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『中学数学で磨く数学センス』が伝える教科書にない学び方
学研教育総合研究所の調査によると、中学生が最も苦手とする教科は「数学」なのだそうです。数学は、得意な人にとってはとても面白い科目ですが、苦手な人にとっては学校生活における悩みの種になりがち。「学生時代、数学が苦手だったなあ。卒業してからはもう関わることもないけど」と感じている人は少なくないでしょう。
このような方々にぜひ手に取っていただきたいのが、今回ご紹介する『中学数学で磨く数学センス 数と図形に強くなる新しい勉強法』(花木良著、ブルーバックス)です。
かつて数学が苦手で楽しむことができなかった人が、新たな視点から数学と向き合えるような工夫に満ちた内容となっています。著者の花木良氏は岐阜大学教育学部で准教授をつとめる数学研究者で、専門的な研究だけでなく、科学館の展示や数学教育に関する活動でも幅広い実績を持っています。
このことを花木氏はサッカーの比喩で説明しています。サッカーを上手にプレーできる能力が「数学センス」だとすれば、ボールを落とさずに蹴り続けるリフティングが「計算力」に相当するといいます。たしかに、リフティングが得意だからといって、必ずしも優れたサッカー選手とは限りませんよね。
では、どうして数学的センス=計算力と思われがちなのかというと、数学=問題を解くことという先入観があるからです。実際、学校で教わるのは数学の問題の解き方であることがほとんどです。試験でいい点数を取るためには、制限時間内に効率的に問題を解くことが大切ですから、そのためのトレーニングが重視されているわけですね。こうして、「数学」といえば「学校の数学」というイメージになってしまうわけです。
しかし、数学は決して問題を解くだけの学問ではないと花木氏は言います。数学とは、「数」や「図形」、そして「立体」など、数学の対象となる事物の成り立ちや振る舞い、背後に隠された法則や定理を理解し、それを深めていく営みです。そのため、「数学センス」とは、数学を楽しみながら問いを深堀りし、「数」や「図形」の世界について自ら深く探求する能力のことを指すのです。
たとえば、「直角三角形の斜辺の長さの2乗は、他の2辺の長さの2乗の和である」という三平方の定理は、一見シンプルですが、別の角度から見えてくる「2つの2乗した数の和が、また別の2乗した数になっている」という数の性質に気づくことで、さらに数学の探求が深まっていきます。
また、2乗した数だけではなく、3乗した数の場合はどうなるのか、4乗した数ではどうなるのか、といったように、新たな疑問が湧くかもしれません。このような素朴な疑問は、実は数学上の大問題につながっているのです。
2乗の場合は三平方の定理として知られていますが、3乗以上の場合を満たす数はどれだけ探しても見つかりません。これを一般化したものは、「フェルマーの最終定理」として知られています。その証明は、1995年にアンドリュー・ワイルズが完成させるまで、300年以上にわたって未解決の超難問であり続けました。数学上の大問題も、中学数学で習う内容の延長線上にあるのです。
たとえば、九九表の中にある81個の数をすべて足し合わせてみましょう。まず1の段は、1+2+3+4+5+6+7+8+9=45となります。この調子で80回足し算をすると、2025という答えが得られます。学校の試験ならこれで正解ですが、さらに考えてみましょう。答えを求めるもっと良い方法はないでしょうか。
九九表に出てくる81個の数字の総和は2025なので、平均は2025÷81=25となります。つまり、4個の数を集めれば、100となる計算です。この視点から九九表を見返すと、四隅の数を足し合わせて、1+9+9+81=100が作れます。同じように、その隣の2+8+18+72=100、さらにその隣の3+7+27+63=100となります。この見方でいくと、中央の25以外は、4つの数で100を作れることがわかります。そうすれば、わざわざ80回も足し算をすることなく、100×(80÷4)+25=2025だと求めることができます。
本書には、学校で習わない視点がたくさん詰まっています。学校教育では試験や受験でいい点数を取るために、問題の解き方に焦点を当てた教育が行われがちです。ですが、それだけでは「数学センス」を磨くことはできませんし、なにより数学に対する苦手意識を持つ人が増えてしまいます。本書が目指すのは、誰もが自由な発想で数学を探求し、独自の発見を楽しめるような新しい時代なのです。
本書は、数学を「たしなむ」ことの大切さを教えてくれます。試験のために嫌々勉強するだけではもったいない!中学数学の知識さえあれば、誰でも自由に数学の世界を探検できるのです。数学をこれから学ぶ人も、再び学び直したい人も、この本を手に取って、できれば紙と鉛筆を用意して読んでみてください。
このような方々にぜひ手に取っていただきたいのが、今回ご紹介する『中学数学で磨く数学センス 数と図形に強くなる新しい勉強法』(花木良著、ブルーバックス)です。
かつて数学が苦手で楽しむことができなかった人が、新たな視点から数学と向き合えるような工夫に満ちた内容となっています。著者の花木良氏は岐阜大学教育学部で准教授をつとめる数学研究者で、専門的な研究だけでなく、科学館の展示や数学教育に関する活動でも幅広い実績を持っています。
「数学センス」ってどんなもの?
