テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.05.29

世界の「軍事費」ランキング

 1990年代には冷戦が終わり大きな対立軸は消失しました。しかし、アフリカの内戦や中東の混乱、アジア地域の不安定な状況は続いています。世界の緊張関係はそう簡単には解けないようです。軍事費はこういった緊張関係を表す一つの指標と言えるでしょう。ここでは世界の軍事費についてランキングをみてみましょう。

2020年の軍事支出は過去最高額

 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の発表によると、2020年時点における世界全体の軍事支出は1兆9810億ドル(約214兆円)となり、実質ベースで前年から2.6%増えています。この金額は統計を取り始めた1988年以降の最高額です。世界のGDPに占める軍事支出も、前年比0.2ポイント増の2.4%に増加。この点についてSIPRIは、新型コロナウイルスによるパンデミックは「世界の軍事支出に大きな影響を与えなかった」と分析しています。

軍事費世界トップ10

 以下、SIPRIの発表における軍事費が多い国ランキングトップ10です。数字は左から、軍事費、前年比、世界全体の軍事費に対するシェアとなっています。

1位 アメリカ 7780億ドル +4.4% 39%
2位 中国 2520億ドル +1.9% 13%
3位 インド 729億ドル +2.1% 3.7%
4位 ロシア617億ドル +2.5% 3.1%
5位 イギリス 592億ドル +2.9% 3.0%
6位 サウジアラビア 575億ドル -10% 2.9%
7位 ドイツ 528億ドル +5.2% 2.7%
8位 フランス 527億ドル +2.9% 2.7%
9位 日本 491億ドル +1.2% 2.5%
10位 韓国 457億ドル +4.9% 2.3%

 1位はアメリカです。7780億ドルは世界の軍事支出の約4割。日経新聞の記事では「研究開発に加え、核兵器の近代化や大規模な武器調達などが主な要因で、中国やロシアと対立したトランプ前政権の米軍強化の姿勢を示している」とされています。2位の中国は26年連続の増加で、この10年間で76%増。日本は9位で前年比1.2%増です。10位の韓国までを合わせると、この上位10カ国で世界の軍事費の4分の3を占めています。2020年は新型コロナウイルスが猛威を振るい、世界経済もマイナスでしたが、世界の軍事費全体は伸びています。

兵器取引量は横ばい

 一方、2016年から2020年に世界で取引された兵器の量は5年前(2011年から2015年)と比べて0.5%減の「横ばい状態」とされています。また2020年の取引量は、新型コロナウイルスの影響により「群を抜いて少なかった」とする一方で、複数国が大型契約を結んだことに触れ「ここ20年ほど続いた取引の増加傾向が終わったとみるのは時期尚早」とSIPRIは説明しています。資料によると、アメリカは5年前に比べて、武器輸出の世界シェアを32%から37%に伸ばしています。またアメリカの武器輸出量自体は5年前に比べて15%の増加です。輸出の47%は中東に対して行われ、なかでもサウジアラビアはアメリカの武器輸出全体の24%を占めています。また世界シェア3位のフランスは輸出量を5年前に対して44%増やし世界シェアでは8.2%を占めています。輸出の59%はインド、エジプト、カタールに対してのものです。4位のドイツは5年前に対して21%増やし、世界シェアは5.5%。輸出先としては、韓国、アルジェリア、エジプトが上位とのこと。

ロシアの武器輸出減少は一時的

 一方、武器輸出世界シェア2位のロシアは、5年前に対して22%減らして世界シェアは20%。減少の理由はインドの武器輸出が53%減少したことによるもののようです。この背景にはインドの、ロシア製兵器への依存度を下げる意図や複雑な調達プロセスを避けたい思惑があるようです。ロシアからの輸出を受け入れた国は中国、アルジェリア、エジプトが大幅に伸びている様子。また大型武器取引にも署名したので、今後また増加することが予想されています。5位の中国も5年前に対して7.8%減らしています。主な輸出国はパキスタン、バングラデシュ、アルジェリアとなっています。

 もっとも多く武器を輸入している地域は、アジアとオセアニア。世界の武器の42%を輸入しています。この地域で特に輸入の多い国としては、インド、中国、韓国、パキンスタンが挙げられています。日本の武器輸入量を世界全体のシェア率で見ると2011年から2015年は1.0%、2016年から2020年では2.2%と2倍以上になっています。ちなみに2016年から2020年の輸入のうち97%はアメリカからです。SIPRIはアジア・オセアニア地域での武器輸入が増えている背景を「中国の脅威の高まりが兵器輸入の大きな要因となっている」と分析しています。

<参考サイト>
・World military spending rises to almost $2 trillion in 2020|STOCKHOLM INTERNATIONAL
PEACE RESEARCH INSTITUTE
https://www.sipri.org/media/press-release/2021/world-military-spending-rises-almost-2-trillion-2020
・International arms transfers level off after years of sharp growth; Middle Eastern arms imports grow most, says SIPRI|STOCKHOLM INTERNATIONAL
PEACE RESEARCH INSTITUTE
https://www.sipri.org/media/press-release/2021/international-arms-transfers-level-after-years-sharp-growth-middle-eastern-arms-imports-grow-most
・TRENDS IN INTERNATIONAL ARMS TRANSFERS, 2020|SIPRI Fact Sheet March 2021
https://sipri.org/sites/default/files/2021-03/fs_2103_at_2020.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,200本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授