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DATE/ 2020.08.11

運動不足で身体にあらわれる不調とは?

 フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一氏は、医師が運動をすすめる理由を「運動によって不調を改善したり、疾患を予防できるから」とし、「運動は正しいやり方で、必要な頻度と回数を行えば、必ず効果が出ます」と断言しています。

 「なんだか調子が悪いな」「どうも最近不調続きだな」と感じている人は、まずは以下の【運動不足度・チェックリスト】で自己チェックをしてみてください。

【運動不足度・チェックリスト】
□仕事はデスクワークがメインだ。
□クルマで移動することが多い。
□階段よりもエスカレーター、エレベーターをよく利用する。
□“ややきつい”と感じる運動(30分以上)は、ほとんどしていない。
□子どもの頃から、運動全般が苦手だった。
□自宅が駅から徒歩10分圏内だ。
□日用品はネットショッピングで買うことが多い。
□電車やバスの車内ではなるべく座りたい。

 チェック数が3つ以上該当した人は“運動不足度”要注意です。さらに5つ以上該当した人は“運動不足度”危険信号です。日々の活動量を増やしながら、“ややきつい”と感じる運動を30分、週2回行うことが理想的であると、中野氏は述べています。

運動不足は「筋肉」と「血行」に影響する

 では運動不足となった場合、身体には具体的にどのような不調があらわれるのでしょうか。運動不足で身体にあらわれる不調を考える際のキーワードに、「筋肉」と「血行」があります。

 まず運動不足は、筋肉量の減少や筋力低下を引き起こし、身体機能障害や生活の質の低下などにつながり、ひいてはサルコペニアなどにつながる危険性をはらんでいます。

 さらに筋肉は全身の末端まで血液を送り届けるための補助ポンプの役割を担っているため、運動不足による血行不良を引き起こします。血行不良は、体内の老廃物排出や体温調節機能を阻害し、肩こり・腰痛・関節痛、冷え性、むくみなどの症状へとつながります(なお、血液循環の原動力となる器官は心臓です)。

 そして血行不良により脳が酸欠状態になることによって、脳機能の低下も引き起こります。脳機能の低下は、作業効率を悪くし日常生活や仕事に悪影響を起こしたり、自律神経の働きが阻害されてホルモンバランスが乱れるなどメンタル不調をきたしたりする原因ともなってしまいます。

 また筋肉量の低下や血行不良は体温の低下にもつながり、体温の低下は白血球の働きを鈍らせ、結果として白血球に含まれる、マクロファージ、T細胞、B細胞、NK細胞といった、免疫細胞と呼ばれる細胞の働きも鈍らせることとなり、免疫力の低下を引き起こします。

 ほかにも運動不足によって身体にあらわれる不調に、代謝の低下による肥満や生活習慣病リスクの増大、ストレスの蓄積などが挙げられます。

運動不足解消のための3ステップ

 ここで一度違う視点から運動不足をみてみましょう。それは、運動不足で身体に不調があらわれるとうことは、ひるがえすと、“運動をすれば身体の不調が解消される可能性がある”ということです。そこで以下に、運動不足解消のための3ステップを考察してみました。

1)ラジオ体操やストレッチ
 まずは短時間でもよいので、運動の習慣化を試みてください。ラジオ体操やストレッチなど自宅でも簡単にできる全身運動は、今日からでも生活に取り入れることができます。とはいえハードルが高い人には、YouTubeなどの動画サイトで専門家から人気者までいろいろな人がラジオ体操やストレッチを解説したり呼びかけたりしていますので、一緒に試してみることもオススメします。なお習慣化の目安は、洗顔および歯磨きです。

2)ウオーキングなどの有酸素運動
 1)と並行して、ぜひウオーキングなどの手軽な有酸素運動を、短時間でも生活の中に組み込んでください。最初は3分や5分からでもかまいません。そして、慣れてきたら時間を延ばしたり、ジョギングなどにバージョンアップしたりしてみてください。ウオーキングやジョギングは“第二の心臓”ともいわれる脚の筋肉を強化し、末梢の静脈血の還流量が増加する「ミルキングアクション」となって、血行不良の改善にもつながります。また、ウオーキングを含めた有酸素運動は、メンタルにもよい影響をおよぼします。

3)自分にとっての“ややきつい”運動
 1)2)では比較的軽い運動を紹介してきましたが、とはいえ運動は適切な負荷をかけなければ身体にとって運動と認識されにくく、ひいては筋力の維持や成長につながりにくいことも事実です。適切な負荷とは、言い換えれば“ややきつい”です。運動の習慣がついたあかつきには、情報を調べたり専門家に相談したりしたうえで、自分にとっての“ややきつい”運動を生活に取り入れてみてください。

 仕事や人間関係など、本質的に自分を取り巻く環境はままならず努力が報われるともかぎりませんが、中野氏が「運動は正しいやり方で、必要な頻度と回数を行えば、必ず効果が出ます」と断言するように、適切に行うかぎり運動は努力を裏切らず、結果はかならず正比例です。運動によるリータンはたくさんあります。ぜひ身体以外の不調を乗り越えるためにも、運動不足解消を習慣化してみてください。

<参考文献・参考サイト>
・「健康診断の数値を良くする中野ジェームズ修一の症状別トレで、慢性の「運動不足」から抜け出す!」『Tarzan』(2019年7月11日号、マガジンハウス)
・『全身改造メソッド』(中野ジェームズ修一著、新潮社)
・運動不足を解消しよう!運動量が足りなくて起こる不調とは?
https://www.s-re.jp/magazine/health/100/
・たった2週間の運動不足で筋肉は大幅減少 戻すのに3倍の時間が
https://dm-net.co.jp/calendar/2016/024602.php
・「血行不良」『デジタル大辞泉』(小学館)
・「免疫細胞」『デジタル大辞泉』(小学館)
・運動不足はメタボよりも高リスク 運動をより多く・座る時間は少なく
http://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2018/009739.php
・血行不良|健康ひとくちメモ|大協薬品工業株式会社
https://www.taikyo.co.jp/memo/vol9/
・免疫力アップを目指し「低体温」を改善しよう!
https://www.hospita.jp/medicalnews/20191214c/
・筋肉をつけて高血圧のケアと予防に役立てよう | はじめよう!ヘルシーライフ
https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/195.html
・[テレビ体操] ラジオ体操第1 | NHK
https://www.youtube.com/watch?v=feSVtC1BSeQ
・草彅剛の「ラジオ体操第1」【健康つよぽん】【家で過ごそう!】
https://www.youtube.com/watch?v=VTxDGRN8yGs
・「ミルキングアクション」[スポーツ科学]『イミダス 2018』(中原英臣著、集英社)
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