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2030年に必要とされる「スキル」とは?
レジ打ちやカスタマーサポート、運転や製造といった仕事など、ここ数年でさまざまな仕事が自動化されはじめています。背景にあるのは、AI、通信、ロボットやセンサリングといった分野の急速な発展です。一定のルールに基づいた行動であれば、AIは一瞬で最適解を導き出し、ロボットは疲れることなく精密な動きを繰り返します。この点では明らかに人間よりも優れています。こうして人間に求められる「スキル」は少しずつ変化しています。では少し先の未来、2030年にはどのような「スキル」が必要になるのでしょうか。
1位 Learning Strategies(Skills)0.632 戦略的学習力
2位 Psychology(Knowledge)0.613 心理学
3位 Instructing(Skills)0.609 指導力
4位 Social Perceptiveness(Skills)0.605 社会的洞察力
5位 Sociology and Anthropology(Knowledge)0.603 社会学・人類学
6位 Education and Training(Knowledge)0.602 教育・訓練
7位 Coordination(Skills)0.571 調整力
8位 Originality(Abilities)0.570 独創的な発想力
9位 Fluency of Ideas(Abilities)0.562 発想の豊かさ
10位 Active Learning(Skills)0.534 能動的な学習力
やや抽象的な能力が並んでいますが、中でも1位の「戦略的学習力」は掴みづらいかもしれません。これは簡単に言えば「学習する対象や内容の選定する力、およびその学習を効率よくかつ効果的に行うための手段や方法までを正しく決定する力」といったことかと思われます。
どういったやり方が効率的で効果的かということは、さまざまな学習の方法を知っておく必要があります。また何を学ぶかということに関しては、自身の特性ならびに社会状況や自身の置かれた立場を明確に意識する必要があります。つまり、自身や自身を取り巻く社会を客観的に見る目を持ちつつ、自身を導く能力と言えそうです。
パターンに沿った反復行動に関するスキルや能力は、プログラムされたAIに基づくシステムやロボット技術によってカバーできます。AIにできない仕事は何かと言えば、自らを社会の一部として認識し、自らをどの方向に働かせるべきか判断する能力ではないでしょうか。これができるのは今のところ人間だけです。
「戦略的学習力」とは変化が著しい現代において、世の中にとって何が必要かを素早く見極め、効率的に身につける能力です。もちろんこれは一筋縄ではいかず、さまざまに試行錯誤して失敗してから身につくものかと思われるので、初めから「効率的に」と考えて動くことは難しいでしょう。こう考えると、失敗から学び、その経験の積み重ねを活かせる人間に身に付く能力とも言えそうです。
1位 Control Precision(Abilities)操作の正確さ -0.466
2位 Wrist-Finger Speed(Abilities)手作業の素早さ -0.423
3位 Rate Control(Abilities)レート制御 -0.394
4位 Manual Dexterity(Abilities)手作業の器用さ -0.365
5位 Finger Dexterity(Abilities)指先の器用さ -0.354
6位 Operation and Control(Skills)機械などの操作能力 -0.326
7位 Reaction Time(Abilities)応答の素早さ -0.322
8位 Arm-Hand Steadiness(Abilities)手作業の安定性 -0.297
9位 Equipment Maintenance (Skills) 機器の管理能力 -0.284
10位 Response Orientation (Abilities) 反応の正確さ -0.282
ここに挙げられた能力は、一般的にはAIやロボットの技術で代替可能な、人間の物理的な能力をもとにしたものと考えられます。「手先や指先の正確さや器用さ」や「手作業の安定性」といった能力でイメージされるのは、工場での細かい作業などではないでしょうか。このあたりはロボットが代替する状況は今後も増えると思われます。
一方、同じく手作業のスキルを使う仕事として考えてみて、美容師や外科手術を行う医師という職業はどうでしょうか。たしかに、現状ではロボットには置き換えられない専門職です。今後はどうでしょうか。AIが最適解を見つけて高感度センサーを備えたロボットが動くといった単純な仕組みで捉えれば、問題はさらなる技術の向上によって解決するかもしれません。もちろんこういった専門職ではかなり高い安全性が求められることは間違いないですが、一定程度のパターンに沿った動きであれば自動化はあり得るのではないでしょうか。
求められているのは「戦略的学習力」
2017年に英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授は「THE FUTURE OF SKILLS EMPLOYMENT IN 2030(2030年におけるスキル雇用の未来)」と題された論文を発表しています。この論文では雇用に関係する能力を120に分け、雇用との相関の高いものからランキング付けしています。ということで2030年に必要とされる能力として挙げられたトップ10をみてみましょう。右の数値は雇用との相関係数で、数値が1に近いほど関係性が強い(雇用につながりやすい)ことを意味しています。1位 Learning Strategies(Skills)0.632 戦略的学習力
