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DATE/ 2021.05.28

マニュアルで免許を取る意味はあるのか?

 運転免許を取る時「せっかくならマニュアルで免許にした方がいい」と言われた人は多いのではないでしょうか。そうして実際にマニュアルで免許を取った人、その後MT(マニュアルトランスミッション)車を運転した経験のある人はどれくらいでしょうか。おそらくそう多くないのではないでしょうか。近年では新車の99%はAT(オートマチックトランスミッション)車(CVTを含む)で販売されています。このような時代にマニュアルで免許を取る理由はあるのでしょうか。

商用車でMT車が多い理由

 その昔は「男はマニュアル」と言われるような時もありました。この理由の一つに、営業で使うような会社名義の車はMT車であることが多かったり、建設や運搬といった現場で使われる車もMT車であったりする場合が多いからというものがあります。では、これまでなぜ商用車にMT車が多かったのでしょうか。

 大きな要因はまずは価格です。同じ車種でMT車とAT車がある場合、MT車は数万円ほど安くなっています。また、作りがAT車よりもシンプルなので車両重量が軽いです。このことと関連して燃費性能も若干優れています。こういった点から多数の営業車を所有する会社としてはMT車の方が経費を安くすることができました。しかし、現代ではATの技術が進化しています。コンピュータで制御されるATは、状況に応じた最適なギアを自動で選択してくれるので、かなり効率がよく燃費性能が高いといえます。また、最近はエコカー減税もあってAT車が多いハイブリッド車の方が安くなる場面もあります。こういったことから商用車もAT車に変化しているようです。

 ただし、軽トラックは今でも7割がMT車とのこと。軽トラックは荒れた道を走ったり、さまざまな荷物を積んだりします。こうなると一般車よりも車の消耗が激しく、買い替え頻度が高くなります。こうなるとコストパフォーマンスの高いMT車の方が選ばれるようです。

マツダは積極的にMT仕様を販売

 今後活躍が期待される自動運転車はコンピュータ制御なので、MTを採用することは考えにくいです。またスポーツカーもATのものが増えています。スバルはすでにMT車を販売していません。また日産なども一部のスポーツモデルや商用車以外では、MT車は選べないようです。時代の流れは着実にATに向かっています。こう見てみると「マニュアルで免許を取る理由はあるのか」という問いに関して言えば、ほぼ「ない」に近いと言えます。ただし趣味の領域でみると、意外にもMT車が復活しているという話もあります。

 マツダは乗用車のほとんどでMT仕様を選べるようにしています。またスズキもジムニーやスウィフト、アルト、ワゴンRなどの自社の看板車でMT仕様を選ぶことができます。マツダは「運転の楽しいクルマづくり」を自身のブランドの特徴と位置付け、戦略的にMT車を販売しています。一方、スズキは経済性を追求するユーザー向けにMT車を販売しているようです。またトヨタもコンパクトカー「ヤリス」、スポーツカー「86」、そしてセダンの「カローラ」でもMT仕様を販売しています。こう見てみるとMT車やマニュアル免許に対する一定の需要は、今後もしばらく一定数残っていくのではないでしょうか。

<参考サイト>
「あえてMT車に乗るメリット」は存在する? AT率約9割でもMT推奨派が多い謎|くるまのニュース
https://kuruma-news.jp/post/368561
【消えゆく技術? 意外に根強い??】電動化でもMT車が生き残る事情と2つの「道」|ベストカーWeb
https://bestcarweb.jp/news/129737
MT車の販売比率はわずか1%程度! それでも新規免許取得者は半数が「非AT限定」! 需要はどこにある?|WEB CARTOP
https://www.webcartop.jp/2021/02/655208/

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