テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.04.22

実は「毒性」のある食べ物

 フグの肝や毒キノコなど、人間が食べると中毒を引き起こすものがあります。これらは「天然毒素」あるいは「自然毒」というもので、最悪の場合、死をもたらすことも……。

 フグやキノコのほかにも、実は私たちが日常的に食べる食品の中にも「毒性」のある食べ物があります。今回は生活するうえで是非知っておきたい、身近に潜む「毒のある食べ物」をご紹介します!

意外なアレも!気をつけたい毒のある食べ物

【ジャガイモの芽】
 もっとも身近な毒としてよく知られるジャガイモの芽には、ソラニンやチャコニンという毒があり、多量摂取すると嘔吐や腹痛、頭痛やめまい、けいれんといった症状を引き起こします。

 農林水産省によると、ソラニンやチャコニンはジャガイモの可食部100gあたり平均7.5mg(皮周辺に集中)含まれており、体重が50kgの人だとソラニンやチャコニンを50 mg(ジャガイモ6~7個分)摂取すると中毒症状が現れ、150mg~300mg摂取すると死亡する可能性があるとしています。

 ソラニンやチャコニンは表面の芽だけでなく、その芽の根元にも含まれています。また光が当たって緑色になったジャガイモの皮にも多く含まれています。調理の際に適切に処理すれば問題ないものの、十分に気をつけたいところです。

 ジャガイモは長期保存できる便利な野菜ですが、芽が出たり変色したりする前にできるだけ早く食べきるようにしましょう。

【バラ科の植物(リンゴ、ビワ、アーモンドなど)の種】
 リンゴ、サクランボ、ビワ、アンズ、ウメといったバラ科(特にサクラ目)の果物の種子や未熟な実には、シアン化合物、いわゆる青酸が含まれています。

 青酸と聞くとビックリしてしまいますが、含まれる量はごくわずかで、うっかり1~2粒を飲み込んでしまった程度であれば問題ありません。また、エッセンシャルオイルなどに使われるビターアーモンドにもシアン化合物が含まれています(加工の段階で有毒成分は除去されます)が、食用として日本に輸入されることは禁止されています。

 なお梅干しや梅酒の材料となる青ウメも、そのまま食べると中毒につながりますが、加工することでシアン化合物が分解されて毒性が弱くなることが分かっています。

 ただしウメやビワの種を粉末にし「ビタミンB17」「がんに効く食品」などと謳った商品には要注意です。粉末にすると多量摂取に繋がるので、これらの謳い文句に惑わされないようにしましょう。

【未熟な青いトマト】
 家庭菜園で人気のトマトですが、まだ熟していない、青い実のまま食べるのはご用心。もともと青い品種であれば大丈夫ですが、未成熟の青いトマトには、トマチンと呼ばれるジャガイモの芽のソラニンに似た神経性の毒が含まれています。

 中毒となるトマチンの摂取量は25g。青いトマト150kg分だといわれており、通常食べる分であればほとんど害はなく、健康に影響はないといわれています。そのため、育てたものの熟さず青いままのトマトを有効活用したレシピなども数多く発信されています。

 とはいえ「家庭菜園でできた未熟な青いトマトを5個食べたら、その後意識がもうろうとした」などというブログ記事もありましたので、未熟なトマトはできるだけ避けたほうが無難でしょう。

 また実だけではなく、花や葉、茎にも同じ毒が含まれています。こちらは実よりも多くトマチンが含まれていますので、うっかり口にしないように注意してください。

【ハチミツ】
 健康食品でも注目されているハチミツですが、ピロリジジンアルカロイドという天然毒素を含む植物から集められたハチミツに同様の毒が含まれている場合があります。とはいえ日本で売られているハチミツに含まれるピロリジジンアルカロイドはごく微量で、現在健康被害の報告はなく、またその懸念もないとされています。

 しかしピロリジジンアルカロイドよりも気をつけたいのが、ボツリヌス菌です。大人であればボツリヌス菌が体内に入っても腸内で菌は死滅しますが、腸内環境が整っていない1歳未満の乳幼児はボツリヌス菌の毒素により「乳児ボツリヌス症」という病気を発症するリスクがあります。ボツリヌス症は便秘や全身の筋力の低下を招き、最悪死に至るケースも。そのため、乳幼児にはハチミツを決して与えてはいけません。ハチミツ入りの飲み物やお菓子にも気をつけましょう。

転ばぬ先の杖。毒性のある食べ物を把握しておこう

 以上、毒性のある食べ物で、生活上特に注意すべきものをご紹介しました。

 一見大丈夫そうでも、見た目だけで判断がつかない場合や、ハチミツのように大人が問題なくても抵抗力の弱い子どもにとっては毒となる場合もあります。

 農林水産省や厚生労働省、消費者庁でも、自然毒のある食べ物や野草、キノコなどを紹介していますので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。

<参考サイト>
安全で健やかな食生活を送るために│農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/fs/index.html
食品│厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/
食品安全に関する情報│消費者
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/
知識があればこわくない!天然毒素│農林水産省https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin.html
ハチミツによる乳児のボツリヌス症│消費者
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/topics/topics_001/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「見せかけの相関」か否か…コロナ禍の補助金と病院の関係

「見せかけの相関」か否か…コロナ禍の補助金と病院の関係

会計検査から見えてくる日本政治の実態(2)病床確保と補助金の現実

コロナ禍において一つの大きな課題となっていたのが、感染者のための病床確保だ。そのための補助金がコロナ患者の受け入れ病院に支給されていたが、はたしてその額や運用は適正だったのか。事後的な分析で明らかになるその実態...
収録日:2025/04/14
追加日:2025/07/18
田中弥生
東京大学客員教授
2

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教

ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
橋爪大三郎
社会学者
3

胆のう結石、胆のうポリープ…胆のうの仕組みと治療の実際

胆のう結石、胆のうポリープ…胆のうの仕組みと治療の実際

胆のうの病気~続・がんと治療の基礎知識(1)胆のうの役割と胆石治療

消化にとって重要な臓器「胆のう」。この胆のうにはどのような仕組みがあり、どのような病気になる可能性があるのだろうか。その機能、役割についてあまり知る機会のない胆のう。「サイレントストーン」とも呼ばれる、見つけづ...
収録日:2024/07/19
追加日:2025/07/14
糸井隆夫
東京医科大学病院 消化器内科 主任教授
4

3300万票も獲得した民主党政権がなぜ失敗?…その理由

3300万票も獲得した民主党政権がなぜ失敗?…その理由

政治学講座~選挙をどう見るべきか(5)政権交代と民主党

民主党は、2009年の衆議院選挙で過半数の議席を獲得し、政権交代に成功した。しかし、その後の政権運営に失敗してしまった。その理由についてはいまだ十分な反省が行われていないという。ではなぜ民主党は失敗してしまったのか...
収録日:2019/08/23
追加日:2020/02/12
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
5

印象派を世に広めたモネ《印象、日の出》、当時の評価額は

印象派を世に広めたモネ《印象、日の出》、当時の評価額は

作風と評論からみた印象派の画期性と発展(2)モネ《印象、日の出》の価値

第1回印象派展で話題となっていたセザンヌ。そのセザンヌと双璧をなすインパクトを与えた作品があった。それがモネの《印象、日の出》である。印象派の発展において重要な役割を果たした本作品をめぐる歴史的議論や当時の市況を...
収録日:2023/12/28
追加日:2025/07/17
安井裕雄
三菱一号館美術館 上席学芸員