テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.07.29

アフリカの国境はなぜ直線が多いのか

 アフリカの地図を見てみると、国境が直線になっているところが多いことに気づきます。ほかの大陸の国の国境と見比べるとどうしても特異に見えますが、これらはアフリカの国々が決めたことではありません。

 国境に直線が多い理由には、アフリカの悲しい歴史が深く関わっています。

そもそも国境はどう決まる?

 国境は大きく分けて「自然的国境」「人為的国境」の2種類と、国境がはっきりと定められていない「未確定国境線」があります。

【自然的国境】

 自然の地形をもとにした国境です。山を利用した「山岳国境」、海を利用した「海洋国境」、川や湖を利用した「河川湖沼国境」の3つがあり、日本を含む世界の多くの国が採用しています。地形に沿っているため、国境線はうねうねと不規則な形をしています。

 自然的国境は、視覚的にも“国ざかい”という意識が働きやすく極めて自然な分け方ではありますが、あまりに隔たりがあると国が閉鎖的になりやすい、隣国どうしの交流がしづらいなどの欠点があります。また日本のように「海洋国境」を持つ国では、海上に分かりやすい境界線がないため、海洋資源や領土をめぐって隣国との衝突リスクを常にはらんでいます。

【人為的国境】

 地形に関係なく、人が意図的に引いた国境です。緯線・経線で分けた「数理的国境」のほか、ベルリンの壁のように軍事的側面から外国人の立ち入りを拒む「障壁国境」、文化・宗教の違いからそれぞれの言語圏・文化圏に沿って定めた「文化国境」があります。

 現在ある人為的国境のほとんどが「数理的国境」で、アフリカの国々のほか、アメリカとカナダ、アメリカとメキシコの国境がこれにあたります。緯線・経線をもとにしているために形状は直線的なのが特徴で、近代に生まれた比較的新しい国に多い事例です。

【未確定国境線】

 国同士の事情からはっきりと国境が定められていない場合、あるいは暫定的に国境としている場合があります。地図上で「破線」などで記されているのがそれで、これを未確定国境線といいます。インド、パキスタン、中国が領有を主張しあうカシミール地方はその典型例です。

アフリカにはもともと「国境」はなかった

 アフリカ大陸にはもともと多様な民族が共生し、それぞれが先祖代々、独自の文化を守りながら生活をしていました。民族のトップたる族長や王はいましたが、彼らの使命は土地を守るというよりも民族の生活と秩序を守ること。中には定住せず、遊牧を行いながら生活を営む民族もいました。そもそも「国境」という概念がなかったのです。

 しかし19世紀頃、大航海時代を迎えたヨーロッパの列強諸国が、新天地を求めアフリカに手を伸ばしたことで様相は一変します。列強諸国はアフリカ大陸を「無主の地」と決めつけ、我先にと土地の奪い合いを始めたのです。

 そしてアメリカを含むヨーロッパの主要国14か国が集まったベルリン会議にて、それぞれの「取り分」が決められました。彼らはアフリカ先住民族たちの生活圏についてはまったく考慮せず、緯度・経度でざっくりと分けた「数理的国境」でアフリカ大陸を分割。植民地化してしまいました。

 こうして列強諸国によって一方的に決められた人為的国境によって、「国境なき」アフリカの姿は失われました。同じ民族であるのに違う国の国民として分けられたり、また敵対している民族同士が同じ国民となったりと、非常にいびつな状態にさせられてしまったのです。

 民族の分断は軋轢を生み、紛争が起きるきっかけをつくりました。各国が独立したあとも争いの火種はくすぶり続け、国境もそのまま残されました。そのため、アフリカの国境は直線だらけなのです。

 アフリカの国々で今も貧困と戦争によって苦しむ人々が多いのは、侵略者による身勝手な人為的国境が遠因となっていることは紛れもない事実。直線状の国境は、アフリカの国々が受けた目に見えない深い傷跡でもあるのです。

平和的に解決した人為的国境の例

 人間の愚かしい意図が垣間見える人為的国境ですが、完全に悪とは言いきれない部分もあります。

 自然的国境は一見、境目として理にかなってはいるのですが、国境付近に豊富な資源があると、両国が占有権を主張しあってどうしても争いに発展しやすくなるのが難点で、決して万能ではありません。そうした意味では、双方の合意に基づくのであれば、かえって人為的国境のほうが自然的国境よりも適している場合があります。

 アフリカと同じく人為的国境を有するアメリカとカナダの場合、北緯49度線に沿って国境を定めています。もともとアメリカ大陸は平地だらけで境目に適した山々や川が少ないというのもありますが、アメリカとカナダ(と、北アメリカの一部を領有していたイギリス)の間でのべ50年以上にわたり議論され、解決に至ったのです。時に武力衝突の危険もありましたが、比較的平和裏に人為的国境が決められた良い事例といえるでしょう。

<参考サイト>
・【世界の諸地域】 アフリカの国境線がまっすぐな理由(ベネッセ)
https://benesse.jp/teikitest/chu/social/social/c00687.html
・アフリカ諸国の国境に直線が多いのはどうして?(名城大学)
https://www.meijo-u.ac.jp/admissions/pamphlet/pdf/2021/human_human_2021.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,200本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授