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DATE/ 2021.02.02

東京で「普通の生活」を送るための費用は?

 2020年12月、東京都内にある様々な産業別労働組合や地域労働組合(の連合会・協議会)が加盟している連合組織「東京地方労働組合評議会(東京地評)」は、最低生計費の試算調査と分析を行った「東京における子育て世帯の収入と生活に関する調査(2019)」(以下「調査」)を発表しました。

 「調査」では、東京で「普通の生活」を送るために必要な費用として、年代別の試算結果が、練馬区在住モデル・八王子市在住モデルが示されました。各モデルの月額および年額の概算は、以下のようになっています(月額は千の位を四捨五入、年額は万の位を四捨五入)。

<「調査」による【練馬区在住モデル】の年代別必要額>
30代:月額約54万円(年額約650万円)
40代:月額約62万円(年額約740万円)
50代:月額80万円(年額約960万円)

<「調査」による【八王子市在住モデル】の年代別必要額>
30代:月額約49万円(年額約590万円)
40代:月額約57万円(年額約690万円)
50代:月額74万円(年額約890万円)

東京における「普通の生活」費用の実態例?

 さらに詳しく「調査」の内訳を見てみると、以下のようになっています。

<「調査」の総括表・月額(30代/40代/50代)【練馬区在住モデル】【八王子市在住モデル】>
--------------------
Á消費支出(1~10)【398,739/437,786/583,207】【357,397/393,206/528,208】
 1食費【112,558/125,076/145,283】【109,833/121,860/137,151】
 2住居費【98,958/107,292/114,583】【62,500/67,708/69,792】
 3光熱・水道【19,896/20,332/21,840】【19,671/20,482/20,931】
 4家具・家事用品【10,556/12,365/12,591】【10,727/12,567/12,784】
 5被服・履物【12,834/14,687/16,607】【12,834/14,687/16,607】
 6保健医療【6,447/6,447/8,892】【6,447/6,447/8,892】
 7交通・通信【31,058/31,498/37,993】【29,089/29,552/36,834】
 8教育【28,417/39,250/129,758】【28,417/39,250/129,758】
 9教養娯楽【30,597/30,444/31,170】【30,597/30,444/31,170】
 10その他【47,418/50,395/64,490】【47,282/50,209/64,289】
B非消費支出(社会保険料と税額)【101,754/138,502/162,111】【101,754/138,502/162,111】
C予備費【39,800/43,700/58,300】【35,700/39,300/52,800】
--------------------
最低生計費(税抜き)Á+C【438,539/481,486/641,507】【393,097/432,506/581,008】
★D最低生計費(税込み)Á+B+C【540,293/619,988/803,618】【494,851/571,008/743,119】
☆年額最低生計費(税込み)D×12【6,483,516/7,439,856/9,643,416】【5,938,212/6,852,096/8,917,428】
--------------------
※★行は月額(D=Á消費支出+B非消費支出+C予備費)、☆行は年額(D×12)。

 いかがでしょうか?「調査」における【練馬区在住モデル】【八王子市在住モデル】は、東京で「普通の生活」を送るために必要な費用として、妥当であると感じられたでしょうか。

「調査」における「普通の生活」の想定

 ところでここまで見てくると、「調査」における「普通の生活」が気になりませんでしょうか?「調査」における「普通の生活」の基準は、以下のように想定されています。

<「調査」における「普通の生活」の想定>
〔基本構成〕
・家族構成は、夫婦2人と子ども2人からなる4人家族。
・居住面積(賃貸)は、30代・42.5㎡/40代・47.5㎡/40代・50㎡。
・冷蔵庫、炊飯器、洗濯機、掃除機、エアコン等の家電は、量販店の最低価格帯で買いそろえている。
・夫はスーツ2~3着(約24000円)を着回している。
・大人の食費の基本は1人1食300円あまり。夫の昼食は月の半分はコンビニ弁当。飲み会の費用は3500円だが、行けるのは月に1回のみ。子どもの食費は成長や学齢による給食費などを考慮する。
・家族みんなで行楽地に出かけるのは月に1回(1回の費用は8,000円)。
〔年代による変化〕
・30代:夫は30代で正規従業員として勤務、妻は30代で非正規として勤務(夫の扶養家族)、子どもは小学生(公立)と幼稚園児(私立)。
・40代:夫は40代で正規従業員として勤務、妻は40代で無職ないしパートタイマーとして勤務(夫の扶養家族)、子どもは中学生(公立)と小学生(公立)。
・50代:夫は50代で正規従業員として勤務、妻は50代で無職ないしパートタイマーとして勤務(夫の扶養家族)、子どもは大学生(東京都内の私立大学昼間部に通う)と高校生(公立)。

 あなたの生活と照らし合わせて、「調査」における「普通の生活」の想定を、「普通の生活」と感じることはできたでしょうか。

絶対的貧困と相対的貧困

 東京地方労働組合評議会(東京地評)は、「調査」結果報告に「家族を形成するにはお金がかかり、いまや若年世代にとって家族を持つことはステイタスになってしまっている」と述べています。

 もちろん現代ではそういった側面も否めませんが、旧来の知恵から考えれば、お金がないからこそ結婚して一人当たりのコストを下げるべきともいえます。また、核家族で生計を立てることが難しければ、一時的に親世代の家での同居を検討するなど検討に値します。

 さらには、家賃のような大きな固定費を下げるために、家賃相場の安い地域への引っ越しを検討したり、「調査」においても大きな負担となっていた教育費を適切に見直したりするなど、自身の収入応じて生活に必要な費用の支出を見直すためにこそ、「調査」のような試算を活用してほしいと思います。

 現代日本において国民は、仮に必要最低限の生活水準を維持するために必要な収入がなかったとしても、行政機関に対して適切な手続きを行うことができれば、絶対的貧困における生活の破綻や身体の健康の喪失は、理論上はあり得ません。

 しかしながら、相対的貧困は別問題です。相対的貧困とは「ある国や地域社会の平均的な生活水準と比較して、所得が著しく低い状態」といえます。憲法第25条において「健康で文化的な最低限度の生活」は保障されてはいるものの、健康はともかく“文化的な最低限度の生活”は個人や家庭の価値観、または地域やコミュニティによっても異なります。

 そのため、相対的貧困に陥っていると自身が感じたのであれば、個人や家庭で努力して世帯収入を増やしたり支出を減らしたり、コミュニティを変えて生活水準を世帯収入に合わせたりするなど、本質的には個人や家庭内での前向きな働きかけが必要となってきます。

 なお、勤労所得が収入の主体であるビジネスパーソン世帯にとって、適切かつ勤勉に働くこと、世帯収入における働き手を増やすことこそが、「普通の生活」を送るために必要な費用を得るため正道であり、結局のところ一番の近道ともいえます。ぜひ試してみてください。

<参考文献・参考サイト>
・記者会見 - 東京地評
http://www.chihyo.jp/oshirase/kaiken.html
・「相対的貧困」『デジタル大辞泉』

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