テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.10.21

パワハラを回避できる対処法とは?

 ここ数年、総合労働相談コーナーに寄せられる相談件数のうち、パワハラに関係するものが毎年2%ずつ上昇しているという。いま職場でコミュニケーションをめぐる問題が増えているのは間違いないようだ。例えば、職場で働いている方なら、ふとこんな気持ちになったことがあるのではないだろうか。

 やたらとミスを指摘する上司が嫌で会社が憂鬱、あの不遜な態度の部下を指導しなければと思うと気がめいる、などなど。日頃から長く接しなければならない人間への不満や不平は、なかなかうまく切り替えられないものである。しかし、全く対処法がないわけではないのだ。

 心理学には「過去や性格は変えられないが、考え方は変えられる」という言葉がある。この自らの考え方を変える方法の一つとして「アサーション」というものを紹介する。

 自分を伝える際には「攻撃的(アグレッシブ)、非主張的、アサーティブ」という3種類の方法がある。「アサーティブ」とは「相手の主張を認めながら、自分の主張をしっかりと伝える」という方法である。

 例えば、あなたに期日を守らない部下がいたとする。あなたが取る態度は、叱責する、皮肉を言う、無視する、(内心イライラしているが)何も言わない、といったものが考えられるだろう。先の3つはアグレッシブな態度、何も言わないのは非主張的な態度といえる。

 これに対し、アサーティブな態度とは、「どんな事情があるのだろう」と本人に聞いてみることである。理由がどういうものかを聞いた後、自分の主張として、期日を守ることが仕事であるとしっかりと伝えるというものだ。また、これは上下関係が逆でも全く同じである。

 そんなことはしていられないと思うかもしれない。だが、ここで大事なのは、自分の主張の正しさをひとまず「保留」して、自分がいま感じていることを率直に言葉にし、相手の主張を聞いてみることである。すると相手も感じていることを言葉にするかもしれない。そうなると、お互いにいい方向に考えることができ、無用な感情のぶつかり合いを減らすことができるのだ。

 あなたに主張があるように、どのような人間にもその人なりの主張がある。言ってしまえば至極当然なことだが、こういう会話はなかなか難しい。特に苦手な相手とのやり取りでは、どうしても感情が先走る。

 しかし、感情は「自分が起こしている」ことであり、感情の抱き方は人によって異なる。また、怒りや悲しみといった感情は過去の経験の積み重ねによって、脳が反応しやすくなっている部分と考えられる。こういう意味で「アサーション」とは、「自分を確かめる方法」でもあるのだ。

 今日からでもできる職場円滑法のひとつとして、実践してみてはいかがだろうか?

<参考文献>
・『アサーション入門 自分も相手も大切にする表現法』(平木典子著 講談社現代新書)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識

ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識

ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム

「ヒトは共同保育の動物だ」――核家族化が進み、子育ては両親あるいは母親が行うものだという認識が広がった現代社会で長谷川氏が提言するのは、ヒトという動物本来の子育て方法である「共同保育」について生物学的見地から見直...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/08/31
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長 元総合研究大学院大学長
2

日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道

日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道

未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発

日本は第二次大戦後に軍事飛行等の技術開発が止められていたため、宇宙開発において米ソとは全く違う道を歩むことになる。日本の宇宙開発はどのように技術を培い、発展していったのか。その独自の宇宙開拓の過程を解説する。(...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/02
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
3

天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制

天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制

「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉

現代流にいうと地政学的な危機感が日本を中央集権国家にしたわけだが、疫学的な危機によって、それは早い終焉を迎えた。一説によると、天平期の天然痘大流行で3割もの人口が減少したことも影響している。防人も班田収授も成り行...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/01
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
4

世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係

世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係

数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家

数学も音楽も生きていることそのもの。そこに正解はなく、だれもがみんな数学者で音楽家である。これが中島さち子氏の持論だが、この考え方には古代ギリシア以来、西洋で発達したリベラルアーツが投影されている。この信念に基...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/08/28
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
5

発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る

発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る

睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題

社会的時差ボケの発生には、働き方も大きな影響をもっている。特にシフトワークによって不規則な生活リズムを強いられる業種ではその回避が難しい。今回は、発がんリスク、メンタルヘルスの不調など、シフトワークが抱える睡眠...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/08/30
西多昌規
早稲田大学スポーツ科学学術院教授 早稲田大学睡眠研究所所長