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DATE/ 2022.10.16

なぜ「ナンバープレート」は盗まれるのか

 自動車の盗難は手口が巧妙化しているとはいえ、全体の件数としては年々減少傾向にあります。また個別の部品を狙った盗難件数も減少傾向にあります。ただし、部品盗難の中でもナンバープレートの盗難が占める割合は上昇しており、令和3年(2021年)のナンバープレート盗難は部品盗難のおよそ44.7%を占めています。では、なぜナンバープレートが狙われるのでしょうか。

転売が増えている

 ナンバープレートが盗まれる理由で一つ目に挙げられるのは、転売です。海外向けのオークションサイトなどで「JDM PLATE」と検索すると、日本のナンバープレートがかなり多くヒットします。よく見るとレプリカも結構あるようですが、どう見ても本物と思われるものも紛れています。安いものでは日本円で数千円程度ですが、なかには5万円以上のものもあり、またとくにゾロ目などは10万円を越える値段がつくこともあるようです。

 ちなみにJDMとはJapanese Domestic Marketの略です。基本の意味は「日本市場」ですが、これが転じて今では「日本だけで売られているものや日本仕様のもの」という意味があるようです。このように言葉が転用されてきた背景には、特にいまアメリカを中心として、車に日本的な装飾を施すことが流行していることが関連しているようです。これには有名なカーアクション映画「ワイルド・スピード」シリーズが影響しているという話もあります。こういった需要にこたえる形で日本のナンバープレートが出品されている側面があるようです。

 ちなみに以前は、廃車のナンバープレートは全て返却しなければなりませんでしたが、2019年からは記念に所持しておくことが可能になりました。ただし、この際には直径4センチ以上の穴をあけることがルールとして定められています。出品されているナンバープレートはこういった穴がないことから、盗難によるものと考えられます。

 こういった転売目的は最近の傾向としてあるようですが、もちろん、盗難されるナンバープレートは従来から犯罪にも使用されてきました。たとえば、盗んだ車をそのまま運転していれば、街中のカメラや道路の監視カメラですぐに発見されてしまいます。そこで盗んだ車のナンバープレートを付け替えながら走れば、しばらくの時間稼ぎができるのです。こういった用途で盗まれるナンバープレートは現在でも少なからず存在します。

盗難を防ぐにはナンバーロックボルトが有効

 盗難対策としては、まずはなるべく人気のないところに駐車することを避ける、という点が基本です。加えて物理的な手段としては、盗難防止ネジやナンバーロックボルトと呼ばれるものが推奨されています。これは、通常のドライバーやレンチでは取り外せない特殊な加工が施された留め具です。最近では純正ディーラーオプションとして用意している場合も多いようです。各メーカーでボルトの頭に自社ロゴが付いたデザインなどもあり、デザイン性も意識されているようです。数千円程度から販売されています。

 もしナンバープレートを盗難された場合、かなり面倒なことになります。まずはもちろん被害届を出します。その後はナンバープレートのない車は公道を走れないので、役所で仮ナンバーを申請する必要があります。その後仮ナンバーを付けて陸運局で手続きをして、リアのナンバープレートを封印してもらいます。この間それぞれの手続き場所に足を運び、さまざまな書類のやり取りをして、そのたびに手数料を払うことになります。これにたいへんな手間暇がかかることはいうまでもありません。ほんの少しの出費で、ナンバープレート盗難のリスクは下げることができます。対策しない手はないのではないでしょうか。

<参考サイト>
自動車盗難等の発生状況について | 警察庁
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/bouhan/car/202203jidousyatou.pdf
「ナンバープレート」の盗難被害が増加! 驚くべき「目的」とは?|WEB CARTOP
https://www.webcartop.jp/2020/12/630335/
ナンバープレートを盗まれた!盗難された場合の再発行手続きを調べてみた|CLICCCAR
https://clicccar.com/2022/04/01/1173480/
ナンバープレート盗難被害が増加! 盗んだナンバープレートはどんな目的で使われるのか?|モーサイ
https://mc-web.jp/life/zatsuneta/73380/
ロックボルト/ロックナット|NISSAN
https://www.nissan.co.jp/OPTIONAL-PARTS/WHEELLOCK/
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授