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50代から「定年準備」を始めた方が良い理由
平均寿命が伸び、「人生100年時代」と呼ばれる現在、長くなった定年後の自分を見据える人が増えてきました。ベストセラー『定年後 50歳からの生き方、終わり方』(中公新書)を書かれた楠木新氏は、そのベスト・タイミングを50代から、と考えています。その理由、実際に取り組んだほうがいいことなどについて、整理してみました。
そのうち60歳から70代半ばまでを「黄金の15年」と見ようと、楠木氏は主張しています。ただし、その年代を輝かせるも棒に振るのも準備次第。では、準備は早ければ早いほど良いのでしょうか。
30代や40代、まだ定年した自分のイメージが十分に湧かないうちから定年準備を始める手回しのいい人も世の中にはいます。しかし、30代から40代は、まだまだ本業に取り組む時期、そこで蓄積した経験値や技能が定年後の財産になるというのが楠木氏の考え方です。
また、肉体的な条件や気の持ち方も40代、50代、60代で段階的に変化します。せっかく若い頃から備えていても、いざその年代の自分にはフィットしない、ということがありがちなのです。
逆に、60歳になってから準備なしに飛び込むのも考えもの。経験者の話によると、待ちに待った釣り三昧・ゴルフ天国の日々を楽しめるのも最初の2、3か月からせいぜい半年程度。長年の宮仕えからの解放感が覚めると、「今日、何をしていいか分からない」「今日、どこへ行っていいのか分からない」時期がやってきます。
「仕事」という生活の中心を失うことが定年だとすると、それに代わる社会的な価値観を見つけるため、経験やスキルを生かして再就職したり、何かのビジネスを始めてみたりすることも、いわば「居場所づくり」になります。居場所を見つけるとは結局、自分の頭や行動を切り替えること、「自分が役に立つのはどこか」を、会社の名刺を通さずに考えてみることだからです。
そうはいっても居場所をシフトさせるには時間がかかります。そのために、50代の在職中から、少しずつ「仕事以外のこと」「これからの人生でやりたいこと」を見つけ、実践し、人脈などの輪を広げていくことが重要になってくるのです。
新しいことを始めた場合、多くの人が「3年1区切り」のパターンを実感しているといいます。うまくいくにせよ、いかないにせよ、立場やポジションを動かすのにそのぐらいの期間はかかるのでしょう。10年あれば、「3年1区切り」を3回ほど体験することができます。試行錯誤はあるにせよ、会社人間が、新しい行動様式を身につけるには10年の移行期間が大切になるということです。
60歳から65歳までの雇用延長制度を利用すると、これまでなじんできた「仕事」から離れる日が先に延びるだけでなく、その期間の仕事内容が変わったり、あるいは待遇面が厳しくなったりすることもあります。そうした状況に対して納得するのは難しいという人も少なくないようですが、この機会に思考を変えて、「会社人間」からの脱皮のための猶予期間と捉えてみるといいかもしれません。
1. 焦らずに急ぐ
2. 趣味の範囲にとどめない
3. 身銭を切る
4. 個人事業主と接触する
5. 相手のニーズに合わせる
6. 自分を持っていく場所を探す
7. 子どもの頃の自分をもう一度呼び戻す
まず「焦らずに急ぐ」ということで、ともかく50歳になったら準備を始め、会社に属しながらできることを増やしていく。「趣味の範囲にとどめない」は、社会の要請に応えるため、少しでもお金になることにこだわるということ。次の「身銭を切る」では、会社の経費という感覚から離れて、今までの枠組みを破っていく。「個人事業主」からは、社会と直接つながる感覚を教えてもらう。「相手のニーズに合わせる」ことも、会社人間からの脱皮につながる。そして「自分を持っていく場所を探す」ためにも、「子どもの頃の自分をもう一度呼び戻す」ことは、大きなきっかけになる。
ということで、足を動かし、人と出会って、「定年後」の黄金の15年間を謳歌したいものです。
定年準備は「50代から」が必要十分
