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DATE/ 2021.08.20

生活保護受給者が持っていても大丈夫なものとは

 2020年から続くコロナ禍。生活が一変したと同時に、雇用切りなど、仕事を失って貧困に陥るという例が後を絶ちません。厚生労働省の発表によると、2019年12月の生活保護の申請に比べ、2020年同月の申請数は6.5%も増えています。

 生活保護は、生活に困窮している人なら誰でも申請できる、国が設けたセーフティーネットです。しかし、生活保護受給にはさまざまな誤解が多くつきまとっています。本来であれば受給が可能でも、「自分の条件では受給できない」と尻込みしてしまい、必要なサポートが行き届いていないといった問題が起こっています。

 生活保護受給に関する誤解とは、どんなものでしょうか?

受給ができないとされている誤解された条件

 生活保護について、〝誤解〟されている「受給できない条件」はさまざまです。なかでも、このような条件で、「受給できない」と思っている人は多いのではないでしょうか?

・働いていて収入がある
・路上やネットカフェで生活しているため住所がない
・持ち家に住んでいる
・貯金や所持金がある
・車を所有している
・借金がある
・ペットを飼っている
・仕送りを期待できる家族がいる

 上のような項目に該当していても、生活保護は受けることができます。細かな条件はありますが、決して所有している財産が0にならないと受給出来ないという制度ではないのです。働いていたとしても給料が最低生活費以下であれば、差額を受け取ることはできますし、基本的に持ち家には住み続けることができます。

 また、お酒やタバコなどの嗜好品を買ってはいけないというのも誤解です。支給された生活費のなかから購入費を捻出することは問題ありません。生活保護制度の目的は、日本国憲法に書かれた「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という権利を守ることにあります。家も、お金も、家族も、娯楽を楽しむ時間も、すべてがない状態でないと受けられない制度となってしまえば、それは憲法の理念に反することです。

受給後も継続した手続きが必要

 しかし、もちろん受給にはきちんとした審査が必要になります。一方で、そうした受給の基準をできるだけ満たせるように、さまざまな仕組みも存在しています。たとえば、今住んでいる家の家賃が受給基準に外れている場合、引っ越し代などを行政に負担してもらい、受給可能な家賃の住居に引っ越すなどの方法もあります。また、「仕送りを期待出来る家族」がいる場合、「家族の扶養に入っている」場合も、家族が高齢である、DVの被害を受けた、絶縁状態にあるなど、きちんと事情を伝えれば生活保護の受給が可能です。

 受給後も定期的なケースワーカーの訪問や、毎月の収入の申告があるなど、継続して生活保護を受給するための手続きは必要です。ローンを組むことができない、新しいクレジットカードを持つことができないなどの制約も存在しています。決して、審査が通ればいいというものではありませんが、就職までの数ヶ月や半年など、短い期間でも支援を受けることが可能なのです。

まずは行政の窓口やNPOなどの専門家に相談を

「自分は受給条件に当てはまらない」と思っていても、支援を受けることができるかもしれません。まずは行政の窓口で、生活保護の受給をしたいという旨を伝え、基準に達しているかどうか、何が基準から外れているのかを確認しましょう。窓口の担当者が制度の内容を誤解しているという場合も少なくありません。行政の窓口で対応が難しいと判断された場合は、生活保護の受給を支援しているNPOなどに相談してみることも方法の一つです。

 必要書類を提出後、原則14日、最長でも30日以内に受給の可否が決まります。外国人の方でも永住者や、日本人の配偶者は受給の対象です。生活保護はわたしたちが受けられる権利の一つです。経済的な不安を感じている方は、まずは最寄りの行政を頼ってみてください。

<参考サイト>
生活保護制度│厚生労働省 
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html
認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい
https://www.npomoyai.or.jp

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