社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.11.23

詰め替え用がボトル入りより高い理由

 地球環境の大切さに改めて注目が集まる中、シャンプーや洗剤などは詰め替え用を買うことで省資源に貢献している人も多いと思います。また、ボトル入りよりもお得だからと詰め替え用を選んでいる人も多いでしょう。しかし、実は詰め替え用が本体よりも高くなっている場合もあるのをご存知ですか? 企業側からしても容器代のかからない詰め替え用の方が断然コストは削減できているので安くなるはずなのに、なぜこういうことが起こるのでしょうか?

企業のマーケティング戦略の一環

 そもそも詰め替え用とは空になった容器に入れるものなので、まずはボトル入りを買う必要があります。一度ボトル入りを買えば「ボトルを捨てるのももったいない」と詰め替え用を継続して買いたくなるのが消費者の心理というもの。その心理をうまく生かして、まずは利益度外視でボトル入りを売って、詰め替え用を継続購入してもらうことで利益を出すのは、マーケティング手法のひとつとして有効だとされています。

 つまり、詰め替え用が高いのではなく、安く設定しているボトル入りの価格に対して、詰め替え用はそのままの価格になっているので割高に見えてしまっているのです。ちなみに、ボトル入りと詰め替え用では、詰め替え用の方が内容量が少なくなっていますが、詰め替え時に溢れないためという理由の他に、割高感を見えにくくするためともいわれています。

 こうした初回購入のハードルを下げて、継続購入で利益を取っていくマーケティング手法は、シャンプーや洗剤以外にも活用されています。例えばプリンターの場合は、本体の価格を安く設定して消費者に買ってもらい、インクを継続して買ってもらうことで利益を出す手法がよくとられています。定期購入することでフィギュアを完成させていく雑誌も、創刊号だけは格安の価格設定がされているのを見たこともあるでしょう。物を売る企業にとって大きな課題になる「入り口となる商品をいかに売るか」を解決するために有効な手段であることがうかがえます。

必ずしも詰め替え用が割高とは限らない

 では、詰め替え用は割高だからボトル入りを買った方が良いのか、というとそうとは限らないのが実状です。店頭で価格を確認してみると、確かに詰め替え用の方がお得に設定されている商品があることも確認できました。

 あるメーカによると「基本的には詰め替え用の方がお得な価格に設定している。しかし、他社から乗り換えてもらいたい、新商品を試してもらうために買ってもらいたい場合に、ボトル入りの価格を低く設定することがある」とのことなので、消費者としては商品やタイミングによってどちらが安いかを見極めるのが賢い買い物の仕方となるでしょう。

エコを取るか、お得を取るか

 環境のことを考えるのであれば詰め替え用を選んだ方が良いものの、お得を取るのであればボトル入りを選んだ方が良いと、消費者としてはどちらに判断基準を置くかによって選ぶべき方も変わってくるでしょう。もし詰め替え用を選ぶ場合には大容量や箱買いすることで確実にお得に購入することもできるので、買い方を工夫してみることをオススメします。

<参考サイト>
・シャンプーや洗剤、実はボトル入りより詰め替え用のほうが割高だった!│Business Journal
https://biz-journal.jp/2015/12/post_12725.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,700本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由

カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由

平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』

平和のための「国家連合」。このアイデアの源はサン=ピエールなのだが、現在ではカントの著作『永遠平和のために』が起源だともてはやされることが多い。その理由としては、「なぜ国家連合が必要なのか」「そもそもなぜ平和が...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/22
川出良枝
東京大学名誉教授 放送大学教養学部教授
2

「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?

「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?

戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方

2025年8月、米露、米ウクライナ、EUの首脳会談が相次いで実現した。その成果だが、中でもロシアにとって大成功と呼べるものになった。ディール至上主義のトランプ政権を手玉に取ったロシアが狙う「ベルト要塞」とは何か。事実上...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/12/21
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
3

逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾

逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾

逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる

「逆境とは何に逆らうことなのか」「人はそもそも逆境でしか思考しないのではないか」――哲学者鼎談のテーマは「逆境に対峙する哲学」だったが、冒頭からまさに根源的な問いが続いていく。ヨーロッパ近世、ヨーロッパ現代、日本...
収録日:2025/07/24
追加日:2025/12/19
4

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割

豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
黒田基樹
駿河台大学法学部教授 日本史学博士
5

生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状

生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状

生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地

日進月歩の進化を遂げている生成AIは、私たちの生活や仕事の欠かせないパートナーになりつつある。企業における生成AI技術の利用に焦点をあてる今シリーズ。まずは世界的な生成AIの導入事情から、日本の現在地を確認しよう。(...
収録日:2024/11/05
追加日:2024/12/24
渡辺宣彦
コグニザントジャパン株式会社代表取締役社長CEO