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DATE/ 2021.03.24

人類滅亡まであと○秒…世界終末時計とは?

《世界終末時計(Doomsday clock)》をご存知ですか。核開発や環境問題などを判断材料に、地球最後の日を深夜0時と仮定したならば、人類にはあとどれくらいの時間が残されているのかを示すシンボルです。

 登場時に残り時間7分と設定されて以来、その動向は半世紀以上に渡って注目されてきましたが、2021年1月に発表された残り時間はなんと100秒! 残念なことに史上最短がキープされてしまいました。この人類への警告を示す時計はどのような経緯で設置され、どのように時を刻んできたのかご紹介します。

フランク・レポートの意志を継いでいる《世界終末時計》

 1945年、広島、長崎に原子爆弾が投下され第二次世界大戦が終結したのはご存知の通りです。その原子爆弾を開発するマンハッタン計画に関わっていた科学者らメンバーの一部は、核エネルギー、原子爆弾は人類・文明にとっての新たな脅威になると、戦後の核管理の重要性と日本に対する無警告での原爆投下への反対を政府に提言していました。世に知られるフランク・レポートです。

 しかし、訴えは拒絶され原子爆弾は投下、未曾有の大惨事が歴史に刻まれました。戦後、「核エネルギーの持つ危険性を科学者は強く社会に訴えなければならない」という理念からアインシュタインやシカゴ大学の科学者たちはメンバーを募り「シカゴ原子力科学者」という組織を結成、会報として科学誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンスティスツ(原子科学者紀要)』が創刊されます。

 その1947年6月号の表紙絵に現れたのが《世界終末時計》です。デザインしたのはアーティストのマーチル・ラングスドルフ、原爆開発に携わった科学者たちの切迫感を見てとった彼女は時計をモチーフに選びました。核兵器を制御するための残り時間がほとんどないことを伝えるのにはこれ以上ないわかりやすいデザインと言えるでしょう。

終末時計の針を動かした主な出来事

 それ以来、《世界終末時計》はしばしばメディアに登場するようになりました。戦後史は冷戦と核開発競争の歴史、《世界終末時計》は新たな核の脅威、世界の緊張が高まる度に、あるいは平和交渉が進められる度に一進一退を続けながら世界に核の危機を訴えかけてきました。

1947年7分前 終末時計の登場
1949年 3分前 旧ソ連、原爆実験に成功
1953年 2分前 米国、前年末に水爆実験成功
1963年 12分前 米ソ間で部分的核実験禁止条約調印
1984年 3分前 軍拡競争加速
1990年 10分前 冷戦終結
1991年 17分前 米ソ間で戦略兵器削減条約(START)調印
1998年 9分前 インド・パキスタンが核実験
2007年 5分前 北朝鮮・イランの核開発問題浮上
2010年 6分前 オバマ大統領、核軍縮を進める
2012年 5分前 核軍縮の停滞、福島原発事故
2015年 3分前 ウクライナ危機、地球温暖化
2017年 2分半前 トランプ政権誕生、核廃絶や気候変動対策に消極的発言、北朝鮮の核実験
2018年 2分前 トランプ大統領の予測不能な言動、北朝鮮による核開発の脅威
2020年 100秒前 米ロ、中距離核戦力(INF)全廃条約失効、米国、イラン核合意からの離脱、北朝鮮との対立、宇宙・サイバー空間における軍拡競争の激化
2021年 100秒前 新型コロナウイルスの歴史的な蔓延、核軍縮の停滞

 針の示す時刻は原子力や気候科学の専門家で構成された理事会がノーベル賞科学者らで構成されたスポンサー委員会などの助言を元に見直され、毎年1月に新たなタイムリミットが発表されています。

 残念ながら上記の通り、2021年は最も「深夜0時」に近づいた状態をキープしています。コロナウイルスにより疲弊した2020年は、核兵器削減や気候変動に対応する進展がほとんど見られなかったことが理由に挙げられました。

 希望的な要素としては、1月20日に発足したバイデン米政権は温暖化対策のため「パリ協定」に復帰することや、ロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長合意などが挙げられています。

《世界終末時計》は無意味な存在か

《世界終末時計》には批判の声も挙げられています。核ミサイルのスイッチを握る独裁者に対してなんの抑止力にもならない、時の政権に利用されているという指摘は度々繰り返されてきました。

 リアルタイムに時刻が更新するわけではない性質上の矛盾も指摘されています。キューバ危機は核戦争の可能性が十二部にありましたが、短期間の出来事かつ詳細な情報が公表されなかったこともあり、時計に反映される前にことなきを得たため設定時刻に変動はありませんでした。それゆえ、「キューバ危機の1962年よりも、それほど問題の起きなかったX年の方がタイムリミットが短いのはおかしくないか」という指摘も散見しています。また、環境問題と核の危機は同じ土俵で語られるものではないという意見も出ているようです。
 
《世界終末時計》が示しているのは未来予測ではなく、あくまで比喩であると原子科学者紀要は述べています。

 批判の是非はともあれ、核エネルギーが人の制御下を離れたときに取り返しのつかないことになるのは、原子爆弾に限らずチェルノブイリの事故や福島の被災からも明らかです。核の危機を警告するシンボルが本当の意味で必要とされない日が来るとすれば、それは国際社会から核爆弾、兵器がなくなり、核エネルギーよりも優れて安全な新エネルギーの発見が必須でしょう。「昔は《世界終末時計》なんてものがあったのさ」と笑い話にできる日が来るかは、今を生きる私たちの選択にかかっているのかもしれません。

<参考サイト>
・『2021 Doomsday Clock:It is 100 seconds to midnight.Learn why.』Bulletin of the Atomic Scientists
https://thebulletin.org/doomsday-clock/
・朝日新聞記事データベース聞蔵IIビジュアル 2021/1/28夕刊
《地球滅亡「残り100秒」のまま バイデン米政権誕生…「まだ具体的進展なし」》他 世界終末時計関連記事
・「終末時計」去年と並びこれまでで最も短い「残り1分40秒」 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210128/k10012836561000.html

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