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DATE/ 2023.02.18

「飲酒運転」に繋がる可能性のある食品とは

飲酒運転には厳しい処分が下される

 近年、交通事故の発生件数は減少を続けており、たとえば2021年の件数は2198件で、前年より324件減りました。そして、このうち死亡事故件数は152件で、前年より7件減っています。減少傾向にあるのは喜ばしいですが、まだまだゼロにはなっていないのが現状です。特に、飲酒運転による死亡事故の割合はいまだに高く、警察庁の統計によると飲酒なしの約9倍にもなることがわかっています。

 このように大変危険な飲酒運転は厳罰化が進んでおり、現在は大きく分けて2種類の基準によって行政処分が定められています。

・酒酔い運転
 →基礎点数・35点、免許取消・欠格期間3年

・酒気帯び運転
 →呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上0.25mg/l未満:基礎点数・13点、免許停止・期間90日
 →呼気中アルコール濃度0.25mg/l以上:基礎点数・25点、免許取消・欠格期間2年

 「基礎点数」は違反すると累積して免許停止につながるペナルティの点数、「欠格期間」は免許取消になった人が再度の免許取得を禁止される期間を意味します。「酒酔い運転」はアルコールによって正常な運転が不可能と考えられる状態のことで、即刻免許取消になるなどとても重い処分を下されることがわかります。さらに、飲酒運転は運転者だけでなく車両を提供した人や酒類を提供した人にも懲役や罰金の罰則が定められており、飲食店が運転する人にお酒を提供しないことも一般常識になりましたよね。

 現在では社会全体が飲酒運転防止の意識を高く持つようになり、ほとんどの運転者が飲酒運転をしないように気を引き締めてハンドルを握っているでしょう。ところが、飲酒していなくても意外なことでアルコールチェッカーが反応してしまうケースもあるのをご存知でしょうか。それはどんなときなのか、具体的に見ていきましょう。

運転前に避けたい飲食物とは

 アルコールチェッカーは呼気中のアルコール成分に反応して濃度を算出する仕組みになっています。そして、アルコールは食品や薬品にも使用されていたり、製造過程で使用されたものが製品に残っていたりもします。つまり、飲酒していなくても食品や薬品が原因で飲酒運転の条件を満たしてしまう可能性があるのです。

 通常、特に注意書きがない場合は食品や薬品に含まれるアルコールで正常な判断力を失うほど酔ってしまうことはありませんが、酔っていなくても実際に処分されたケースも存在します。昨年10月、出勤前に蒸しパンを食べたバス運転手が、基準値以上のアルコール濃度を検知されたために処分を受けました。乗客の安全を考えれば厳しい対応は必要ですが、世間からは「厳しすぎるのでは」という意見も出て、物議を醸した一件です。

 これを受けて、アルコールチェッカーを製造する東海電子がSNSで注意点を上げました。それによると、「アルコールチェッカーは飲酒そのものを検知する機械ではない。食品に含まれる微量のアルコール成分も正確に検知する」という内容の前置きのあとに、「飲酒以外での検知を避けるためには、測定の15分前から飲食を控えるように」と呼びかけています。

 また、共栄火災海上保険の調査によると、以下のような食品・日用品は要注意とされています。

・甘酒 :「酒粕」と「米麹」の2タイプがあり、特に酒粕のほうが検知されやすい。甘酒200gはビール78mlのアルコール量に相当する。
・粕汁:酒粕を使用しており、甘酒同様に注意が必要。粕汁200g(お椀約1杯分)はビール82mlのアルコール量に相当する。
・奈良漬:製品によってアルコール量に差があるが、多い場合3%ほど含まれるので、大量に食べると検知される可能性がある。
・栄養ドリンク:微量のアルコールを含む製品もあり、大量に摂取すると検知される可能性がある。
・アルコールを含む菓子類:ウィスキーボンボンやブランデーケーキのようにアルコールを含むことが商品名からわかるものは避けたほうがよい。
・マウスウォッシュ:刺激が強めの製品ほどアルコールが検知されやすい。

 お菓子類に関しては、先ほどのバス運転手が食べた蒸しパンのように、一見ではアルコールを含むことがわからないものもあります。しかし、食品や薬品のアルコールは一時的に口腔内に残るだけで、時間が経てば自然と消えるもの。やはり、測定の15分前から飲食を控えるのが有効な対策でしょう。飲酒の覚えがないのにアルコールが検出されたときは、10~20分ほど経過したあとにうがいをして再検査すれば大丈夫なことがほとんどです。慌てずに、再検査を頼んでください。

 予想もしなかったことで飲酒運転を疑われたら悲しいですよね。運転者が運転直前の飲食を避けるのはもちろん、運転者の周囲の人も注意して、飲酒以外でのアルコール検知をなくしていきましょう。

<参考サイト>
・WEB CARTOP お酒を飲んでいなくても「飲酒運転」になる可能性がある要注意食品とは
https://www.webcartop.jp/2017/11/163707/
・ねとらぼ バス運転手「蒸しパン」でアルコール検出され処分 「15分前から飲食しないで」検知器の会社呼びかけ
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2211/02/news116.html
・アルコール検知器協議会 アルコール検知器(機器)について よくあるご質問
https://j-bac.org/faq/
・共栄火災海上保険 自動車防災情報
https://www.lb-hoken.com/pdf/2018/0320.pdf
・警察庁 みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/info.html
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