿・保温」
 パソコンでの作業時や読書などの“目を使う時=目の周りの保湿”を、また“目を休める時=目の周りの保温”で涙の油の分泌の改善を目指してみてください。具体的には、症状に応じて調剤された目薬を点眼する、加湿器や保湿機能のある眼鏡を利用する、温められるアイピローを利用するなどです。なお、そもそもの課題として、涙の元となる水分補給が不足がちの人は、こまめに水を飲むことも心がけてください。

3)「栄養改善」
 目によいとされている食材を毎日の食事に取り入れ、栄養改善を試みてください。抗酸化作用のある脂を含む青魚のDHAやEPAは、特によいとされています。他にも、ナッツ類(目の粘膜の健康を維持するビタミンB群や抗酸化作用や血行促進作用のあるビタミンEが豊富)、小松菜・ほうれん草・にんじんなどの緑黄色野菜(角膜の新陳代謝を促進するビタミンAが豊富)、ビタミンCを多く含む野菜や果物、亜鉛を多く含む食材、アスタキサンチンという天然の赤い色素を含む食材などもオススメです。ただし、特効薬的な食材はありません。体質改善を意識しつつも、バランスよい食事が大切です。

 都市化・産業化が進むとともに増加する現代病の一つである「ドライアイ」は、いわゆる現代における普通の生活をしている以上誰にでも生じる可能性があり、また罹ってしまった際には治療したり意識して環境や習慣を改善したりしないと、症状を悪化させてしまう可能性が高い疾患です。ぜひ早めの自己チェックを含むドライアイ対策法を試してみてください。

<参考文献・参考サイト>
・イミダス - ドライアイ | 時事用語事典 | 情報・知識&オピニオン imidas
https://imidas.jp/ryuko/detail/N-05-7-164-92.html
・「ドライアイ[新語流行語]」『イミダス 2018』
・「ドライアイ」『日本大百科全書』(坪田一男著、小学館)
・『本当は怖いドライアイ』(平松類著、蒲山順吉監修、時事通信出版局)
・[連載]本当は怖い「ドライアイ」の基礎知識と対処法
https://gentosha-go.com/category/t392-1
・ドライアイ - 日本眼科学会
http://www.nichigan.or.jp/public/disease/hoka_dryeye.jsp
・『緑内障・白内障 糖尿病網膜症・黄斑変性症・目のアレルギー』(杉田美由紀監修、主婦の友社編、主婦の友社)
・女性に多いドライアイ 原因は涙の「脂不足」|WOMAN SMART
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO94890610Y5A201C1000000/
・『眼科医がすすめる目の不調を感じたら毎日食べたい料理』(平松類監修、KADOKAWA)
・目が乾く!ドライアイの対処法~ツボ・マッサージに、内側からうるおす漢方ケア
https://www.kracie.co.jp/kampo/kampofullife/body/?p=2697#:~:text=野菜、果物:小松菜、ほうれん草,の食材と言えます。
・「現代病」『日本大百科全書』(小学館)

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