社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.10.30

爪の黒い線は病気のサイン?できる原因とは

 爪は、指先を保護する体のバリア機能として、そして力の調節や姿勢の維持といった身体を支える機能としてなど、地味ながら健康を守るまさに縁の下の力持ち的な存在です。「爪は健康のバロメーター」といったように、爪の状態が健康状態の指標になるともいわれます。

 そんな爪に、突如「黒い線、すじ」が現れたら、驚きますよね。黒い線は問題ないものもありますが、大きな病気のサインである可能性もあります。

 今回は、爪に現れる黒い線の正体と、セルフケアについて解説します。

黒い線ができる理由

 まずは問題のない黒い線の正体から見ていきましょう。

【色素沈着(シミ・ほくろ)】
 爪は皮膚(ケラチン)が変化して固くなったもので、いわば皮膚の一部です。そのため皮膚と同じく紫外線を浴びたことでメラニン色素が沈着し、シミやほくろのように黒く変色します。皮膚の場合は円形ですが、爪の場合は縦に黒く変色します。

【加齢】
 皮膚と同じく、爪も加齢の影響を受けます。皮膚のシワのように爪のすじが目立つようになり、さらにメラニン色素の沈着で黒ずんでいきます。

【小児期特有のもの】
 生後間もない子どもの爪に、黒い線ができることがあります。これは爪甲色素線条と呼ばれるもので、爪の根元にできたほくろ(母斑細胞)が原因です。

 黒い線は5歳ごろまで幅が広がることがありますが、子どもの成長にしたがい消失することがほとんどで、15歳までは経過観察で問題ないとされています。

 ただし成人になっても消失しない場合、悪性の爪甲色素線条である可能性があります。

【内出血】
 指を強く挟んだり、打ちつけたりすることで爪が内出血を起こし、爪に黒や赤紫に変色した縦線が現れます。ほとんどの場合、爪が伸びるにしたがって色も薄くなり、痛みも軽減されていきますので問題ありませんが、痛みがいつまでも続くなど異常が見られたら骨折などの可能性もあります。

 次に、病気のサインとなる黒い線についてです。

【皮膚ガン(メラノーマ)】
 メラニン色素の沈着によってできるシミやほくろはほとんどが良性ですが、まれに悪性のものがあります。悪性とはつまりガンのこと。メラノサイトという色素細胞がガン化した皮膚ガンの一種で「悪性黒色腫」または「メラノーマ」と呼ばれます。

 外見は非対称で不規則な形、色にグラデーションがある、線の幅が6mm以上、表面が隆起しているなど、特徴的なものですが例外も多く、良性のものと見分けがつきにくいとされています。病気が進行すると爪が変形したり、臓器転移したりする可能性があります。

【アジソン病】
 「原発性副腎皮質機能低下症」と呼ばれる病気で、副腎皮質ホルモンの低下や欠乏によって引き起こされます。副腎皮質ホルモンが少ない状態が続くと、爪床と呼ばれる皮膚と爪が接する部分(外見ではピンク色に見える部分)から色素沈着が見られるほか、皮膚やひじ、ひざ、口内の歯肉にも色素沈着が現れます。

 アジソン病にかかると倦怠感や食欲の低下、低血圧、節々の痛みなどが現れ、吐き気や下痢など消化器系の症状も引き起こされます。またこれらにともなう無気力、不安感、うつ症状など、精神疾患も出現します。

正しいセルフケアをして爪を守ろう

 黒い線ができないよう、普段から適切な予防や体調管理が大切です。

 爪も皮膚が変化したものなので、基本的には皮膚と同じく紫外線や乾燥に注意し、日焼け止めや保湿を欠かさないようにしましょう。体調を崩しやすい季節の変わり目は特に、できるだけストレスを溜めすぎないよう、規則正しい生活を送ることも意識したいところ。

 また黒い線の多くは問題ないものですが、症状にいち早く気づくためにも、普段から爪のチェックをしておくことも大切です。黒い線が急激に広がったなど異常が見られた場合は、すぐに皮膚科を受診しましょう。

<参考サイト>
・爪の病気(日本皮膚科学会)
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa38/index.html
・爪甲色素斑(爪甲色素線条)とその対応(京都皮膚科医会)
https://kyoto-derma.org/skin/004.html
・悪性黒色腫(メラノーマ)(国立がん研究センター 希少がんセンター)
https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/2021/index.html
・アジソン病(指定難病83)(難病情報センター)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/44
・原発性副腎皮質機能低下症(アジソン病)(社会福祉法人 恩賜財団 済生会)
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/primary_adrenocortical_insufficiency/
・爪に現れた縦線の正体とは?安全なモノと注意すべきモノの見分けかた(埼玉巻き爪矯正院)
https://川口.巻き爪専門.jp/news/what-are-the-vertical-lines-that-appear-on-the-nails/

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題

保守的な軍国化によって、内戦への機運が高まっているアメリカだが、MAGAと極左という対立図式は表面的なものにすぎない。その根本に横たわっているのは白人とユダヤ人という人種の対立であり、それはカーク暗殺事件によって露...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/11/06
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
3

「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの

「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの

徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために

10年の修行で自我を手放し宇宙と一体化する境地に達すると、自分中心からホリスティックな視点に変わり、物事の表と裏の共通点が見えてきて、その本質がつかめるという田口氏。人生は常に新たな命題を解き明かし続ける旅である...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/11/08
4

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」

40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」

人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉

40代前半で訪れる「中年の危機」を脱するためには、会社中心の人生から「未来は自分で作る」という自分を中心とした人生への意識転換が必要だ。そのためのカギは、「Will・Can・Create」の3つから自分の「人生の成長戦略」を考...
収録日:2022/06/15
追加日:2022/09/24
徳岡晃一郎
株式会社ライフシフト 代表取締役会長CEO 多摩大学大学院名誉教授・特任教授