テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.06.25

「月の土地」はなぜ売れるのか?

意外とお手頃? 月の土地の相場

 「不動産」という言葉には、利権や欲望が渦巻く生々しいイメージがあるかもしれません。しかしそんなドロドロとした感情とは無縁の、ロマンあふれる不動産があります。それは、月の土地。実は現在、全世界で600万人以上が所有している人気の不動産なのです。

 いきなり「月の土地」といわれると、「ちゃんとした企業が売っているものなの?」と不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、心配は無用です。月の土地の販売は、アメリカ・ネバダ州に本社があるルナエンバシー社がきちんと法律上の許可を得て行っており、日本でも代理店のルナエンバシージャパンが販売しています。

 「でも、月の土地なんて高いのでは?」という疑問を抱く方も多いかもしれません。しかしこちらも心配無用。月の土地は1エーカー(サッカーグラウンド1面分=約1200坪)から購入可能で、金額は約3,000円というお手頃価格なのです。しかも、月の土地の権利書はもちろん、月の憲法や購入した土地の目印をつけた月の地図などもセットになっています。

 月の土地は決して遠い存在ではないといえるでしょう。

なぜ月の土地を販売する企業ができたのか

 それではなぜ、月の土地を販売する企業が誕生したのでしょうか。そのいきさつはルナエンバシー社の公式サイトで語られています。

 その説明によると、ルナエンバシー社創設者のデニス・ホープ氏が、月は誰のものなのかと疑問を持ったことがはじまりといいます。ホープ氏は法律を徹底的に調べ、宇宙に関する法律は1967年発効の「宇宙条約」しかないことをつきとめました。この条約のなかで、月は国家の所有を禁じられていましたが、個人の所有を禁じる文言はありませんでした。

 そこでホープ氏は月の土地を合法的に販売しようと考え、1980年にサンフランシスコの行政機関に所有権を申請。正式に受理されます。さらに権利宣言書を国連とアメリカ、旧ソビエト連邦に提出しましたが異議申し立てがなかったため、ルナエンバシー社を設立して月の土地の販売をスタートしたのでした。

 購入した月の土地は、月の憲法によると、「最大10以内の範囲で再分割して、購入者が選んだ人物、生物、企業に販売できる」と定められています。ただし「営利目的の取引をするという明確な目的で再分割してはならない」とも定められています。大切な人やペットにプレゼントするのは問題ありませんが、利益が発生する不動産投資の対象にはできないというわけですね。

海外セレブから庶民まで幅広い人気

 現在のところ、誰もが簡単に行くことはかなわない月。その土地を買っても行くことはできませんし、投資に利用することもできないとなれば、持っていても意味がないと思う人もいるでしょう。しかし夜空に浮かぶ月を見上げて、この一部が自分のものと感じられることは、夢とロマンにあふれていますよね。月の土地を買うことは、夢を買うことなのです。

 そしてこの夢をすでに600万人以上が購入し、約11億円を売り上げています。購入者にはアメリカのジョージ・ブッシュ元大統領や俳優のトム・クルーズ氏、カリスマ経営者のイーロン・マスク氏などがいる一方、手頃な価格なので一般の人にも人気があり、ロマンを愛する人が全世界にたくさんいることがわかります。

 しかし、近いうちにこのロマンがロマンではなくなるかもしれません。マスク氏は地球外への移住を可能にしようと考え、2016年には100人を移送可能な宇宙船開発に数千万ドルを投資しており、10年後には火星に移住できるようになるともいわれます。これが実現すれば、月に移住できる日も遠くはないでしょう。そうなると、月の土地に関する法律や所有権もより明確に変わっていくかもしれません。

 ルナエンバシー社が販売している月の土地は、地球から見える表面の部分で、月の面積の約59%。約55億エーカーになります。まだ土地は販売中なので、興味がある方は購入を検討してみてはいかがでしょうか。

<参考サイト>
・ルナエンバシージャパン
https://www.lunarembassy.jp/
・ダイヤモンドオンライン 「月の土地」はなぜ売れるのか?架空の土地で売上11億の謎
https://diamond.jp/articles/-/169682?display=b

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生

ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生

ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯

ピアニスト江崎昌子氏が、ピアノ演奏を交えつつ「ショパンの音楽とポーランド」を紹介する連続シリーズ。第1話では、すべてのピアニストにとって「特別な作曲家」と言われる39年のショパンの生涯を駆け足で紹介する。1810年に生...
収録日:2022/10/13
追加日:2023/03/16
江崎昌子
洗足学園音楽大学・大学院教授 日本ショパン協会理事
2

中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う

中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う

クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か

近年、アフリカで起こったクーデターは、イスラム過激派の台頭だけではその要因を説明できない。ではクーデターはなぜ起こるのか。また、台湾よりも中国のほうがクーデターが起こる可能性はないのか。クーデターは本当に「ラス...
収録日:2025/07/23
追加日:2025/10/18
上杉勇司
早稲田大学国際教養学部・国際コミュニケーション研究科教授 沖縄平和協力センター副理事長
3

不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?

不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実

改革開放当時の中国には技術も資本もなく、工場を建てる土地があるだけだった。経済成長とともに市民が不動産を複数所有する時代となり、地価は高騰し続けた。だが、習近平政権による総量規制は不動産価格を低下させ、消費低迷...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/10/16
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使
4

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く

学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く

編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?

今井むつみ先生が2024年秋に発刊された岩波新書『学力喪失――認知科学による回復への道筋』は、とても話題になった一冊です。今回、テンミニッツ・アカデミーでは、本書の内容について著者の今井先生にわかりやすくお話しいただ...
収録日:2025/09/29
追加日:2025/10/16