一口に定年後といっても、現在の平均余命からすると、一般的な定年年齢である60歳から男性では21.64年、女性では27.74年の人生があります(厚生労働省発表・令和2年簡易生命表より算出)。仮に百歳長寿を達成すれば40年、会社人生とほぼ同じ長さです。そのうち60歳から70代半ばまでを「黄金の15年」と見ようと、楠木氏は主張しています。ただし、その年代を輝かせるも棒に振るのも準備次第。では、準備は早ければ早いほど良いのでしょうか。
30代や40代、まだ定年した自分のイメージが十分に湧かないうちから定年準備を始める手回しのいい人も世の中にはいます。しかし、30代から40代は、まだまだ本業に取り組む時期、そこで蓄積した経験値や技能が定年後の財産になるというのが楠木氏の考え方です。
また、肉体的な条件や気の持ち方も40代、50代、60代で段階的に変化します。せっかく若い頃から備えていても、いざその年代の自分にはフィットしない、ということがありがちなのです。
逆に、60歳になってから準備なしに飛び込むのも考えもの。経験者の話によると、待ちに待った釣り三昧・ゴルフ天国の日々を楽しめるのも最初の2、3か月からせいぜい半年程度。長年の宮仕えからの解放感が覚めると、「今日、何をしていいか分からない」「今日、どこへ行っていいのか分からない」時期がやってきます。
「会社人間」から脱皮するのは10年がかり?
居場所を探して、図書館や喫茶店、スポーツクラブに行くのも悪くはありませんが、やがて充実した「核」のようなものが欲しくなります。自由に使える時間のなかで、自分は何者かが問われるのが定年後なのです。「仕事」という生活の中心を失うことが定年だとすると、それに代わる社会的な価値観を見つけるため、経験やスキルを生かして再就職したり、何かのビジネスを始めてみたりすることも、いわば「居場所づくり」になります。居場所を見つけるとは結局、自分の頭や行動を切り替えること、「自分が役に立つのはどこか」を、会社の名刺を通さずに考えてみることだからです。
そうはいっても居場所をシフトさせるには時間がかかります。そのために、50代の在職中から、少しずつ「仕事以外のこと」「これからの人生でやりたいこと」を見つけ、実践し、人脈などの輪を広げていくことが重要になってくるのです。
新しいことを始めた場合、多くの人が「3年1区切り」のパターンを実感しているといいます。うまくいくにせよ、いかないにせよ、立場やポジションを動かすのにそのぐらいの期間はかかるのでしょう。10年あれば、「3年1区切り」を3回ほど体験することができます。試行錯誤はあるにせよ、会社人間が、新しい行動様式を身につけるには10年の移行期間が大切になるということです。
60歳から65歳までの雇用延長制度を利用すると、これまでなじんできた「仕事」から離れる日が先に延びるだけでなく、その期間の仕事内容が変わったり、あるいは待遇面が厳しくなったりすることもあります。そうした状況に対して納得するのは難しいという人も少なくないようですが、この機会に思考を変えて、「会社人間」からの脱皮のための猶予期間と捉えてみるといいかもしれません。
「考える」よりも「行動する」ための7か条
最後に最も気にかけたいのは、頭で考えるよりも行動が大事だということです。そのための方法を楠木氏は7か条にまとめました。ざっとご紹介しましょう。1. 焦らずに急ぐ
2. 趣味の範囲にとどめない
3. 身銭を切る
4. 個人事業主と接触する
5. 相手のニーズに合わせる
6. 自分を持っていく場所を探す
7. 子どもの頃の自分をもう一度呼び戻す
まず「焦らずに急ぐ」ということで、ともかく50歳になったら準備を始め、会社に属しながらできることを増やしていく。「趣味の範囲にとどめない」は、社会の要請に応えるため、少しでもお金になることにこだわるということ。次の「身銭を切る」では、会社の経費という感覚から離れて、今までの枠組みを破っていく。「個人事業主」からは、社会と直接つながる感覚を教えてもらう。「相手のニーズに合わせる」ことも、会社人間からの脱皮につながる。そして「自分を持っていく場所を探す」ためにも、「子どもの頃の自分をもう一度呼び戻す」ことは、大きなきっかけになる。
ということで、足を動かし、人と出会って、「定年後」の黄金の15年間を謳歌したいものです。
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