テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.02.01

意外と知らない「違法行為」5選

 日頃なにげなく行っている行為でも、実は犯罪ということもあるようです。基本的には迷惑行為の度合いによって犯罪となるようですが、中には特に誰にも迷惑はかけていなくても、紛らわしい行為自体が犯罪となることも。ここでは意外と知られていないけれど実は「違法行為」とされるものを取り上げてみます。

ハサミを隠して携行した

 警視庁において平成31年・令和元年(2019年)に軽犯罪法違反でもっとも検挙件数が多かったのは凶器携帯です。凶器携帯とは「刃物など人に危害を加え得る器具を正当な理由なく携行する行為(軽犯罪法1条2号)」とのこと。刃物の場合「刃渡り」は関係ありません。ただし本人が凶器を隠しているという認識がある場合に限られます。本人が知らないで渡されたものの中に刃物があっても、罪は成立しません。またもし所持していたとしても、正当な理由があれば問題ありません。たとえば野球をするために自宅から球場までバットを持ち歩く、自宅で使うカッターナイフやハサミを買った帰り道といった場合が該当します。

目的なくドライバーなどの工具を携行した

 同じく軽犯罪法上の「凶器携帯」に近いものに「侵入具携帯」というものもあります。これは主に、正当な理由なくドライバーを持ち歩いていた場合などに該当します。ドライバーやバールなどの工具は「指定侵入工具」とみなされることがあるようです。つまり、空き巣などに入る目的があったのではないかということが疑われます。もちろん、工事の仕事などをしている人がこういった工具を持ち歩くことは問題ないのですが、そういった仕事用ではなく車に工具を載せておいたままにしておくと、疑われた際に検挙される可能性はあります。検挙数自体は多くないですが、意識しておいた方がいいかもしれません。

公共の場で警察官のコスプレをした

 コスプレも時に犯罪となります。警察官に限らず、自衛官、消防隊員といったコスプレは軽犯罪法第1条15号に違反していることになります。つまり、これらの制服やバッジを身につけたり、本物と誤解されるようなものを身につけたりすることは禁止されています。また称号を持っていないのに〇〇博士と称する、弁護士免許を持っていないのに弁護士と名乗ることは詐称です。同様にこの法律に違反しているとみなされます。

歩きスマホで怪我をさせた

 単に歩きスマホをしていたという事実自体では罪とはなりません。問題となるのは、意図せず人にぶつかって怪我をさせた場合です。相手に怪我をさせてしまった場合、刑法第209条での過失傷害罪となり、30万円以下の罰金もしくは科料となります。またもし相手が死亡してしまった場合、過失致死罪(刑法第210条)となり、50万円以下の罰金に処されることがあります。歩きスマホは大変リスクの高い行為と言えます。

処方薬を人に渡した

 病院で自身に処方された薬を誰かに渡すと、薬機法(旧薬事法)第24条違反となります。処方薬の場合、その人の既往歴や体質などに合わせた薬が処方されます。市販薬とはことなり副作用や用法・用量なども管理する必要のある薬が処方薬です。安易に他人が使用すると重大な問題になるリスクがあることから、規制されています。

ついやってしまいがちだけど罪は罪

 罪の意識がなくとも、罪となってしまうことは意外とあることがわかります。こうみてみると、ほんのちょっとした気持ちであっても他者に迷惑をかけている、あまり感じていないけれど実はリスクの高いことをしている、ということはあるかもしれません。もちろん目くじらを立てて誰かを非難する必要はありません。しかし、誰もが自由で快適に生きるためには、こういったルールは必要だといえるでしょう。

<参考サイト>
軽犯罪法違反は誰でも起こし得る!?全条文の具体的なケースを解説|泉総合法律事務所
https://izumi-keiji.jp/column/houritsu-gimon/keihanzai-case#1-2
軽犯罪法と刃物|凶器携帯の罪について|泉総合法律事務所
https://izumi-keiji.jp/column/houritsu-gimon/kyokikeitai
実は法律違反?身近に潜む軽犯罪などの違反行為とは|ALSOK
https://www.alsok.co.jp/person/recommend/2015/

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

軍の配置を見れば分かる!台湾のクーデター対策とは

軍の配置を見れば分かる!台湾のクーデター対策とは

クーデターの条件~台湾を事例に考える(2)クーデターの成功条件とリスク

クーデターが成功するかどうかは、鎮圧側とのせめぎ合いをどのように制するかが鍵を握っている。クーデターを仕掛ける国軍と、それを防ぐために策を講じる政府。その軍配を左右する条件や両陣の戦略、対策を具体的に解説する。...
収録日:2025/07/23
追加日:2025/10/05
上杉勇司
早稲田大学国際教養学部・国際コミュニケーション研究科教授 沖縄平和協力センター副理事長
3

「虚実篇」から学ぶ優秀なリーダーの役割と戦略の重要性

「虚実篇」から学ぶ優秀なリーダーの役割と戦略の重要性

『孫子』を読む:虚実篇(1)いかに主導権を握るか

今回から開始となる『孫子』シリーズの第6編「虚実篇」。虚実とは空虚と充実であり、空虚とは手薄、充実とは手厚いことだと田口氏は説く。また、虚偽と真実という虚実もある。これらはいったい何を意味しているのか。虚実篇では...
収録日:2020/05/21
追加日:2022/01/03
田口佳史
東洋思想研究家
4

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?

「習近平中国」「習近平時代」における中国内政の特徴を見る上では、それ以前との比較が欠かせない。「中国は、毛沢東により立ち上がり、鄧小平により豊かになり、そして習近平により強くなる」という彼自身の言葉通りの路線が...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/09/25
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使
5

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本

組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授