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DATE/ 2023.10.19

日本で唯一徒歩でしか行けない「階段国道」とは

歩行者しか通行できない国道がある?

 国道というと、「車の往来が激しい広い道路」というイメージが強いですよね。ところが、車どころかバイクも自転車も通れない、つまり歩行者しか通れない国道があることをご存知でしょうか。

 その国道は青森県の津軽半島最北端、龍飛崎を通る国道339号線の一部で、通称を「階段国道」といいます。その名の通り、全体が階段になっているので、歩行者しか通れないというわけです。青森県の公式サイトでは「日本で唯一の階段国道」と紹介されており、階段の手前にはきちんと国道339号線を示す青い三角形の道路標識が設置されています。さらに、「階段国道」という案内看板と道路の案内図が掲示されており、観光名所としても整備されています。

 階段国道は龍飛崎灯台から龍飛漁港までを結ぶ約388メートルの道路で、階段は全部で362段、高低差は約70メートルある坂道です。大阪府にある万博記念公園のシンボル・太陽の塔の高さが70メートルなので、けっこうな上下移動をすることがわかりますよね。

 このような階段の段数や高低差だけを見ると、「移動が大変そうだし、わざわざ階段を見るために行きたくはないかな」と感じてしまうかもしれません。しかし、階段国道から望む津軽海峡の海と漁村の景観はノスタルジックで、旅行気分を満喫させてくれます。また、途中にベンチが設置されているので、休憩しながらの移動が可能です。歩行者しか通行できない階段国道は、絶好の観光スポットなのです。

なぜ階段国道ができたのか?

 しかし、階段国道はもともと歩行者しか通れない道路にしようとしていたわけではなく、車が通れるようにする計画もあったのだそうです。どのような経緯で、現在の階段国道になったのか見ていきましょう。

 階段国道が国道に指定されたのは1974(昭和49)年のこと。もちろん、国道になる以前から道路自体は存在しており、県道として利用されていました。当時は坂道の中間あたりに龍飛中学校、坂道の上に龍飛小学校があり、国道指定前から中学校までの階段は整備されていたのだとか。そして昭和60年代ごろに小学校までの階段も整備され、現在の階段の原型ができあがります。

 こうして見てみると、国道指定された時点では階段も整備されていなかったことがわかりますよね。なぜ、このような道が国道の仲間入りをしたのでしょうか。

 その理由は、冒頭でお話しした「国道339号線の“一部”」であることと関係していると考えられています。国道339号線は青森県弘前市から五所川原市などを通って外ヶ浜町までを結ぶ道路。龍飛崎周辺では階段国道を挟んで坂の上の区間と坂の下の海沿いの区間があります。つまり、国道339号線が高低差によって途切れないように、階段国道の区間も国道に指定したというわけです。

 車を通行可能にする道路整備を前提として国道指定されたともいわれますが、この区間は民家が密集しており、坂道の勾配がきついということもあって、整備計画は進められないまま月日が流れていきました。こうしている間に「歩行者しか通行できない国道」の存在が注目を集めるようになったため、地元の住民たちから「このまま観光地化しよう」という動きが活発になり、現在の階段国道になったのです。

 階段国道の区間は今後も車が通れるような整備を行う予定はないとのこと。そうなると国道339号線を車で通りたい人は困ってしまいそうですが、実は階段国道の東側に車も通れる町道があるので、車での通行に問題はありません。階段国道の階段は1993~1996(平成5~8)年にかけても再整備されており、今後も観光名所として多くの観光客に親しまれていくでしょう。

<参考サイト>
・乗りものニュース 日本唯一の「階段国道」なぜ生まれた? 一度は「クルマ通せるように…」検討も”結局そのまま”の経緯
https://trafficnews.jp/post/127915
・青森県庁 階段国道
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kendo/doro/kaidankokudou.html
・青森県観光情報サイト 階段国道339号
https://aomori-tourism.com/spot/detail_413.html
・太陽の塔オフィシャルサイト 太陽の塔とは
https://taiyounotou-expo70.jp/about/#appearance
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