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DATE/ 2024.10.22

最も電気代のかかる「家電」とは?

 在宅ワークの増加や物価高、急激な気温の変化などの事情から、家の電気代を気にする方は多いでしょう。家電は毎日使うものだけに、うまく節約したいところです。

 では効率的に電気代を節約するにはどうすればいいのでしょうか。まずはどういった家電が電気をより多く消費しているのか、2024年時点の家電事情をふまえ、考えてみましょう。

消費電力はエアコンが圧倒的

 資源エネルギー庁の資料(2023年)によると、例えば夏の点灯帯(19時頃)の家庭における電気使用率トップ3は、エアコン、照明器具、冷蔵庫。全体の比率で見るとエアコンは38.3%、照明器具は14.9%、冷蔵庫は12.0%とエアコンが圧倒的に高く、使用電力全体の4割を占めています。

 さらに冬の場合、家庭における1日間の電気使用率トップ3はエアコン、冷蔵庫、給湯器。全体の比率で見るとエアコンは17.0%、照明器具14.9%、冷蔵庫は12.6%と、冬でもエアコンの使用率が高くなっています。なお、冬の場合はエアコン以外に電気ストーブやこたつ、電気カーペットといった暖房器具の使用機会が増えます。それらをすべて含めると、暖房器具の使用率は全体の32.7%にのぼります。

エアコンの電気代は年間18,000円から60,000円

 では電気器具ごとに年間どれだけの金額がかかっているのか、2024年現在での情報を見てみましょう。以下、「エネチェンジ」というサイトに詳細な計算がありましたので一部抜粋します。
各機器における年間の電気代はおおよそ以下の通り。

1. エアコン 約18,000円から60,000円
2. 洗濯乾燥機 約6,800円から25,000円
3. 食器洗い乾燥機 約17,500円
4. 冷蔵庫 約7,800円から10,500円
5. 照明器具(1台あたり) 約3,800円

 エアコンは部屋の広さによってかかる電気代が大きく異なります。6畳向けのもので18,000円程度、20畳向けのもので60,000円程度。洗濯乾燥機は毎日使用した場合の試算ですが、縦型洗濯機(洗濯容量11kg/乾燥容量6kgヒーター乾燥)で25,000円程度、ドラム型の同容量のもので6,800円程度です。冷蔵庫もサイズによって異なりますが、こちらは容量の大きなものの方が電気代は安くなる傾向があります。

「我慢する」以外のイマドキの節電方法

 節電をするというと「エアコンを極力使わない」といったように、暑さ寒さを耐えしのぐことに目を向けがちです。確かに夏場のエアコンを26度→28度に上げることで得られる節電効果(削減率)は5.4%、冬場は22度→20度にすると2.7%の効果がある(資源エネルギー庁より)とされていますので、王道の節電方法として間違いはないでしょう。

 しかし、昨今の急激な気候変動によって、とにかく体が疲弊しやすい時代となりました。特に夏場は40度越えの日もあり、夜でも気温が下がらないほど。せっかく節電しても熱中症による治療代のほうが高く付いた……という事態にもなりかねません。

 そこで現在は、各々の事情にあわせて我慢しすぎない、無理はしない節電方法が提唱されています。

 キーワードは「減らす・ずらす・切り替える」です。

 まず「減らす」ですが、これは無駄な消費電力を減らそうというものです。先ほどの設定温度の見直しはもちろん、エアコンのフィルターを掃除する、サーキュレーター等を使って空気を循環させるなど、より効率よく、工夫して電気を使おうとする考え方になります。

「ずらす」は、電気を使用する時間帯をずらすことです。家庭では17時~21時ごろが最も電気の使用量が高くなる傾向があるため、早朝に洗濯をする、早めに夕飯の支度を済ませるなど、ピークを避けることで節電につながります。電力会社によってはオフピークに電気代が割引になるプランが用意されているので、チェックしてみるのもいいでしょう。

 最後に「切り替える」ですが、これはエネルギー効率の良いものに買い換えることです。

 たとえばエアコンの場合、2013年型と2023年型を比較すると約15%の省エネになります。そのほかの機器でも同様の10年間で比較すると、冷蔵庫で約28~35%、温水洗浄便座で約8%の省エネになります。照明器具にいたっては、白熱電球から電球型LEDランプにすることで約86%もの省エネ効果があります。LEDランプは非常に寿命が長いため、交換回数を減らせるのもポイントです。現在は、全国の約6割の家庭が、居間の照明をLEDにしているそうです。

エアコンは「自動」モードで、風量を強めに

 どうすれば電気代を抑えることができるのか、今すぐ行える節約方法を考えていきましょう。それぞれの機器別に情報を整理します。

 まずエアコンは「自動」モードがおすすめです。「弱」モードの方が節約できるイメージがありますが、実際は設定温度に到達するまでに時間がかかってしまうため、電気使用量も多くなってしまいます。この点「自動」であれば、設定温度になったあとは電力をあまり使わずに運転してくれるため、効率がよいとされています。

 また、エアコンの設定温度は夏28℃、冬20℃を目安にしましょう。冷房の場合、28度でも暑ければ設定温度を下げるよりも「風量」を強くした方が電気代としては節約になります。

 暖房の場合は、窓に断熱シートを貼るなど冷気を取り込まないよう工夫することで、より部屋が暖まりやすくなります。

 さらに電気代を「減らす」取り組みでご紹介したように、サーキューレーターや扇風機を使って冷えた(暖まった)空気を循環させると、より効果的です。2週間に1度のフィルター掃除も欠かさずに。

 洗濯乾燥機は、まず乾燥機を使う必要があるかどうかを見直してみましょう。先ほどの「エネチェンジ」の試算によると、洗濯1回にかかる電気代は2~3円程度ですが、乾燥まで行うと20~70円になるとのこと。干せるときには干し、乾燥機を使う時は電気代を抑えられる時間帯にするなど、洗濯の仕方を工夫するとよいかもしれません。なおドラム式は縦型に比べると効率よく乾燥できるため、ドラム式の方が節約になるといわれています。

 冷蔵庫の場合は、気温が低い時期は「弱」モードで大丈夫です。冷気が全面にいきわたるよう、冷蔵室の中は詰め込み過ぎないようにするのが鉄則。目安としては、庫内の7割程度までがよいとされています。
いっぽう冷凍庫の場合は、凍った食材をできるだけ密着させたほうがお互いの冷たさで冷やし続けられるので、より少ない電力で済むといわれています。そのため冷蔵庫と逆で、すきまなく詰め込むのがベスト。そして冷気が外に逃げないよう、扉の開閉は必要最小限にすることも効果的な節電対策です。

 ほんの少しの意識でも、積み重ねることで大きな節約につながります。是非、実践してみてはいかがでしょうか。

<参考サイト>
・【2024年最新版】電気代の高い家電ランキング!一番電気代のかかる家電は?(エネチェンジ)
https://enechange.jp/articles/large-consumption-consumer-electronicses
・機器の買換で省エネ節約(経済産業省 資源エネルギー庁)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/choice/
・冬季の省エネ節電メニュー(経済産業省 資源エネルギー庁)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/media/data/2023_winter/setsudenmenu_katei02.pdf
・夏季の省エネ節電メニュー(経済産業省 資源エネルギー庁)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/shoene_setsuden/pdf/setsudenmenu_katei02.pdf

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