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DATE/ 2021.06.28

日本の社員は世界一やる気無し?

 タイトルを見て「自分はそんなことない!」と憤慨するか、「まあ確かにそうかも」と思ってしまうか、反応は人それぞれかと思いますが、そんな残念な調査結果が存在します。自己分析ツールとして有名な「ストレングスファインダー」を開発した米ギャラップ社が世界各国で実施した「社員の仕事への熱意度調査」で、日本は「熱意ある社員」がわずか6%でした。経営層からしたら頭を抱えたくなるような数字かと思いますが、細かくひも解いていきましょう。

「熱意がある」社員はたったの6%

 「State of the Global Workplace」というタイトルでギャラップ社のサイトからダウンロードできるこの調査では、社員を「熱意がある」「熱意がない」「会社に反感を持っている」の3種類に分類しており、日本はそれぞれ6%、71%、23%でした。働きアリの法則だと20%がよく働いて、60%は普通に働き、20%は怠ける、というパーセンテージでしたが、単純に数字だけ比べると働きアリよりも怠惰と言えるかもしれません。

 ただ、6%が高いのか低いのか、日本の数字だけ見てもわかりづらいですよね。諸外国がどうかと言うと、アメリカはそれぞれ33%、51%、16%。中国は6%、75%、19%。韓国は7%、67%、26%。台湾は7%、70%、23%。東アジアは総じて熱意のある社員の割合が低いという結果でした。また、熱意のある社員の割合が最も高い国はパナマで39%。今回の調査での世界平均は15%でした。この数字から見てもわかるように「熱意がある」のハードルはかなり高いと言えるでしょう。日本では71%を占める「熱意がない」社員は、「普通の社員」と言い換えても差し支えないかもしれません。

 とは言え、日本の「熱意がある」割合が世界平均を大きく下回っているのは事実。今回の調査対象となった139の国と地域のうち、日本は132位という結果でした。世界最下位クラス級です。日本を下回るのはブータン(3%)、香港(5%)、イタリア(5%)、パキスタン(5%)。同等の6%だったのは前述の中国とフランス、スペインでした。

原因は部下の強みを理解していない上司にあり?

 日本の“惨状”について、ジム・クリフトン会長兼最高経営責任者(CEO)が日本経済新聞のインタビューに対し、「(1980~2000年ごろに生まれた)ミレニアル世代とそれ以前の世代で重きを置くポイントが異なっている(ミレニアル世代は自分の成長に重きを置いている)」、「主な原因は上司にあり、改善策は部下の強みが何かを上司が理解すること。無気力な社員の半数は自分に合っていない仕事に就いているため、合った仕事に変えるだけで無気力な社員を半分に減らせる」と答えていました。

 日本の労働生産性の低さが課題として話題に上がることがよくありますが、社員の熱意の低さとも相関関係がありそうです。厚生労働省が発表した「令和元年版 労働経済の分析」では、働きがいのスコアが上がれば上がるほど個人の労働生産性に関する認識のスコアも上がり、企業の労働生産性に関してもそれに近い傾向がありました。また、日本の有給取得率や有給取得日数が世界でも最下位級という調査もあり、そうした労働環境が働きがいの低さにつながり、その先に労働生産性の低さが待っている――そうした見方をすることもできそうです。

 働き方改革が叫ばれる昨今ですが、数字で見る限りまだまだ働きがいにつながっていないと言わざるを得ません。日本の仕事の現場の課題は山積みのようですね。

<参考サイト>
・State of the Global Workplace│ギャラップ
https://www.gallup.com/workplace/238079/state-global-workplace-2017.aspx
・「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査│日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO16873820W7A520C1TJ1000/
・令和元年版 労働経済の分析│厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000551611.pdf

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