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DATE/ 2022.05.29

世界の「人類が登頂したことない山」3選

 世界最高峰のエベレスト(標高8,848メートル)に人類が初登頂したのは1953年5月29日のこと。成し遂げたのはニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリーとシェルパ(ヒマラヤの登山案内人)テンジン・ノルゲイです。一方、これより29年前にイギリスの登山家、ジョージ・マロリーが実は登頂していたのではないかという話もあります。「なぜエベレストに登るのか?」と訊かれて「そこに山(エベレスト)があるから」と答えた逸話で知られる人物。1999年に山頂付近で遺体が発見されましたが登頂の証拠写真は見つかっていません。登山は多くの人間を虜にしてきましたが、実は現在でも未踏峰となっている山はいくつかあります。

ガンカープンスム(ガンケルプンスム、標高7,570m)

 ブータンで最高峰の山「ガンカープンスム(ガンケルプンスム)」は、未踏峰として世界最高峰です。宗教上の理由で登山禁止とされていましたが、いったん1983年に登山が解禁されています。こののち1985年、1986年に日本を含む4つの遠征隊がチャレンジしましたがいずれも失敗しています。

 さらにブータンは1994年、6000m以上の山への登山を信仰上の理由で法的に禁止しました。加えてこの山に対しては2003年にブータン国王が永久未踏峰とすると宣言を発表しています。大きくみると信仰の中心地であることから、現在でも未踏峰となっている山の代表格です。

梅里雪山(メイリーシュエシャン、標高6,740m)

 梅里雪山(メイリーシュエシャン)とは、中国雲南省とデチェン(迪慶)チベット(蔵)族自治州の州境に位置している、6つの連山の総称です。チベット仏教の聖地として信仰されている山であり、山腹にある寺院には巡礼登山が行われてきました。20世紀初頭から世に知られ始め、ヒマラヤの山々が制覇されていく中でも、未踏峰として注目されてきました。

 なぜいまだに未踏峰なのかと言えば、第一にはとにかく険しく気候が過酷であることが理由のようです。長江をはじめとする3つの大河の上流によって侵食された大峡谷があり、さらにインド洋からのモンスーンの影響で強風と大雪が続きます。1991年には日中合同登山隊17名が遭難しています。もともとチベット仏教の聖地であることから、登山の協力を得難い事情もあったようです。こういった信仰上の理由を中心として2000年には中国政府がこの山への登山を法的に禁止しており、今でも未踏峰となっています。

カイラス山(標高6,656m)

 チベット高原西部に位置しているカイラス山は、近くのヒマラヤ山脈とは異なる独立峰です。これまでにも仏教やヒンドゥー教、ジャイナ教、ボン教(ヒマラヤの伝統的な土着宗教)などの聖地として守られてきました。こういった理由から、登頂許可が出たことはこれまで一度もないようです。伝説としては11世紀の仏教修行者ミラレパが登頂したとされています。こういった伝説も含めて聖地であると言っていいでしょう。

 カイラス山周辺には公共の交通手段もない秘境ですが、山の周囲は全長52km、標高5,000m越えの巡礼路となっています。またこの巡礼路は、タイミングによっては旅行会社が主催するトレッキングツアーも開かれており、観光客なども多いようです。

信仰と自然環境が未踏峰となる理由

 ほかにもいくつか未踏峰は残っているようですが、未踏峰となる理由の一番大きなポイントは、まず宗教的理由が大きいようです。地域での聖地であり信仰の対象である以上、よそものがずかずかと入っていくことはできません。二つめには厳しい自然環境の問題による危険性の高さが挙げられます。もちろんこの二つは大きく関係していると言えるでしょう。

 環境が厳しく簡単に人が入りにくいことで土地に神聖さが生じます。また神聖さから伝説も生まれ、神聖であることで今度はさらに人が入りづらくなります。また人が入らないことで登山ルートや登山方法も蓄積されません。こうして未踏峰はこの先ももしかしたら長い間、未踏峰としてあり続けることになるのかもしれません。

<参考サイト>
世界の人類未踏峰の山6選!未だに登頂できない危険な山の実態とは?|暮らしーの
https://kurashi-no.jp/I0015271#head-e7e066d2996f1bc93fc3a83f0f904ed7
ガンケルプンスム・ジャワリンガ・キュンガリなど中国の未踏峰の美しい山を紹介!|Travel Note
https://travel-noted.jp/posts/5359#head-37b1fdc23460d6a77428d9649c388ec8
超絶! デカい山の世界 PART3 絶対に誰も登れない山「梅里雪山」の正体|BRAVO MOUNTAIN
https://bravo-m.futabanet.jp/articles/-/92652
聖地カイラス山巡礼|西遊旅行
https://www.saiyu.co.jp/itinerary/new/GCCN21/
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テンミニッツTV編集部
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