テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.08.18

「世界で最も親しみやすい都市」TOP10

 アメリカに本社を置くオンライン学習プラットフォーム『Preply』は世界53都市を対象にした調査から「世界で最も親しみやすい都市」のランキングを発表しました。

 いったいどんな都市が選ばれたのでしょうか。また、「親しみやすい」とはどういった基準なのでしょうか。解説します。

ランキングは「コミュニティ精神」を数値化して作成

 『Preply』は本ランキングを「コミュニティ精神(Community Spirit)」を数値化し、6つの指標をもとに作成したとしています。

 ここでの「コミュニティ精神」とは、その土地のフレンドリーさ、相互コミュニケーションのしやすさ、居心地のよさなどのことです。知らない場所や初めての土地へ行った時、地元の人に冷たい対応をされて傷ついた、逆にとても親切にしてくれていい思い出になった……という経験は誰しもあるでしょう。

 部外者に対して友好的かどうか、居心地がいいかどうかは、その土地の印象を大きく左右するものです。

 『Preply』は「最もフレンドリーで親しみやすい都市を特定することで、移住先や新しい旅先を検討している人に重要な情報を提供できる」と前置きしています。

 つまり、本ランキング上位となる「コミュニティ精神指数」の高い都市は、外国人・非ネイティブが歓迎されやすい都市であるということ。受けいれ態勢が整い、「誰でもウェルカム!」という精神が根付いた街であるということになります。

ランキングに使われた6つの指標

 ランキングのもととなる6つの指標をご紹介します。

・リピート率……その土地を旅行後、再度訪れた訪問者の割合。
・サービス業のスタッフの親しみやすさ ……「フレンドリー」に言及する宿泊施設のレビューの割合。
・治安 ……都市の安全指数スコア。(100点満点)
・LGBTQ+の平等性……多様性の受けいれやすさ。(100点満点)
・総合的な幸福度 ……地元住民が感じる都市全体の幸福(ウェルビーイング)の感じやすさ。(10点満点)
・英語でのコミュニケーション力(10点満点)

 それでは、公開されているランキングのうち、TOP10を見てみましょう。

世界で最も親しみやすい都市TOP10

同率1位:トロント(カナダ)
同率1位:シドニー(オーストラリア)
3位:エディンバラ(スコットランド)
4位:マンチェスター(イギリス)
5位:ニューヨーク(アメリカ)
6位:モントリオール(カナダ)
7位:メルボルン(オーストラリア)
8位:サンフランシスコ(アメリカ)
9位:ダブリン(アイルランド)
10位:コペンハーゲン(デンマーク)
(『Preply』2023年4月掲載記事より)

 同率1位となったのがカナダ第一の都市・トロントと、オーストラリア最大の都市・シドニーです。いずれも総合得点が10点満点中7.97点となっています。

 『Preply』によるとカナダ・トロントの場合、「リピート率」が15%、「LGBTQ+の平等性」が100点満点中90点という高得点を獲得しており、何度も訪れたくなるだけでなく、あらゆる人種を歓迎してくれる包括的な環境がある都市だとしています。

 「LGBTQ+の平等性」で90点以上を獲得したのは上位10都市のうち、トロントのほかは同じくカナダのモントリオール(6位)のみです。

 オーストラリアのシドニーについては「治安」が高い評価を受けており、スコアは100点満点中65.87点。また「LGBTQ+の平等性」についても100点満点中84点と高得点を獲得しています。

 さらに「総合的な幸福度」は10点満点中7.13点、「リピート率」は16%と、トロントのそれよりも上回っています。

 『Preply』は以上2都市について「(それぞれの都市への印象や好みにかかわらず)どちらの都市でも温かく居心地の良い環境を見つけることができる」と結論づけています。

 ランキング3位はスコットランドの首都エディンバラで、総合得点は10点満点中7.78点です。中でも高評価を得たのが「治安」面で、100点満点中68.92点。トップ10位のうち、デンマークのコペンハーゲン(10位、治安73.55点)に次ぐ高得点となっています。

