テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.01.29

何気ない行動が「犯罪」に!身近な違反行為とは

“軽犯罪”はきちんと法律で定められている

 自分も他人も平等に、安心して暮らすためには、法律を守ることが大切ですよね。世の中には法律を破って悪事をはたらく人もいますが、ほとんどの人はわざわざ法律に違反しようなどとは考えていないはずです。ところが、そんなつもりはないのにうっかり法律違反をしてしまう可能性もあることをご存知でしょうか。

 日本には「軽犯罪法」という法律があり、第1条に34号までの軽犯罪が定められています。このうち、動物虐待を禁じた21号は「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)が定められたため削除されており、現時点(2022年12月31日)では実質上33項目が“軽犯罪”となっています。軽犯罪法はその名のとおり、軽微な秩序違反を取り締まる目的で定められているため、日常生活に関係する内容も少なくありません。しかも違反すればもちろん犯罪になり、拘留(1日以上30日未満の拘束)または科料(1千円以上1万円未満の罰金)の刑罰が定められています。

 軽犯罪法違反の時効はとても短期間で、犯行の終了から1年となっており、逮捕や起訴はされにくいといわれています。しかし犯罪である以上、絶対にされないとはいえません。注意をしておくに越したことはないでしょう。

こんな身近な行動も軽犯罪法違反に

 それでは、どんなことをすると軽犯罪法違反になるのでしょうか。具体的な例を上げますので、参考にしてみてください。

 工具類の携行→3号違反:ドライバーやバールなどの工具類は「指定侵入工具」とされているため、バッグに入れて持ち歩いたり車に積んでおいたりすると、建築物に侵入するおそれがあると見なされて軽犯罪法違反に問われてしまいます。念のため持ち歩く場合などは注意しましょう。建設や工事などの事業のために携行している場合は、もちろん違反になりません。

 行列への割り込み→13号違反:電車などの公共の乗り物や、演劇などの催し物を待って並んでいる人々を威圧し、列に割りこんだり列を乱したりした場合は軽犯罪法違反になります。行列の割り込みに関しては、スーパーのレジ待ちなどでも不快な思いをする人の話をよく聞きますよね。こんな身近な行動も犯罪になることを忘れないようにしましょう。

 道路に唾を吐く→26号違反:街路や公園など不特定多数の人が利用する場所に、たんつばを吐いたり吐かせたりした場合は違反になることが明記されています。どうしても出したいときはティッシュなどで受け止めてからきちんとごみ箱に捨てましょう。また、唾を人に吐きかけてしまった場合は器物損壊罪や暴行罪に問われることもあります。

 “よく見聞きするマナーの悪い人”がすることは、軽犯罪法違反になる可能性が充分あります。また、工具類の持ち歩きなどは自分でもうっかりやってしまいそうですよね。こんな身近な行動でも、有罪が確定すれば前科がついてしまいます。日常生活の中で意識しておくことが大切です。

軽犯罪法以外でも身近な違反に要注意

 身近な違反行為は、軽犯罪法違反以外にもまだいろいろあります。具体的な例をいくつか上げてみましょう。

 指定日以外のごみ出し→廃棄物処理法違反:指定日以外に出されたごみはカラスや野良猫に荒らされて迷惑ですが、これは単なる迷惑行為ではなくれっきとした犯罪です。ごみ出しを忘れたときは次の回収日まで自宅で保管しましょう。また、勝手にごみを焼却すると廃棄物処理法違反に問われるおそれがあるほか、不用意に火をたくと軽犯罪法第1条9号違反になる可能性もあります。

 釣銭を多くもらったことに気づいていながら申し出ない→詐欺罪・占有離脱物横領罪:買い物をしたときに、店員のミスで釣銭を多くもらってしまうこともありますよね。しかしこれを申し出ないでいると、詐欺罪になってしまいます。また、あとから気づいてもそのままにしておくと、横領罪に問われるかもしれません。お釣りを多くもらったら、気づいたときにすぐ返しましょう。

 SNSでデマを拡散→信用毀損罪:近年はツイッターなどのSNSを利用して匿名で事実と異なる情報を拡散する悪質な嫌がらせが横行しています。しかしこのデマで他人の経済的な信用を傷つけると信用毀損罪に問われる可能性があります。匿名でデマを流しても通信会社には身元がわかっているので、警察が調べればすぐわかります。卑怯な行為をした人は必ず突きとめられるのです。

 身近な行為による犯罪は、モラルの有無を問われる内容ともいえます。「人として美しくない」と感じることは、しないように心がけることが大切ですよね。ただし、本当に犯罪と判定されるかは、法律の専門家が状況を総合的に見なければわかりません。今回ご紹介した内容はあくまで一例で、解釈はケースバイケースとなることをご了承ください。もし困ったことがあれば、専門家や専門機関に相談しましょう。

<参考サイト>
・MEN'S NON-NO WEB 日常で何げなくやってることが実は…!?「それ、罪です!」専門家がジャッジ !!
https://www.mensnonno.jp/lifestyle/worries/19913/
・ベリーベスト法律事務所 知らない間に法律違反? 身近な軽犯罪や違反行為について解説
https://keiji.vbest.jp/columns/g_other/6292/
・e-GOV法令検索 軽犯罪法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000039
・ALSOK 実は法律違反?身近に潜む軽犯罪などの違反行為とは
https://www.alsok.co.jp/person/recommend/2015/
・ベリーベスト法律事務所 軽犯罪法違反で逮捕されることはある? 実際に問われる罰則や事例とは
https://keiji.vbest.jp/columns/g_other/4950/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは

日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは

「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念

今も明治政府による国家モデルが生きている現代社会では、日本は中央集権の国と捉えられがちだが、歴史を振り返ればどうだったのかを「集権と分権」という切り口から考えてみるのが本講義の趣旨である。7世紀に起こった「大化の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/08/18
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
2

スターリンクや宇宙旅行の課題とは?…民間企業の宇宙開発

スターリンクや宇宙旅行の課題とは?…民間企業の宇宙開発

未来を知るための宇宙開発の歴史(6)技術の確立、そして民間企業が参入へ

宇宙事業には民間企業が参入し始めている。有名なのはイーロン・マスク率いるスペースX社で、次々とロケット(衛星)を打ち上げている。だが、そこには懸念もあるという。はたして、どのようなことだろうか。さらに近い将来、宇...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/08/26
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
3

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(4)社会的時差ボケとメンタルヘルス

社会的時差ボケは、特に若年層にその影響が大きい。それはメンタルヘルスの悪化にもつながり、彼らの幸福度を低下させるため、ウェルビーイングの危機ともいうべき事態を招くことになる。ではどうすればいいのか。欧米で注目さ...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/08/23
西多昌規
早稲田大学スポーツ科学学術院教授 早稲田大学睡眠研究所所長
4

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機

混迷を極める現代社会にあって、「学び」の意義はどこにあるのだろうか。次世代にどのような望みをわれわれが与えることができるのか。社会全体の運営を、いかに正しい知識と方針で進めていけるのか。一人ひとりの人生において...
収録日:2025/06/19
追加日:2025/08/13
納富信留
東京大学大学院人文社会系研究科教授
5

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性

トランプ大統領は同盟国の役割を軽視し、むしろ「もっと使うべき手段だ」と考えているようである。そのようななかで、ヨーロッパ諸国も大きく軍事費を増やし、「負担のシフト」ともいうべき事態が起きている。そのなかでアジア...
収録日:2025/06/23
追加日:2025/08/21
佐橋亮
東京大学東洋文化研究所教授