2位 Psychology(Knowledge)0.613 心理学
3位 Instructing(Skills)0.609 指導力
4位 Social Perceptiveness(Skills)0.605 社会的洞察力
5位 Sociology and Anthropology(Knowledge)0.603 社会学・人類学
6位 Education and Training(Knowledge)0.602 教育・訓練
7位 Coordination(Skills)0.571 調整力
8位 Originality(Abilities)0.570 独創的な発想力
9位 Fluency of Ideas(Abilities)0.562 発想の豊かさ
10位 Active Learning(Skills)0.534 能動的な学習力
やや抽象的な能力が並んでいますが、中でも1位の「戦略的学習力」は掴みづらいかもしれません。これは簡単に言えば「学習する対象や内容の選定する力、およびその学習を効率よくかつ効果的に行うための手段や方法までを正しく決定する力」といったことかと思われます。
どういったやり方が効率的で効果的かということは、さまざまな学習の方法を知っておく必要があります。また何を学ぶかということに関しては、自身の特性ならびに社会状況や自身の置かれた立場を明確に意識する必要があります。つまり、自身や自身を取り巻く社会を客観的に見る目を持ちつつ、自身を導く能力と言えそうです。
パターンに沿った反復行動に関するスキルや能力は、プログラムされたAIに基づくシステムやロボット技術によってカバーできます。AIにできない仕事は何かと言えば、自らを社会の一部として認識し、自らをどの方向に働かせるべきか判断する能力ではないでしょうか。これができるのは今のところ人間だけです。
「戦略的学習力」とは変化が著しい現代において、世の中にとって何が必要かを素早く見極め、効率的に身につける能力です。もちろんこれは一筋縄ではいかず、さまざまに試行錯誤して失敗してから身につくものかと思われるので、初めから「効率的に」と考えて動くことは難しいでしょう。こう考えると、失敗から学び、その経験の積み重ねを活かせる人間に身に付く能力とも言えそうです。
2030年には必要とされないスキル
一方で2030年に必要とされないスキルはどのようなものでしょうか。以下は、論文の中で分析されている120の能力のうち、雇用との相関の低いワースト10です。先のトップ10と同じく、右の数値は雇用との相関係数で、数値が1に近いほど関係性が強い(雇用につながりやすい)ことを意味しています。1位 Control Precision(Abilities)操作の正確さ -0.466
2位 Wrist-Finger Speed(Abilities)手作業の素早さ -0.423
3位 Rate Control(Abilities)レート制御 -0.394
4位 Manual Dexterity(Abilities)手作業の器用さ -0.365
5位 Finger Dexterity(Abilities)指先の器用さ -0.354
6位 Operation and Control(Skills)機械などの操作能力 -0.326
7位 Reaction Time(Abilities)応答の素早さ -0.322
8位 Arm-Hand Steadiness(Abilities)手作業の安定性 -0.297
9位 Equipment Maintenance (Skills) 機器の管理能力 -0.284
10位 Response Orientation (Abilities) 反応の正確さ -0.282
ここに挙げられた能力は、一般的にはAIやロボットの技術で代替可能な、人間の物理的な能力をもとにしたものと考えられます。「手先や指先の正確さや器用さ」や「手作業の安定性」といった能力でイメージされるのは、工場での細かい作業などではないでしょうか。このあたりはロボットが代替する状況は今後も増えると思われます。
一方、同じく手作業のスキルを使う仕事として考えてみて、美容師や外科手術を行う医師という職業はどうでしょうか。たしかに、現状ではロボットには置き換えられない専門職です。今後はどうでしょうか。AIが最適解を見つけて高感度センサーを備えたロボットが動くといった単純な仕組みで捉えれば、問題はさらなる技術の向上によって解決するかもしれません。もちろんこういった専門職ではかなり高い安全性が求められることは間違いないですが、一定程度のパターンに沿った動きであれば自動化はあり得るのではないでしょうか。
<参考サイト>
THE FUTURE OF SKILLS EMPLOYMENT IN 2030
https://futureskills.pearson.com/research/assets/pdfs/technical-report.pdf
戦略的学習力(ラーニングストラテジー)とは?未来に必要なスキルを身につける方法|三菱電機ITソリューションズ株式会社
https://www.mdsol.co.jp/column/column_122_1913.html
THE FUTURE OF SKILLS EMPLOYMENT IN 2030
https://futureskills.pearson.com/research/assets/pdfs/technical-report.pdf
戦略的学習力(ラーニングストラテジー)とは?未来に必要なスキルを身につける方法|三菱電機ITソリューションズ株式会社
https://www.mdsol.co.jp/column/column_122_1913.html
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