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DATE/ 2023.11.29

ダメと言われるとやりたくなるのはなぜ

 『浦島太郎』の玉手箱しかり、『ツルの恩返し』でのツルの機織りしかり。人は「やってはいけない」「見てはいけない」などといわれると、余計にやってみたくなってしまうものです。これは心理的メカニズムのひとつで、一般的に「カリギュラ効果」と呼ばれています。

 今回は、このカリギュラ効果について解説します。

「カリギュラ効果」その意味と由来

 人は潜在的に「自由でありたい」という自尊心を持っているため、外側から禁止や制限を加えられたりすると「自由を侵された」と感じてストレスやフラストレーションがたまってしまい、奪われた自由を取り戻そう、ストレスから解放されようと行動を起こすということがあります。この心理現象を「心理的リアクタンス」、通称「カリギュラ効果」といわれます。

 カリギュラとは、苛烈かつ残忍な暴君で知られるローマ皇帝カリギュラ(カリグラ)のことです。アメリカでこの皇帝の人生を描いた映画『カリギュラ』が公開されると、その内容があまりに残虐だったため、規制の厳しいボストンで放映が禁止されてしまいました。しかしそれがかえって興味をそそられたのか、市外の映画館にまで出向いて鑑賞するボストン市民が急増。評判が評判を呼び、結果的に映画は大ヒットとなったのです。

 この話から心理的リアクタンスは「カリギュラ効果」として広く知られるようになりました。(※厳密には心理的リアクタンスは反発心から行動を起こすこと、カリギュラ効果は好奇心を刺激されるようなイメージで、分けて考える場合もあります)

ビジネス戦略としての応用例

 カリギュラ効果は、人を誘導し、欲求を促す手段としてとりわけビジネスに多く用いられるようになりました。顕著な例では、広告やサービスのキャッチコピーでしょう。

 「先着○名様のみ」「続きはCMのあと」「お一人様△箱まで」「××したくない人は絶対クリックしないでください」といったように、制限や禁止文句を加えることでかえって興味をそそらせ、サービスへ誘導させる手法はカリギュラ効果を利用しているものです。

 最近はアフィリエイト広告ビジネスが活発化しているため、目にする機会も以前より格段に増えていますね。

日常のあらゆるシーンで活用できる

 カリギュラ効果はビジネス以外でも、ヘルスケアや教育、恋愛など、あらゆるシーンで活用できます。

 たとえばダイエット。健康のためとはいえ「食べてはいけない」「運動しなければならない」などと禁止事項ばかり自分に課すのは、ストレスから余計に食べてしまうし、ダイエットそのものが億劫になってしまって逆効果です。そこで、週1は好きなものを食べてOKとする「チートデイ」を設けたり、「成功したら旅行に行く」など自分にご褒美を与えたりするなど、気持ちにゆとりを持たせることで成功率を高めることができます。

 子育て中の方の中には、なかなか子どもが言うことを聞かずに悩む人は多いでしょう。つい「○○してはダメでしょ!」などと言いがちですが、子どもは好奇心旺盛のため、ただ禁止して抑圧するだけでは欲求が満たされず、意欲が減退し自己肯定感が下がってしまう可能性があります。そのため、「なぜしてはいけないのか」と理由をきちんと言葉で説明し、納得させることが大切だとされています。

 そのほかにも、カリギュラ効果はコミュニケーションのテクニックとしても応用が可能です。たとえば好きな人の気を引くために、わざとつれないフリをするというのはカリギュラ効果を使ったテクニックです。ただし、あまりに冷たいそぶりをする(ハードルを上げる)と、かえって相手の気分を萎えさせてしまうので気をつけましょう。

 日常のさまざまなシーンで使えるカリギュラ効果。みなさんもぜひ試してみては。

<参考サイト>
・カリギュラ効果(日本経営心理士協会)
https://keiei-shinri.or.jp/word/カリギュラ効果/
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