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絶対に入ってはいけない?日本の「禁足地」6選
その土地の伝承や歴史的背景から限られた人しか入れない、あるいは誰しも入ってはいけないとされている場所を「禁足地」といいます。歴史の長い日本では今でもそのような禁足地が各地に残っており、意外なことに東京の都心にも見られるのです。
禁足地とは、いったいどのようなところなのでしょうか。各地に残る代表的な禁足地を6つご紹介します。
島の神聖性を保つため、神職や研究者以外の人間の立ち入りは固く禁じられています。たとえ入島するにしても、裸になって身を清めるなど入念な準備が必要です。さらに島で見聞きしたことは他言してはならない、四つ足の動物は食べてはならないなど、厳格な掟があります。
かつて筑前の大名・黒田長政が家臣に命じて沖ノ島の宝物を持ち帰らせたところ、宝物を収めたやぐらに雷が落ちるなど祟りを思わせる出来事が起こったためただちに島に返却された、という怪奇エピソードも。
以前は年に1回、一般人でも限定200名の男性が入島を許される機会がありましたが、2017年に世界遺産となって以降は一般人の立ち入りは全面禁止になり、正真正銘の禁足地となりました。
江戸時代に刊行された旅行記や地誌の多くにこの「八幡の藪知らず」の記述があり、「入ったら祟りが起こる」「一度踏み入れたら二度と出てこられない」などと、禁足地としてその名が広く知れ渡っていたことがうかがえる内容となっています。
禁足地となった理由については「最初に八幡宮が勧請された地だった」「ヤマトタケルの陣所だった」「平将門の家臣6名がこの地で泥人形と化した」「水戸黄門が踏み入ると神の怒りにふれ、祟られた」……などなど、真っ当そうな話から突拍子のないものまで、さまざまな伝承が残っています。
ただ現在の「八幡の藪知らず」は林と小さな祠、石碑がある程度で、そこまで恐ろしげな雰囲気ではありません。当地に掲載されている市川市教育委員会の説明板には、禁足となった本当の理由が忘れ去られたためにいろいろと取り沙汰されてきたのでは、と述べられています。
その高野山の中でも最大の聖域が奥之院です。一の橋から2km続く参道には20万基の墓石や慰霊塔が建ち並び、その先には弘法大師の御廟(ごびょう)、祈親燈(きしんとう)、頌徳殿(しょうとくでん)があります。このうち禁足地となっているのが御廟です。
御廟とは墓、つまり空海が眠る場所ということになるのですが、信仰上では空海は今もこの地で生き続け、深く瞑想しながら衆生に救いの手を差し伸べているとされています。
我々は御廟の前までは参拝で立ち入ることはできるものの、御廟の中は踏み入ることはおろか、見ることも叶いません。ただし「維那(いな)」と呼ばれるたった1人の高僧だけが、空海に食事を運ぶ「生身供(しょうじんく)」という儀式中でのみ、立ち入ることが許されています。維那は御廟の中で見聞きしたことは、一切他言無用なのだそうです。
御嶽とは南西諸島各地に点在する、琉球の神々にまつわる聖地・神域の総称です。その中でも琉球の祖先神・アマミキヨの琉球開闢(かいびゃく)にまつわる7つの御嶽が、信仰上最も重要な地とされています。
クボー御嶽はそのうちのひとつで、アマミキヨが最初につくり降臨した場所であることから、古くから琉球国府の手厚い庇護のもとに守られてきました。中心にある円形広場では「イザイホー」という重要な祭祀が12年に1度だけ行われていたといい、今も荘厳な雰囲気に包まれています。
琉球の神職は女性だったことから、島は男子禁制。地元の人でもみだらに近づくことはありませんでしたが、昨今は観光客の無断の立ち入りが目立ったため、現在は男女ともに全面立ち入り禁止とされました。
御鉢平は植生が豊かで、秋には美しい紅葉が見られることから絶景のトレッキングコースとして人気があります。しかし、湯だまりのあるカルデラ内は立ち入り禁止。湯だまりから硫化水素ガスが噴出しているため、死に至る危険があるためです。これまでも死亡事故が何度か起きており、1958年に学生2名が、1960年代には無断で入浴した登山客が中毒死しています。人だけでなく、野生動物も中毒死した形跡が残っているそうです。
Googleマップで見ると「御鉢平の湯」などと温泉郷のような名がついていますが、決して近づかないようにしましょう。
天道とは、太陽の子として生まれた天道法師のこと。海の彼方から虚船(うつぼぶね)でやってきたある女性が、用を足しているときに太陽より奇跡の光を受け、懐妊。天道と名づけられた子は強力な呪力を持ち、9歳で上洛して僧となると、神託を受けたり空を飛んだりと、さまざまな奇跡を起こしました。やがて病をえた文武天皇(元正天皇とも)に召し出されてその病をたちどころに治してみせると、帝は「宝野上人」の称号とたくさんの恩賞を授けたといいます。
この天道法師が入定した龍良山には、法師が眠る北側の「八丁郭」と、法師の母の墓地「裏八丁郭」があり、見るのも入るのも禁忌とされたことから、いつしか「オソロシドコロ」と呼ばれるようになりました。もしも入ってしまった場合は「インノコ(犬の子)」と繰り返し唱えながら後ずさりし、その場から速やかに立ち去らなければ命の保証はないとまでいわれていたのです。
現在禁足は解かれて一般人も立ち入られるようになったため、正確には禁足地ではなくなりましたが、現在でも地元民にとって重要な聖地であることには変わりなく、入山の際は「大声を出さない」「転ばない」「後ずさりして離れる」など、厳格なルールが残っています。
日本各地に残る禁足地。もしも訪れる場合はマナーをしっかり守り、静かに見守るようにしましょう。
禁足地とは、いったいどのようなところなのでしょうか。各地に残る代表的な禁足地を6つご紹介します。
沖ノ島
沖ノ島は九州北部、福岡県と福津市にある、別名「神宿る島」です。航海の守り神として崇拝されている宗像(むなかた)三女神という3柱の女神のうちの1柱、田心姫神(たごりひめのかみ)がまつられています。島の神聖性を保つため、神職や研究者以外の人間の立ち入りは固く禁じられています。たとえ入島するにしても、裸になって身を清めるなど入念な準備が必要です。さらに島で見聞きしたことは他言してはならない、四つ足の動物は食べてはならないなど、厳格な掟があります。
かつて筑前の大名・黒田長政が家臣に命じて沖ノ島の宝物を持ち帰らせたところ、宝物を収めたやぐらに雷が落ちるなど祟りを思わせる出来事が起こったためただちに島に返却された、という怪奇エピソードも。
以前は年に1回、一般人でも限定200名の男性が入島を許される機会がありましたが、2017年に世界遺産となって以降は一般人の立ち入りは全面禁止になり、正真正銘の禁足地となりました。
八幡の藪知らず
千葉県の市川市には「不死八幡森(しらずやわたのもり)」、通称「八幡の藪知らず」という18m四方ほどの小さな雑木林があります。江戸時代に刊行された旅行記や地誌の多くにこの「八幡の藪知らず」の記述があり、「入ったら祟りが起こる」「一度踏み入れたら二度と出てこられない」などと、禁足地としてその名が広く知れ渡っていたことがうかがえる内容となっています。
禁足地となった理由については「最初に八幡宮が勧請された地だった」「ヤマトタケルの陣所だった」「平将門の家臣6名がこの地で泥人形と化した」「水戸黄門が踏み入ると神の怒りにふれ、祟られた」……などなど、真っ当そうな話から突拍子のないものまで、さまざまな伝承が残っています。
ただ現在の「八幡の藪知らず」は林と小さな祠、石碑がある程度で、そこまで恐ろしげな雰囲気ではありません。当地に掲載されている市川市教育委員会の説明板には、禁足となった本当の理由が忘れ去られたためにいろいろと取り沙汰されてきたのでは、と述べられています。
奥之院
和歌山県の高野山金剛峯寺は、いわずと知れた仏教の一大聖地。空海(弘法大師)によって開創され、真言宗の総本山として篤く信仰されています。その高野山の中でも最大の聖域が奥之院です。一の橋から2km続く参道には20万基の墓石や慰霊塔が建ち並び、その先には弘法大師の御廟(ごびょう)、祈親燈(きしんとう)、頌徳殿(しょうとくでん)があります。このうち禁足地となっているのが御廟です。
御廟とは墓、つまり空海が眠る場所ということになるのですが、信仰上では空海は今もこの地で生き続け、深く瞑想しながら衆生に救いの手を差し伸べているとされています。
我々は御廟の前までは参拝で立ち入ることはできるものの、御廟の中は踏み入ることはおろか、見ることも叶いません。ただし「維那(いな)」と呼ばれるたった1人の高僧だけが、空海に食事を運ぶ「生身供(しょうじんく)」という儀式中でのみ、立ち入ることが許されています。維那は御廟の中で見聞きしたことは、一切他言無用なのだそうです。
クボー(フボー)御嶽
沖縄県の知念半島の沖にある久高島は、地元の人から神の島と呼ばれています。中でももっとも神聖視されているのが「クボー御嶽(うたき)」という場所です。御嶽とは南西諸島各地に点在する、琉球の神々にまつわる聖地・神域の総称です。その中でも琉球の祖先神・アマミキヨの琉球開闢(かいびゃく)にまつわる7つの御嶽が、信仰上最も重要な地とされています。
