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DATE/ 2021.04.01

「立ったまま仕事」で腰痛解消?その効果は

 仕事をしている間ずっと座りっぱなしという人も少なくないと思いますが、座りっぱなしは腰痛や肩こりの元。そこでおすすめするのがスタンディングデスクで立ちながら仕事をするスタイルです。「立ったまま仕事をするなんて余計疲れるんじゃないの?」と思うかもしれませんが、これはこれでメリットがいろいろとあるのです。特に腰への負担は格段に下がるので、腰痛に苦しんでいる人、必見です。

腰への負担 「座り」が「立ち」の1.8倍以上

 まずはスタンディングの前に座りっぱなしのデメリットから見てみましょう。座り過ぎは肥満や高血圧、心筋梗塞などのリスクを上げることにつながり、1日に11時間以上座っている人は、4時間未満の人に比べて死亡リスクが40%上がるというオーストラリアの調査や、「世界で年間200万人の死因になる」というWHO(世界保健機関)の発表もあります。シドニー大学が行った「世界20か国における平日の総座位時間」では、日本はサウジアラビアと並びトップタイの7時間だったため、世界一座り過ぎリスクにさらされている、とも言えるでしょう。

 座り過ぎていると血流が悪くなり、血栓が肺の動脈をつまらせてしまう、いわゆる「エコノミークラス症候群」につながることもあります。「エコノミークラス症候群」は必ずしも飛行機に乗っている時だけに起こるのではなく、オフィスでも長時間同じ姿勢で座ったままだと起こりうるのです。また、座った姿勢は腰への負担が大きいことも挙げられます。特に座った状態でのデスクワークは前傾姿勢になりやすく、腰への負担が大きくなりがちです。

 こうした座り過ぎリスクの対策としてわかりやすいのは、30分に1回は立つ、ストレッチをする、など同じ姿勢で長時間座り続けることを避けるというものが代表的ですが、いっそのこと立ったまま仕事をしてみよう、というのが今回の提案になります。身長にあった机を使うという前提の元ではありますが、スタンディングの方が姿勢をよく保つことができ、肩や腰への負担を軽減できます。スウェーデンの医師による調査によると、スタンディングの椎間板への負担を100とすると、座っている時は140、前傾で座っていると185にもなるといいます。スタンディング時は特に背骨のS字を意識すると良い姿勢がキープできるのでおススメです。

 座った状態に比べ下半身に負荷がかかる分、運動不足の解消につながりますし、仕事中でも眠くなりにくいという隠れたメリットもあります。一方でわかりやすいデメリットとしては足が疲れる、慣れるまでは仕事の能率が下がる可能性がある、などです。そして座りっぱなしが良くないのと同じく、立ちっぱなしも一定の箇所に負荷がかかるので良くありません。

筆者もやってみた メリハリついて集中できる

 スタンディングデスクを導入している企業もここ最近では話題になっており、例えば楽天やアイリスオーヤマ、サイバーエージェントなどの国内企業、海外でもAppleやFacebook、Googleなどが取り入れているといいます。ここ最近は在宅勤務の割合も増えてきているので、自宅で既に導入している人や、検討している人も少なくないかもしれませんね。

 かくいう私も在宅勤務を機にスタンディングデスクを使い始めました。感想としては、「最初の数日は座り仕事よりむしろ腰が疲れる」「片足に体重をかけるより、両足にバランスよく体重をかける方が疲れにくい=仁王立ちが楽」「長い文章を書く、資料を作成するなどは座った状態の方が能率が良いかも」「座った状態よりもストレッチをするなど体を動かしやすい」などです。さらに昼食休憩を除きずっと立ちっぱなしも試してみましたが、疲労感がかなり大きいのでおススメできません。今のところの個人的な最適解は「資料作りなどは座って、会議や考える作業は立って」です。立ったり座ったりすることでほど良い刺激を加えられますし、メリハリがつけやすく集中力の維持にもつながっているように感じます。

 立ちが常に座りに勝るというわけではなく、立ちも座りも選べる、そして柔軟に変更する。そうした働き方が体に一番優しいと言えそうです。ぜひ試してみては。

<参考サイト>
日本人の座位時間は世界最長「7」時間!座りすぎが健康リスクを高める あなたは大丈夫?その対策とは・・・|スポーツ庁 Web広報マガジン
https://sports.go.jp/special/value-sports/7.html
腰痛の原因は座りすぎ?予防・対処法と接骨院での治療法 |eo
https://eonet.jp/health/article/_4104439.html
はたらく姿勢を考える|株式会社オカムラ
https://www.okamura.co.jp/ergonomics/posture/
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小原雅博
東京大学名誉教授