失言を防ぐための6つの「た」
失言が命取りとなる例は昔から多々ありますが、「鞘走りより口走り」とは、刀の鞘がゆるく勝手に刀身が鞘から抜け出てしまい身体を傷つける危険のある“鞘走り(さやばしり)”よりも、口をすべらせた失言の方が危険で命取りといった意味です。
言葉の力こそが武器ともいえる政治家は、それゆえに失言が命取りとなる職業ともいえます。2017年にも政治家の失言騒動をめぐり、伊吹文明元衆院議長が所属議員に訓示した【失言を防ぐための6つの「た」】が話題となりました。
1)立場をわきまえること
伊吹氏は「みなさんが失敗したら、応援してくれた有権者に大変な恥をかかせる」と述べています。汎用的に解釈すれば、「失言はあなたを応援してくれた人に恥をかかせるだけではなく、あなたを引き立ててくれた人の立場すら損なう行為」ともいえます。
2)正しいと思っていることを話すとき
伊吹氏は「正しいと思っていることを言うときに、よほど注意しなければいけない。政治の世界では、何が“公平”や“平等”か、人によって判断が違う」と述べていますが、公平や平等といった価値観の違いは、何も政界に限ったことではありません。多様性が尊ばれる現代は、正しさの判断基準も多様といえます。
3)多人数の場で話すとき
伊吹氏は「多人数のときは、自分の価値観と違う人もたくさん来ている」と述べています。1)と2)にも通じますが、多様な立場の人が多くなればなるほど、場を盛り上げるつもりのリップサービスが、かえって不評を買うことにもつながりかねません。
4)旅先で話すとき
伊吹氏は「旅先では、笑いを取って、楽しく話してあげないといけないと思うから、ついつい舌が滑る」と述べています。いわゆるアウェイでの発言は場の共有がより難しい場面も多くなります。そして、高度に情報化された現代においては、旅の恥はかき捨てとはいきません。
5)他人の批判をするとき
伊吹氏は、「他人を批判するときは、よほど注意しないと、自分にもう一度戻ってくる」と述べていますが、2)とも通じる真理ともいえます。他人を批判する行為は、その行為自体が批判の対象になりやすく、いわゆる“ブーメラン発言”ともなりかねません。
6)例え話をするとき
伊吹氏は、「これは非常に危険だ。例え話をすると誤解されるから」と述べています。例え話は上手く使えば非常に効果的ですが、解釈が多様になりやすい危険性をはらんでいるため、話術が下手であったり価値観や文化的背景の違いを配慮しないような例え話であったりすれば、逆効果となります。
他にも冒頭でも例を挙げたように、「口は禍の門(元)」(うっかり言ったことが災難を招く)、「身知らずの口叩き」(身の程をわきまえない者ほど大口をたたいて失敗する)、「白圭の珠は磨くべし、悪言の玉は磨き難し」(白玉の傷は磨けば消し去ることができるが失言はとり返しがつかない)――など、失言を防ぐための故事やことわざによって示された先人の知恵も多々あり、またこれらは“言葉を慎むこと”“口を慎むこと”の戒めとなっています。
生涯において、“口に慎み”を意識されたと思われる先人がいます。その人の名は、日本マクドナルドの創業者として有名な実業家の藤田田(ふじた・でん)です。「田(た)」の一文字を「田(でん)」と音読みする名前は「口に十字架」を意味し、“慎みある言葉を話すように”との祈りを込めて、クリスチャンの母・睦枝によって名付けられたそうです。
「慎みを知って慎まざれば禍遠きにあらず」(慎むべきことを知っていながら慎まなければ、遠からず不幸にあう)ではありませんが、失言を防ぐためには何よりもまず、慎みを知り、さらには慎みを言動で示す必要があります。
言葉を発する口は、いつもあなたとセットです。しかし、口から発せられた言葉は、良くも悪くもあなたから独り立ちします。そして「悪事千里を走る」(悪い行ないや悪い話は、たちまち世間に知れ渡る)ではありませんが、傾向として後者の方がより顕著です。
「口故に身を果たす(失う)」とならないよう、いつも口には微笑みと慎みという戒めを、そして具体的には【失言を防ぐための6つの「た」】を意識してみてください。
言葉の力こそが武器ともいえる政治家は、それゆえに失言が命取りとなる職業ともいえます。2017年にも政治家の失言騒動をめぐり、伊吹文明元衆院議長が所属議員に訓示した【失言を防ぐための6つの「た」】が話題となりました。
伊吹文明元衆院議長が訓示した6つの「た」
【失言を防ぐための6つの「た」】(伊吹文明元衆院議長の訓示より)1)立場をわきまえること
伊吹氏は「みなさんが失敗したら、応援してくれた有権者に大変な恥をかかせる」と述べています。汎用的に解釈すれば、「失言はあなたを応援してくれた人に恥をかかせるだけではなく、あなたを引き立ててくれた人の立場すら損なう行為」ともいえます。
2)正しいと思っていることを話すとき
伊吹氏は「正しいと思っていることを言うときに、よほど注意しなければいけない。政治の世界では、何が“公平”や“平等”か、人によって判断が違う」と述べていますが、公平や平等といった価値観の違いは、何も政界に限ったことではありません。多様性が尊ばれる現代は、正しさの判断基準も多様といえます。
3)多人数の場で話すとき
伊吹氏は「多人数のときは、自分の価値観と違う人もたくさん来ている」と述べています。1)と2)にも通じますが、多様な立場の人が多くなればなるほど、場を盛り上げるつもりのリップサービスが、かえって不評を買うことにもつながりかねません。
4)旅先で話すとき
伊吹氏は「旅先では、笑いを取って、楽しく話してあげないといけないと思うから、ついつい舌が滑る」と述べています。いわゆるアウェイでの発言は場の共有がより難しい場面も多くなります。そして、高度に情報化された現代においては、旅の恥はかき捨てとはいきません。
5)他人の批判をするとき
伊吹氏は、「他人を批判するときは、よほど注意しないと、自分にもう一度戻ってくる」と述べていますが、2)とも通じる真理ともいえます。他人を批判する行為は、その行為自体が批判の対象になりやすく、いわゆる“ブーメラン発言”ともなりかねません。
6)例え話をするとき
伊吹氏は、「これは非常に危険だ。例え話をすると誤解されるから」と述べています。例え話は上手く使えば非常に効果的ですが、解釈が多様になりやすい危険性をはらんでいるため、話術が下手であったり価値観や文化的背景の違いを配慮しないような例え話であったりすれば、逆効果となります。
口には「田」?口には「慎み」を
いかがでしょうか。伊吹氏の示す6つの「た」と自身の発する言葉を照らし合わせ、省みる点がみえてきましたでしょうか。他にも冒頭でも例を挙げたように、「口は禍の門(元)」(うっかり言ったことが災難を招く)、「身知らずの口叩き」(身の程をわきまえない者ほど大口をたたいて失敗する)、「白圭の珠は磨くべし、悪言の玉は磨き難し」(白玉の傷は磨けば消し去ることができるが失言はとり返しがつかない)――など、失言を防ぐための故事やことわざによって示された先人の知恵も多々あり、またこれらは“言葉を慎むこと”“口を慎むこと”の戒めとなっています。
生涯において、“口に慎み”を意識されたと思われる先人がいます。その人の名は、日本マクドナルドの創業者として有名な実業家の藤田田(ふじた・でん)です。「田(た)」の一文字を「田(でん)」と音読みする名前は「口に十字架」を意味し、“慎みある言葉を話すように”との祈りを込めて、クリスチャンの母・睦枝によって名付けられたそうです。
「慎みを知って慎まざれば禍遠きにあらず」(慎むべきことを知っていながら慎まなければ、遠からず不幸にあう)ではありませんが、失言を防ぐためには何よりもまず、慎みを知り、さらには慎みを言動で示す必要があります。
言葉を発する口は、いつもあなたとセットです。しかし、口から発せられた言葉は、良くも悪くもあなたから独り立ちします。そして「悪事千里を走る」(悪い行ないや悪い話は、たちまち世間に知れ渡る)ではありませんが、傾向として後者の方がより顕著です。
「口故に身を果たす(失う)」とならないよう、いつも口には微笑みと慎みという戒めを、そして具体的には【失言を防ぐための6つの「た」】を意識してみてください。
<参考文献・参考サイト>
・【復興相辞任】伊吹文明元衆院議長、失言回避へ6つの「た」 二階派例会で訓示 - 産経ニュース
https://www.sankei.com/politics/news/170427/plt1704270020-n1.html
・「伊吹文明」『日本人名大辞典』(講談社)
・『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
・『勝てば官軍』(藤田田著、ベストセラーズ)
・「藤田田」『日本大百科全書』(小学館)
・【復興相辞任】伊吹文明元衆院議長、失言回避へ6つの「た」 二階派例会で訓示 - 産経ニュース
https://www.sankei.com/politics/news/170427/plt1704270020-n1.html
・「伊吹文明」『日本人名大辞典』(講談社)
・『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
・『勝てば官軍』(藤田田著、ベストセラーズ)
・「藤田田」『日本大百科全書』(小学館)