「数学が得意な人はどんな人か」と聞くと、多くの人が「計算が速くできること」と答えるのではないでしょうか。数学=計算というイメージが強いのですが、本当の「数学センス」は計算力ではありません。実際、数学の専門家でさえ、計算に時間がかかったり、簡単な計算を間違えてたりしてしまう人は少なくないそうです。このことを花木氏はサッカーの比喩で説明しています。サッカーを上手にプレーできる能力が「数学センス」だとすれば、ボールを落とさずに蹴り続けるリフティングが「計算力」に相当するといいます。たしかに、リフティングが得意だからといって、必ずしも優れたサッカー選手とは限りませんよね。
では、どうして数学的センス=計算力と思われがちなのかというと、数学=問題を解くことという先入観があるからです。実際、学校で教わるのは数学の問題の解き方であることがほとんどです。試験でいい点数を取るためには、制限時間内に効率的に問題を解くことが大切ですから、そのためのトレーニングが重視されているわけですね。こうして、「数学」といえば「学校の数学」というイメージになってしまうわけです。
しかし、数学は決して問題を解くだけの学問ではないと花木氏は言います。数学とは、「数」や「図形」、そして「立体」など、数学の対象となる事物の成り立ちや振る舞い、背後に隠された法則や定理を理解し、それを深めていく営みです。そのため、「数学センス」とは、数学を楽しみながら問いを深堀りし、「数」や「図形」の世界について自ら深く探求する能力のことを指すのです。
中学数学からはじまる数学センスの磨き方
本書は、そんな「数学する力」を養うことを目的にしています。そして、この力の基礎は中学数学にすべて詰まっているのです。たとえば、「直角三角形の斜辺の長さの2乗は、他の2辺の長さの2乗の和である」という三平方の定理は、一見シンプルですが、別の角度から見えてくる「2つの2乗した数の和が、また別の2乗した数になっている」という数の性質に気づくことで、さらに数学の探求が深まっていきます。
また、2乗した数だけではなく、3乗した数の場合はどうなるのか、4乗した数ではどうなるのか、といったように、新たな疑問が湧くかもしれません。このような素朴な疑問は、実は数学上の大問題につながっているのです。
2乗の場合は三平方の定理として知られていますが、3乗以上の場合を満たす数はどれだけ探しても見つかりません。これを一般化したものは、「フェルマーの最終定理」として知られています。その証明は、1995年にアンドリュー・ワイルズが完成させるまで、300年以上にわたって未解決の超難問であり続けました。数学上の大問題も、中学数学で習う内容の延長線上にあるのです。
「九九表」にひそむ対称性を探ってみよう!
本書から一部、内容を紹介しましょう。第1章の内容は、なんと「九九表」です。中学数学どころか、小学校2年生の内容ですね。1×1=1、1×2=2、……9×9=81という計算結果をまとめると、81マスの表が出来上がります。この九九表にひそむ「対称性」や「数字の規則性」を見つけることがこの章の課題です。たとえば、九九表の中にある81個の数をすべて足し合わせてみましょう。まず1の段は、1+2+3+4+5+6+7+8+9=45となります。この調子で80回足し算をすると、2025という答えが得られます。学校の試験ならこれで正解ですが、さらに考えてみましょう。答えを求めるもっと良い方法はないでしょうか。
九九表に出てくる81個の数字の総和は2025なので、平均は2025÷81=25となります。つまり、4個の数を集めれば、100となる計算です。この視点から九九表を見返すと、四隅の数を足し合わせて、1+9+9+81=100が作れます。同じように、その隣の2+8+18+72=100、さらにその隣の3+7+27+63=100となります。この見方でいくと、中央の25以外は、4つの数で100を作れることがわかります。そうすれば、わざわざ80回も足し算をすることなく、100×(80÷4)+25=2025だと求めることができます。
誰もが自由に数学を楽しむ時代に向けて
このように、答えが求められたらそれで終わりにするのではなく、見方を変えて「別の方法=より良い方法」を探ってみることが大事なのです。本書には、学校で習わない視点がたくさん詰まっています。学校教育では試験や受験でいい点数を取るために、問題の解き方に焦点を当てた教育が行われがちです。ですが、それだけでは「数学センス」を磨くことはできませんし、なにより数学に対する苦手意識を持つ人が増えてしまいます。本書が目指すのは、誰もが自由な発想で数学を探求し、独自の発見を楽しめるような新しい時代なのです。
本書は、数学を「たしなむ」ことの大切さを教えてくれます。試験のために嫌々勉強するだけではもったいない!中学数学の知識さえあれば、誰でも自由に数学の世界を探検できるのです。数学をこれから学ぶ人も、再び学び直したい人も、この本を手に取って、できれば紙と鉛筆を用意して読んでみてください。
<参考文献>
『中学数学で磨く数学センス 数と図形に強くなる新しい勉強法』(花木良著、ブルーバックス)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000387329
<参考サイト>
花木良氏のホームページ
https://www1.gifu-u.ac.jp/~hanaki/homepage.htm
『中学数学で磨く数学センス 数と図形に強くなる新しい勉強法』(花木良著、ブルーバックス)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000387329
<参考サイト>
花木良氏のホームページ
https://www1.gifu-u.ac.jp/~hanaki/homepage.htm
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