 ランキング4位につけたのがイングランドのマンチェスターです。総合得点は10点満点中7.72点と、3位のエディンバラとは僅差。特筆すべきは「サービス業のスタッフの親しみやすさ」で、宿泊施設のフレンドリーさに言及するレビューが14.76%と、今回調査対象となった都市の中で最高値だったと『Preply』が述べています。

 「治安」は45.09点と若干低いものの、「LGBTQ+の平等性」は100点満点中82点、「リピート率」は12%と、多様な人種に歓迎的な雰囲気です。

 1~10位の都市では、デンマーク・コペンハーゲン(10位)以外はすべて「英語でのコミュニケーション力」が10点満点。いずれの都市も地元住民の「総合的な幸福度」が10点満点中7点近くかそれ以上のスコアとなっていて、5~10位でもその傾向は変わっていません。

 5位~10位以内で「リピート率」が15%を上回っているのはアメリカのニューヨーク(5位)とサンフランシスコ(8位)、カナダのモントリオール(6位)。そして「サービス業のスタッフの親しみやすさ」で10%以上となっているのは、アイルランドのダブリン(9位)のみでした。

 10位のコペンハーゲンは「治安」が73.55点と、10位以内で断トツの首位となっています。

日本の都市は20位以内に入らず

 『Preply』が公表している今回のランキングでは20位まで、またワースト10のランキングもありますが、そのいずれにも日本の都市は入りませんでした。

 どのスコアがどの程度影響しているかは推測の域を出ないですが、おそらく「治安」やインバウンド強化の姿勢から「サービス業のスタッフの親しみやすさ」は高めと考えられるいっぽう、「英語でのコミュニケーション力」そして「LGBTQ+の平等性」において大きくランキングを落とした可能性があります。

 日本が観光立国としてトップレベルとなり、また外国人労働者の受けいれをしやすくするためにも「親しみやすい都市」の指標は参考にすべきかもしれません。

<参考サイト>
・The Community Spirit Index: The world’s friendliest cities for non-natives(Preply)
https://preply.com/en/blog/worlds-friendliest-cities/?utm_source=join1440&utm_medium=email&utm_placement=newsletter
・世界で最も親しみやすい都市 トップ20(Business Insider Japan)
https://www.businessinsider.jp/post-271456
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ

トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ

トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン

アメリカのトランプ大統領は、2025年5月に訪れたサウジアラビアでの演説で「トランプ・ドクトリン」を表明した。それは外交政策の指針を民主主義の牽引からビジネスファーストへと転換することを意味していた。中東歴訪において...
収録日:2025/08/04
追加日:2025/09/13
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
2

国民に求められる外交感覚とは?陸奥宗光の臥薪嘗胆の意味

国民に求められる外交感覚とは?陸奥宗光の臥薪嘗胆の意味

外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(3)「内政と外交」と持つべき外交感覚

「内政と外交」――これはまさに切っても切れない大事な関係にある。外交とは、国際関係ばかりに気を遣っていればいいのではなく、海外の声をききながら国内の声にも耳を傾けることが重要だと小原氏は述べる。まさに内政が大事で...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/19
小原雅博
東京大学名誉教授
3

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に

世界では「創造性がどれくらい大事か」という問題意識が今、急激に高まっている。創造性とは全ての人にあり、偏差値などでは絶対に計れない、まさに無限軸の創造性のこと。そうした創造性を育む学びが「STEAM教育」である。最終...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/18
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
4

なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか

なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景

国際的に見て、政府の債務残高が大きい日本。その背景には、バブル崩壊後の財政赤字を取り戻せていないことがあった。その一方で、預金残高も高い日本。所得が低いのに預金が多い日本の謎を解説する。(全4話中第2話)
※...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
5

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ

海底はどうやってできるのか。なぜ火山ができるのか。プレートが動くのは地球だけなのか。またそれはどうしてか。ではプレートは海底の動きの全てを説明できるのか。地球史規模の海底の動きについて、海底調査の実態から最新の...
収録日:2020/10/22
追加日:2021/05/02
沖野郷子
東京大学大気海洋研究所教授 理学博士