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DATE/ 2021.11.02

なぜランドセルが大人の間で流行るのか?

 ランドセルといえば小学生のカバン。それが一般的なイメージかと思いますが、実は最近大人にも人気が出ています。「OTONA RANDSEL(大人ランドセル)」なんてそのままのネーミングの商品が発売されるほど。いったいどんな経緯で大人にも使われるようになったのでしょうか。

ハリウッド女優の使いこなしが流行きっかけ

 まずは“子供用”のランドセルについて歴史をさかのぼってみましょう。その始まりは江戸時代までにさかのぼり、幕末に輸入されて軍隊で使われた布製の背のうが起源と言われているそうです。その背のうが箱型に変わったのは明治20年。なんと大正天皇の学習院ご入学祝いとして、伊藤博文が献上した通学かばんが始まりだそうです。

 その後100年以上に渡って小学生の通学かばんとして定着しているランドセルですが、ハリウッド女優ズーイー・デシャネルが赤いランドセルを背負っているスナップが2014年に配信され海外セレブの間で流行するきっかけになりました。世代にもよると思いますが、筆者が小学生の頃は6年間ランドセルを使う子はほとんどいませんでした。3~4年生くらいになると“ダサい”ものとして見られるようになり、少しずつリュックや肩掛けカバンなど思い思いの通学カバンを使うようになっていたものでした。それが海外セレブのおしゃれアイテムになるとは。ダサいというイメージを日本人皆が持っているわけではありませんが、海外セレブがおしゃれアイテムとしてランドセルを使いこなす姿は日本でも驚きを持って受け止められました。

 ズーイー・デシャネルの“衝撃”が起きた翌年、高級カバンメーカーの土屋鞄が「OTONA RANDSEL」シリーズを発売。そのコンセプトが話題となり、発売当日に数時間で完売しました。ビジネスシーンでも使えるように仕立て上げられ、その後も根強い人気を誇っています。インバウンド需要で外国人旅行客がランドセルを買い求めたこともあいまって、大人向けランドセル市場は盛況。吉田カバン、村瀬鞄行などのメーカーも参入しました。「ドラえもん」や「ちびまる子ちゃん」などのアニメによって日本好きの外国人にランドセルが浸透する、というケースもあったようです。

ビジネスでも使えるリュックという需要

 大人向けランドセルが流行った要因の1つはリュック型なので両手が空くことでしょう。従来のビジネスバックは手で持つか、肩にかけるかが主流で、どうしても片手がある程度ふさがってしまいます。両手が空くリュックはカジュアルな商品が数多くあるのですが、ビジネスシーンでも使えるリュックが意外と少なく、そこの需要に応えたものと思われます。コロナ禍により自転車通勤が増えたこともリュック需要の後押しとなったことでしょう。

 子供用のランドセルに視点を移すと、筆者が小学校に通っていた約30年前は「男子は黒、女子は赤」と決まっていたものですが、最近では色の選択肢も増えており、男子は黒、紺、青、女子は赤、ピンク、茶がトップ3という調査もあります(BioCafe調べ)。ジェンダーに関するとらえ方が多様化している現代を反映しているとも言えるかもしれませんね。

<参考サイト>
・ランドセルの歴史|ランドセル・ヒストリー|ランドセル工業会
http://www.randoseru.gr.jp/history/rekishi.html
・【土屋鞄】「大人ランドセル」に新型登場!新開発の防水レザーで、雨を気にせずスマートに背負う|土屋鞄製造所のプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000188.000007557.html
・ランドセルの人気色は?失敗しないカラーの選び方【2022年版】│BioCafe
https://biocafe-blog.com/randsel-popularity-color/
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中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト