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DATE/ 2023.11.01

車でもエコノミークラス症候群は起きるのか?

 エコノミークラス症候群の正確な名前は「深部静脈血栓症もしくは肺塞栓症」、つまり身体の奥の方にある静脈に血が固まって血管を詰まらせてしまうものです。これによって胸の痛みや息切れ、呼吸困難といった状況に陥ることがあります。たいへん怖い病です。長い時間飛行機に乗るときには気を付けなければなりませんが、実際は飛行機に限った話ではないようです。私たちは何に気を付ければいいのでしょうか。

予防はふくらはぎの筋肉を動かすこと

 エコノミークラス症候群は、飛行機の長旅など同じ姿勢を長時間とり続けなければならないときに起こりやすいとされています。なぜかと言えば、人間の身体の血液循環には足の筋肉の動きがおおきく関係しているからです。ふくらはぎの筋肉は動くたびに収縮して血管を圧迫し、血流をサポートしています。もちろん心臓のポンプは全身の血流を作り出していますが、人間の足は特に心臓から遠くなるので、ふくらはぎがサポートする力が必須です。つまり、ふくらはぎが動かない状態が続けば人の血行は悪化してしまうのです。

 この原理を知れば、問題は飛行機にとどまらないことがわかります。もちろん車での長旅も同じです。ではどういう対策を取ればよいかといえば、まずはとにかくふくらはぎの筋肉を動かすことです。このためには、まずは一定時間が経過したら可能な限り少し歩くことが考えられます。また、つま先を地に着けたまま踵を上げ下ろしする運動を30回程度行ったりするだけでも効果があるようです。

運転中も水分を摂取し、定期的に休憩して足を動かすこと

 長距離、長時間のドライブが予想されるときには、SAやPAを積極的に活用して、定期的に体を動かしましょう。積極的に少し歩いたり、ストレッチしたりするといいでしょう。服装については、ベルトをきつく締めすぎず、ゆったりとした服装にしておくとよさそうです。またもし車で仮眠するときなどは、足を上げておくと効果があるようです。あとは積極的に水分補給しましょう。ただしカフェインを多く含むのみものなど、利尿作用の強い飲み物は身体の水分を出し過ぎるリスクがあります。眠気覚ましにコーヒーを飲む場合はあるかもしれませんが、カフェインには要注意です。

 また汗をかくような場合は特に、定期的にしっかり水分補給することも忘れずに。水分不足の状態は血液の粘度が上昇し、スムーズな血液循環がうまくいかなくなるリスクがあります。なかなか休憩が取れないときには、車の中でも意識して足を動かすようにしましょう。先に挙げた座った状態でつま先を着けて踵を持ち上げて降ろす運動をするのも一手です、またつま先を上げて降ろす運動を繰り返すのも効果があります。あとは足の指を開いたり、曲げてグーにしてみたりを繰り返す、膝を両手で抱えて足の力で足首を回す、ふくらはぎを軽くもむといったことだけでも効果があるようです。

高齢者、怪我をしている人、妊娠中・産後の人などは要注意

 また厚生労働省によると、以下に該当する人は特にエコノミークラス症候群になるリスクが高いとされています。該当する人は特に意識しましょう。

「高齢者」「下肢静脈瘤がある人」「下肢の手術経験がある人」「骨折等のけがをした人」「がん(悪性腫瘍)のある人」「過去に深部静脈血栓症を起こしたことがある人」「心筋梗塞、脳梗塞等を起こしたことがある人」「肥満の人」「経口避妊薬(ピル)を使用している人」「妊娠中または出産直後の人」「生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症等)がある人」

 エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症・肺塞栓症)は、同じ姿勢を取り続けることで起きてしまいます。つまり飛行機のエコノミークラスに限らず、車や電車などでの移動も同様です。また最近では災害時に設置される避難所でも発生しているようです。もちろんオフィスでもずっと座りっぱなしの環境であれば起きます。同じ姿勢が続いたら意識して「ふくらはぎを動かす」ということ、日ごろから習慣づけておきましょう。

<参考>
[Q] エコノミークラス症候群とは何ですか?│JAF
https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-trouble/subcategory-sick/faq282
エコノミークラス症候群の予防のために|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07384.html
深部静脈血栓症/肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/0000121801.pdf
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