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DATE/ 2020.09.02

一体どこからが「肥満」なのか?

 「肥満」とは、脂肪組織に脂肪が過剰にたまった状態、皮下に過剰に脂肪が蓄積した状態、白色脂肪細胞に脂肪が蓄積された状態――などといわれています。つまりは「肥満」とは、「体内に“過剰に”脂肪が蓄積している状態」といえます。

 では、一体どこからが「肥満」だといえるのでしょうか。「肥満」や「肥満」の“程度”を調べる方法に、1)体脂肪率、2)体脂肪分布、3)体重――などの肥満判定法があります。それぞれの肥満判定法や、「肥満」となる基準などをみていきましょう

体脂肪率による肥満判定法

 「肥満」というと一般的には、身長に対して体重が重い状態である「過体重」で判断されがちですが、たとえ過体重であったとしても脂肪によるものでなければ、「肥満」とはいえません。そこで「肥満」を測る基準の一つに、「体脂肪率」(体内の脂肪の総重量を体重で割った値〔率=%で表される〕)が用いられます。【体脂肪率の計算式】と【体脂肪率(%)を用いた肥満判定基準】は、以下となります。

【体脂肪率の計算式】
体脂肪率(%)=体脂肪量(kg)÷体重(kg)×100

【体脂肪率(%)を用いた肥満判定基準】
◎男性
やせ:15%未満
普通:15%以上20%未満
やや肥満:20%以上25%未満
肥満:25%以上
◎女性
やせ:20%未満
普通:20%以上25%未満
やや肥満:25%以上30%未満
肥満:30%以上
※男性は25%以上、女性は30%以上を「肥満」と判定する。

 ただし、生きた人間の体内にある脂肪量(体脂肪量)を測ることは、なかなかに困難です。そこで、体の一部分を測って全体の脂肪量を推計する皮脂皮下脂肪厚法や全身を測定対象とする体密度法などで、間接的に測定されています。

体脂肪分布による肥満判定法

 ところで、体脂肪は「皮下脂肪」でとどまっている限りは、医学的にはそれほど深刻な事態にならないと考えられています。問題は皮下だけで脂肪をためきれず、あふれた脂肪が小腸をはじめとした内臓の周囲に蓄積する「内臓脂肪」となった場合、さらには心臓や肝臓など本来脂肪が蓄積されるべきではない場所にたまで付着する「異所性脂肪」となった場合です。

 特に危険視されている異所性脂肪は、付着した臓器の機能を著しく低下させます。そのため、脂肪が体のどこにたまっているのかを知ることが重要になります。以下に紹介する【腹部型肥満の判定方法】は、体脂肪分布による肥満判定法となっています。

【腹部型肥満の判定方法】
1.腹囲(ウエスト=W)と臀囲(ヒップ=H)を測る
2.腹囲を臀囲で割り「腹囲臀囲比(WH比=%)」を算出する
※腹囲臀囲比が男性1.0以上、女性0.8以上なら「腹部型肥満」と判定する。

体重による肥満判定法

 上記で紹介した体脂肪率や体脂肪分布による肥満判定法は、どちらもそれなりに手間がかかることが難点です。そこで、体重と身長を用いた国際的な標準指標である「BMI(Body Mass Index)」値が一般的に用いられています。【BMIの計算式】と【BMIを用いた肥満度の判定】は、以下となっています。

【BMIの計算式】
BMI=[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]

【BMIを用いた肥満度の判定】(日本肥満学会基準)
《判定:BMI》
低体重:18.5未満
普通体重:18.5以上25未満
肥満(1度):25以上30未満
肥満(2度):30以上35未満
肥満(3度):35以上40未満
肥満(4度):40以上
※BMI「22」を適正(標準)とし「18.5以上25未満」を「普通」とする。
※日本ではBMI「25」以上を「肥満」と判定(世界的には「30」以上)。肥満度は値によって4段階ある。

 BMIは脂肪過多を判別することができませんが、統計上多くの人のBMI値が体脂肪率と対応していることが認められています。そのため、世界保健機関(WHO)をはじめとして、世界的にも活用が推奨されています。

「肥満」で知る現状認識と適切な対策

 ほかにも、日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準とされている、へその周りのウエスト(腹囲)の測定も、「肥満」の目安として有効です。男性・腹囲85cm以上、女性・腹囲90cm以上が測定されると、内蔵脂肪肥満の可能性が高くなります。

 「肥満」においても複数の基準や指標を併せることにより、より深く自身の体の認識を深めることができます。また、子ども、妊娠中、体質など、「肥満」の判定基準が違う場合もあります。

 もちろん「肥満」だからといって、ただちに病気であるとはいえません。しかしながら、「肥満」は糖尿病や高血圧症などの生活習慣病や、腰痛や関節痛などの整形外科的な病気につながりやすい危険性を多いにはらんでいます。

 自身の体や大切な人の体は、なによりも気にかけいたわるべきです。「肥満」に対してもぜひいろいろな方法で適切に測定し、自身の体や大切な人の体を正しく現状認識することで、よりよい対応を試みてください。

<参考文献・参考サイト>
・「肥満」『世界大百科事典』(平凡社)
・『Q&A生活習慣病の科学Neo』(中尾一和編、京都大学学術出版会)
・『肥満のサイエンス』(ニュートンムック、ニュートンプレス)
・『意外と知らない体脂肪の真実』(湯浅景元著、健康人新書)
・「体格指数」『デジタル大辞泉』(小学館)
・肥満と健康 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html
・BMI | e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-002.html
・日本肥満学会/JASSO
http://www.jasso.or.jp/
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