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DATE/ 2021.12.23

なぜ30年前の本がバカ売れ?tiktok売れとは

 日経トレンディの「2021年ヒット商品ベスト30」で、1位に輝いた「TikTok売れ」。TikTok自体は耳にしたことがある、スマホにアプリを入れているという人も多いかと思いますが、「TikTok売れ」とはTikTokを通して商品が売れること。どのような売れ方をしているのか、具体例を見てみましょう。

30年前の小説が10万部近く増刷

 代表的な例として有名になったのは筒井康隆さんの約30年前の作品「残像に口紅を」。章が進むごとに50音がひとつずつ消えるという設定のSF小説で、人気TikTokerのけんごさんが紹介した動画は800万回再生。9万5000部の増刷につながりました。実は4年前にもテレビ朝日のバラエティ番組「アメトーーク!」の「本屋で読書芸人」回にてカズレーザーさんが絶賛したことで約10万部の増刷につながったこともあり、発売から時間が経っての再ブレイクを2度も果たした作品なのです。筒井さんは婦人公論のインタビューで「時代を超えて読み継がれるというのは作者冥利に尽きます。10代や20代の人たちは本を読まないなんて言うけれど、何を読めばいいのかわからないだけなのかもしれませんね」と喜びを口にしていました。

 2020年の「NHK紅白歌合戦」に出場した瑛人さんもTikTokがきっかけでブレイクしました。紅白で歌った「香水」はもともと2019年4月にリリースされた曲でしたが、1年以上経ってからTikTokでカバーされる機会が増えて人気に火が付いたパターンです。あれよあれよという間に紅白出場までつかみ取ることになりました。同じく2020年の紅白に出場し、今年もヒットを飛ばしているYOASOBIもtiktok発のアーティストと言っても差し支えないでしょう。

グミの広告効果が50億円相当?

 小説、アーティストのように「人」起点で売れるものばかりではありません。地球を模したデザインのグミ「プラネットグミ」もTikTokの追い風を受けました。食べると舌が青くなる見た目の面白さからか、まずは韓国で、次いで日本でこのグミを食べる映像が次々と投稿され、「10代女性の2021年上半期トレンド」1位に輝いたほどでした。「地球グミ」のハッシュタグがついた動画は計5億回以上再生されているとのことです。YouTubeの動画広告は1再生あたり2円~20円とも言われているため、
「地球グミ」ハッシュタグ付き動画の広告効果を1再生10円としてざっくり試算すると50億円もの効果になるわけです。

 TikTokの特徴はレコメンド能力。ユーザーの視聴傾向から類似したコンテンツを中心に次々とおすすめ動画を見せる仕組みが非常に強力です。また、ユーザーが検索して動画を探すことはできるものの、自発的に動画を探す使い方よりもレコメンドされて動画を次から次へと見るのが主流。ひとたび話題の動画になれば多くのユーザーの目に触れやすく、拡散力がとても強いメディアとも言えます。ユーザーが投稿する際のハードルも低いため、プラネットグミのように数多くのユーザーが動画を投稿するとますます多くのユーザーの目に触れる、という循環が生まれます。

 TikTokが若者の間で中心的な存在を占め続ける限り、今後も「TikTok売れ」は勢いを増すことはあっても、衰えることはなかなかないと言えそうです。2022年はどんなものがTikTokを経由して売れていくのでしょうか、楽しみですね。

<参考サイト>
“ドルチェ&ガッバーナ”の瑛人も。TikTok発の次世代アーティストの魅力 | 日刊SPA!
https://nikkan-spa.jp/1696450
TikTokで話題の「地球グミ」、10代女性の上半期1位に│Lmaga.jp
https://www.lmaga.jp/news/2021/06/288694/
YouTube広告の費用相場を種類ごとに解説|費用対効果も紹介|KAIZEN PLATFORM
https://kaizenplatform.com/contents/youtube-advertisingcost
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小原雅博
東京大学名誉教授