クボー御嶽はそのうちのひとつで、アマミキヨが最初につくり降臨した場所であることから、古くから琉球国府の手厚い庇護のもとに守られてきました。中心にある円形広場では「イザイホー」という重要な祭祀が12年に1度だけ行われていたといい、今も荘厳な雰囲気に包まれています。
琉球の神職は女性だったことから、島は男子禁制。地元の人でもみだらに近づくことはありませんでしたが、昨今は観光客の無断の立ち入りが目立ったため、現在は男女ともに全面立ち入り禁止とされました。
有毒温泉
聞くだに恐ろしい響きのこの温泉は、北海道川上郡川上町にある大雪山国立公園の御鉢平(おはちだいら)にあります。御鉢平には直径2kmのカルデラがあり、その底辺に湯だまりが数カ所見られるのです。御鉢平は植生が豊かで、秋には美しい紅葉が見られることから絶景のトレッキングコースとして人気があります。しかし、湯だまりのあるカルデラ内は立ち入り禁止。湯だまりから硫化水素ガスが噴出しているため、死に至る危険があるためです。これまでも死亡事故が何度か起きており、1958年に学生2名が、1960年代には無断で入浴した登山客が中毒死しています。人だけでなく、野生動物も中毒死した形跡が残っているそうです。
Googleマップで見ると「御鉢平の湯」などと温泉郷のような名がついていますが、決して近づかないようにしましょう。
オソロシドコロ
長崎県対馬市の龍良山(たてらさん)には、「オソロシドコロ」という名の響きからして曰くありげな場所があります。龍良山は対馬に根付く「天道信仰」の中心地であり、オソロシドコロはその天道信仰の伝承にまつわる聖地を総称した呼び名です。天道とは、太陽の子として生まれた天道法師のこと。海の彼方から虚船(うつぼぶね)でやってきたある女性が、用を足しているときに太陽より奇跡の光を受け、懐妊。天道と名づけられた子は強力な呪力を持ち、9歳で上洛して僧となると、神託を受けたり空を飛んだりと、さまざまな奇跡を起こしました。やがて病をえた文武天皇(元正天皇とも)に召し出されてその病をたちどころに治してみせると、帝は「宝野上人」の称号とたくさんの恩賞を授けたといいます。
この天道法師が入定した龍良山には、法師が眠る北側の「八丁郭」と、法師の母の墓地「裏八丁郭」があり、見るのも入るのも禁忌とされたことから、いつしか「オソロシドコロ」と呼ばれるようになりました。もしも入ってしまった場合は「インノコ(犬の子)」と繰り返し唱えながら後ずさりし、その場から速やかに立ち去らなければ命の保証はないとまでいわれていたのです。
現在禁足は解かれて一般人も立ち入られるようになったため、正確には禁足地ではなくなりましたが、現在でも地元民にとって重要な聖地であることには変わりなく、入山の際は「大声を出さない」「転ばない」「後ずさりして離れる」など、厳格なルールが残っています。
日本各地に残る禁足地。もしも訪れる場合はマナーをしっかり守り、静かに見守るようにしましょう。
<参考サイト>
・世界遺産「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群保存活用協議会)
https://www.okinoshima-heritage.jp
・高野山真言宗総本山金剛峯寺
https://www.koyasan.or.jp
・久高[ くだか]島クボ―御嶽(うたき)(南城市)
https://www.city.nanjo.okinawa.jp/movie_library/movie_ja/1579046288/1579232786/
・【日本の美しい禁足地vol.1】薄暗く荘厳な雰囲気~長崎・対馬の「オソロシドコロ」~(TABIZINE)
https://tabizine.jp/2022/04/09/458204/
・世界遺産「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群保存活用協議会)
https://www.okinoshima-heritage.jp
・高野山真言宗総本山金剛峯寺
https://www.koyasan.or.jp
・久高[ くだか]島クボ―御嶽(うたき)(南城市)
https://www.city.nanjo.okinawa.jp/movie_library/movie_ja/1579046288/1579232786/
・【日本の美しい禁足地vol.1】薄暗く荘厳な雰囲気~長崎・対馬の「オソロシドコロ」~(TABIZINE)
https://tabizine.jp/2022/04/09/458204/
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