社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.08.22

トラックのタイヤが浮いている理由

 大きなトラックにはタイヤがたくさん付いている場合があります。これは重い荷物を運ぶ際に、タイヤへの負荷を分散させることが主な目的です。ただ高速道路などでは、トラックがタイヤを複数本浮かせた状態で走っている様子を目撃することもあります。これはいったいどうなっているのでしょうか。またなぜこのようなスタイルで走っているのでしょうか。

「リフトアクスル」でタイヤを浮かせている

 トラックは大量の荷物を運ぶための車です。特に大型のトレーラーの場合、最大20トン前後の荷物を積むこともあります。こうなるとタフなタイヤが複数求められることになります。このために、トレーラーの後部にはタイヤがたくさん付いています。またそれぞれのタイヤもホイールに2本並列させたデュアルタイヤ(ダブルタイヤ、ツインタイヤ)が使用されていたり、シングルタイヤであってもかなり大きなものが装着されていたりします。

 ただし、荷物を下ろした後のトレーラーは一気に軽くなります。こうなると荷重に耐えなくてよいので、複数のタイヤを使う必要性はなくなります。この時には、必要のないタイヤをリフトアップして地面につかないようにして走ります。この機能は「リフトアクスル」と呼ばれます。「リフト」は「上げる」、「アクスル」は「車軸」の意味です。つまり、時折高速道路などで見かけるタイヤを浮かせた車は「リフトアクスル」した状態(車軸をあげた状態)の車です。

タイヤを浮かせると高速道路料金が変わる

 タイヤを浮かせて走ればそれだけタイヤは摩耗しないので、タイヤ自体を長持ちさせることができます。同様にこれらのタイヤに関わるブレーキの摩耗や足回り周辺部品の劣化も防ぐことができます。また摩擦によるエネルギーロスも防ぐことになり、燃費の向上にも役立つでしょう。加えて、カーブなどでの操作性もよくなります。さらに、もっとも大きなポイントは「リフトアクスル」しているかどうかで、高速道路の料金が変わるという点です。

 高速道路の料金区分は、トラックでは「特大車」「大型車」「中型車」が該当します。トレーラーを牽引(連結)していない状態のトラックは「中型車」となります。残り「特大車」と「大型車」の区別は車軸数によります。車軸数が4本以上の場合は「特大車」、車軸が3本以下の場合「大型車」です。つまり、「特大車」は車軸を上げることで「大型車」となります。このことで、およそ40%程度も高速道路料金を節約することができます。頻繁に高速道路を使う場合、かなり大きな恩恵を得られるといえるでしょう。

荷物を積んだら「リフトアクスル」は使えない

 ただし、荷物を積んだ状態であればタイヤは全て接地していなければ危険です。リフトアクスルしたままだと、接地しているタイヤへの負荷がかかりシャーシなどにも問題が生じます。もちろんこの状態で走行すればトラックの寿命が縮みます。またタイヤやシャーシに問題が起こった場合、走行中にタイヤが外れて他の車や歩行者などにぶつかったり、車が横転したりするなどかなり大きな事故を引き起こします。

 このことから、規定を超えた積載量の状態で「リフトアクスル」機能を利用していた場合、道路整備特別措置法によって「30万円以下の罰金」ならびに「免れた通行料金の3倍」が請求されることになります。また最近ではこの「リフトアクスル」はドライバーが操作するのではなく、重量センサーが状況を検知して自動で制御されるようになっているようです。

<参考サイト>
・トラックのリフトアクスルはメリットたくさん!役割や注意点も解説│株式会社シマ商会
https://shima-corp.com/labo/truck/truck-lift-axle
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味

「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味

逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者

西洋には逆境は神が与える運命という考え方があり、その運命をいかに克服するかを考えたのがストア派だった。しかし、神道が説くように「ヒトもカミ」であれば、それに気づく瞬間は逆境の中にこそ存在するはずである。「他者で...
収録日:2025/07/24
追加日:2025/12/20
2

古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著

古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著

渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会

渡部昇一氏には、若き頃に留学したドイツでの体験を記した『ドイツ留学記(上・下)』(講談社現代新書)という名著がある。1955年(昭和30年)から3年間、ドイツに留学した渡部昇一氏が、その留学で身近に接したヨーロッパ文明...
収録日:2021/08/06
追加日:2021/10/23
渡部玄一
チェロ奏者
3

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割

豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
黒田基樹
駿河台大学法学部教授 日本史学博士
4

「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない

「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない

「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会

アメリカが日本の運命を左右する国であることは、安全保障を考えても、経済を考えても、否定する人は少ないだろう。だが、そのような国であるにもかかわらず、日本人は、本当に「アメリカ」のことを理解できているだろうか。日...
収録日:2022/11/04
追加日:2023/01/06
橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授
5

大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは

大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは

大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み

大谷翔平選手は今や野球界だけでなく世界中のスポーツ界の象徴的存在だが、本人は「自分も最初からこの体と技術があったわけではない」と努力と練習の成果を強調している。いったいどんな出会いやプロセスが彼を育ててきたのか...
収録日:2024/11/28
追加日:2025/03/03
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト