テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.07.12

「仮想通貨」は資産運用に使えるのか?

 ちょっと古いですが、「億り人」という言葉を聞いたことはないでしょうか?2008年公開の映画『おくりびと』のタイトルからのもじりですが、株式投資や仮想通貨などで億単位の資産を築いた人のことです。2021年に高騰したビットコイン(仮想通貨)、近年では2017年に利確して「億り人」となった人がフィーチャーされる一方、乱高下する仮想通貨市場で大損してしまった人も少なくありません。今回は、そんな値動きの幅がとても大きい仮想通貨=暗号通貨と資産運用の関係についてみていきましょう。

仮想通貨とは

 仮想通貨は、暗号通貨ともいわれ、お札や硬貨のようなモノは用意されず、暗号化されたデータのみでやりとりされる通貨=価値ということができます。円やドルといった法定通貨のように国家による強制通用力(金銭債務の弁済手段として用いられる法的効力)を持たず、主にインターネット上での取引などに用いられます。
 2009年に運用が開始されたビットコインの登場以降、いくつか派生した仮想通貨も次々と生まれ、法定通貨と仮想通貨を交換する仮想通貨取引所と呼ばれる仮想通貨交換業者も登場し仮想通貨の保有が急速に広がりました。

代表的な仮想通貨の値動き

 代表的な仮想通貨であるビットコイン(BTC)の値動きを具体的にみてみましょう。

 登場は2009年。1BTCが1円に満たない価値でスタートしました。2010年7月に取引所でのサービスが開始されたことで約7円に、そこから急速に価格は上昇します。

 2011年になると価格は米国TIME誌の報道を契機に一気に約1,500円に高騰します。これを機にビットコインは投資価値が高い金融商品として世界的に認知されました。しかし、ハッキング被害によって不安が拡がり、2011年の年末には一気に300円台にまで急落します。

 日本においてブームとなるのは2017年。ビットコイン以外の仮想通貨が登場しつつ、「改正賃金決済法」が施行され仮想通貨に対する法整備が進み、1BTC=200万円を突破する勢いとなります。その渦中、取引所の流出トラブルにより、多くの不安を持つ投資家が手を引き、2018年12月には30万円台にまで急落しました。

 その後は低迷気味でしたが、2020年1月に75万円台だった価格が、2月に100万円台、そして3月には50万円台という衝撃的な乱高下をみせつつ、12月には275万円という高値に。その背景には、世界的規模のコロナ禍による各国の金融緩和政策があり、2021年4月には700万円を超える史上最高値で取引されることになります。

 ところが、この急騰の起点ともなったテスラの社長のイーロン・マスクの発言によって急落。5月17日にはビットコインは一時340万円台と最高値の約半値となります。

 1BTC=1円で購入した日本人は少なそうですが、日本でブームとなった2017年に1BTC=10万円前後で購入というケースでみていくと、100万=10BTCで保持していると、2021年4月、単純計算で100万円が7000万という資産になったということになります。

 いかがでしょうか。この乱高下は、仮想通貨が投資対象というよりは、投機に近い感覚ということができそうです。そのすべての変動に情報が関わっていることにもご注目いただけたらと思います。

仮想通貨のリスク

 仮想通貨取引は、よいタイミングで購入し、よいタイミングで売却できれば、すばらしいリターンが期待できるのですが、ここにはいくつか大きなリスクが伴います。

・価格変動
価格変動(ボラティリティ)が大きいため、価格が乱高下
・秘密鍵やパスワードの紛失
仮想通貨を管理する秘密鍵やパスワードを紛失すると、保有する仮想通貨にアクセスできなくなる
・サイバー攻撃による盗難
取引所または自身が保有するデバイスから秘密鍵が漏洩、保有する仮想通貨が盗難
・取引所の経営破綻
仮想通貨取引所が事業を継続できなくなった場合、資産が返還されない
・システム、ネットワーク・トラブル
情報漏洩から資産流出、ネットワーク上の何らかのトラブルからの取引キャンセル
・法規制・税制の変更
仮想通貨の取り扱いについて、法規制・税制が変更

リスクを理解した上で投資を

 仮想通貨取引や投資については、上述に限ることなくいくつか想定されるリスクを理解し、十分な対策が求められます。仮想通貨投資については、アフィリエイト広告など誘惑は多いが結局は広告であることをご理解いただきつつ、話題だからといって素人が手を出すのは危険な領域にあるといってよいでしょう。

 投資は、余剰資産にするなど、自身が許容できるリスクを見極めながら進めたいものです。なにより、十分な情報収集を行うことを意識しつつ、リスクを最小限に抑えることを心掛けましょう。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」

分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」

グローバル環境の変化と日本の課題(5)ジェトロが取り組む企業支援

グローバル経済の中で日本企業がプレゼンスを高めていくための支援を、ジェトロ(日本貿易振興機構)は積極的に行っている。「攻めの経営」の機運が出始めた今、その好循環を促進していくための取り組みの数々を紹介する。(全6...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/04/01
石黒憲彦
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)理事長
2

最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響

最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響

水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地

今や世界共通の喫緊の課題となっている地球温暖化。さらに、日本国内の上下水道など、インフラの問題も、これから大きな問題になっていく。地球環境からインフラまで、「持続可能」な未来をどうつくっていくのかについて、「水...
収録日:2024/09/14
追加日:2025/03/06
沖大幹
東京大学大学院工学系研究科 教授
3

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

いま夏目漱石の前期三部作を読む(5)『それから』の謎と偶然の明治維新

前期三部作の2作目『それから』は、裕福な家に生まれ東大を卒業しながらも無気力に生きる主人公の長井代助を描いたものである。代助は友人の妻である三千代への思いを語るが、それが明かされるのは物語の終盤である。そこが『そ...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/30
與那覇潤
評論家
4

イーロン・マスクは何がすごい?生い立ちと経歴

イーロン・マスクは何がすごい?生い立ちと経歴

イーロン・マスクの成功哲学(1)マスクが「世界一」になるまで

2022年、フォーブス誌が発表した世界長者番付の一位となったイーロン・マスク。テスラの電気自動車やスペースXのロケット開発などを通じ、革新的なイノベーションを実現してきたことで知られるマスクは、いかにして現在のような...
収録日:2022/06/22
追加日:2022/08/23
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
5

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(6)日本の課題解決にお金を回す

国内でいかにお金を生み、循環させるべきか。既存の大量資金を社会課題解決に向けて循環させるための方策はあるのか。日本の財政・金融政策を振り返りつつ、産業育成や教育投資、助け合う金融の再構築を通した、バランスの取れ...
収録日:2024/12/04
追加日:2025/03/29
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員