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『コミュニティデザインの現代史』で巡る、まちづくりの歴史
「コミュニティデザイン」――近年この言葉を耳にする機会が増えましたが、これは地域づくりや都市計画において、よく使われる概念の言葉です。具体的には、住民や地域の人々が主体的に関わり、協力しながら地域社会をより良い方向に導くための取り組みのことで、地域の課題を解決し、住みやすさや生活の質を高めるために、さまざまな分野の専門家や住民が共同で行います。このような取り組みは「まちづくり」とも呼ばれることがあり、都市計画や地域活性化の分野で広く知られています。
コミュニティデザインが注目される背景には、従来のトップダウン型の都市計画が抱えていた限界があります。かつての都市計画は、行政や専門家の主導で進められることが多く、住民の意見が十分に反映されないことが少なくありませんでした。しかし、現代では、地域の問題に最も深く関わるのは地域住民自身であり、その住民が主体的に参加する形でまちづくりを進めることが、住みやすい社会を築くために重要だと考えられています。
今回ご紹介する『コミュニティデザインの現代史 まちづくりの仕事を巡る往復書簡』(饗庭伸・山崎亮著、学芸出版社)は、コミュニティデザイナーである山崎亮氏と、都市計画家である饗庭伸氏の往復書簡形式で、コミュニティデザインの歴史を探る一冊です。二人は、まちづくりの現場や先駆者たちとの対話を通じて「コミュニティデザインとは何か」という問いに対する答えを探求していきます。読者はこの探検の記録を通して、コミュニティデザインやまちづくりの将来像を考えるヒントを得ることができるはずです。
もう一人の著者である饗庭伸氏は都市計画家であり、現在は東京都立大学の教授を務めています。1971年兵庫県生まれで、早稲田大学で学び博士号を取得しています。専門は都市計画やまちづくりで、特に人口減少時代における都市計画や、住民参加型の都市デザインに関する研究で知られています。主な著書として、単著では『都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画』(花伝社)、『平成都市計画史 転換期の30年間が残したもの・受け継ぐもの』(花伝社)、編著では『初めて学ぶ都市計画』(市ヶ谷出版社)、『まちづくりの仕事ガイドブック まちの未来をつくる63の働き方』(学芸出版社)などがあります。
最初にインタビューされるのは、1936年生まれの都市計画家であり、参加型まちづくりの草分け的存在として知られている林泰義氏です。林氏は1969年に「計画技術研究所」を設立し、町田市、世田谷市をはじめとする各地の市民参加型プロジェクトに民間側から関わってきた人物です。
インタビューでは、林氏のこれまでの活動を振り返りつつ、彼のワークショップに影響を与えた「冒険男爵」のエピソードや、玉川まちづくりハウスで取り組んだ地域通貨DENの話、まちづくりと経済システムに関することなどが語られます。
このインタビューを受けて、著者の二人は手紙のやり取りを続けます。まず山崎氏がインタビューを振り返りながら、林氏が1970年代に行っていた活動について話を広げます。当時すでに、住民参加型の総合計画づくりが始まっていたのか。もしそうであれば、どのようなワークショップが行われていたのか。山崎氏は、林氏にとっての冒険男爵のような存在である「メリーさん」についても言及しています。また、林氏が世田谷でまちづくりに関わっていた頃、都市計画家の木下勇氏や建築家の新居千秋氏がどのような活動をしていたのかにも書いています。
まず、コミュニティ計画について。これは1970年代に盛んに議論されたテーマです。コミュニティデザインには複数の流れがあり、それは林氏を中心にいくつかの流れをたどることができるといいます。本書ではそれぞれの流れを追っていくことになりますが、ここでは少し時代をさかのぼり、1960年代後半に試行錯誤されていた住民参加型のコミュニティ計画づくりに関する議論が紹介されています。
次に、1970年代の町田でのまちづくりについてです。ここでは「考えながら歩くまちづくり」というスローガンのもと、住民参加型のプロジェクトが実践されました。住民が積極的に関わり、そこで得られたアイデアや知見を全体にフィードバックするという、動的な総合計画の作成手法が取られていました。このように、住民の声を反映しながら進行するコミュニティ計画が、すでに1970年代から存在していたのです。
そして、コミュニティデザインを論じる際に欠かせない「アソシエーションデザイン」についてもまとめられています。饗庭氏によると、コミュニティ計画は「特定の土地に根ざした、はっきりとした地区を基盤にする」もので、いわゆる狭義のコミュニティに基づく計画です。一方、アソシエーションは、人とのつながりを基盤とするものであり、町田市の「考えながら歩くまちづくり」はこのアソシエーションを根拠に進められました。
当時は、コミュニティが主流で、アソシエーションは邪道と見なされていましたが、その後50年間でコミュニティは次第に流行らなくなり、代わりにアソシエーションが注目を集めるようになっていきました。それに伴い、「コミュニティ計画」という言葉も使われなくなっていったのです。饗庭氏の手紙では、コミュニティ計画、まちづくり、そしてアソシエーションデザインの歴史が簡潔にまとめられており、その流れが非常にわかりやすく整理されています。
本書で描かれたコミュニティデザインの歴史は、まちづくりの方法だけでなく、市民参加が地域社会の発展にどれほど重要な役割を果たしているかを示しています。これからの地域の未来を考える上で、本書は市民参加型のまちづくりがいかに重要であるかを再認識させてくれる、貴重な一冊となるでしょう。
コミュニティデザインが注目される背景には、従来のトップダウン型の都市計画が抱えていた限界があります。かつての都市計画は、行政や専門家の主導で進められることが多く、住民の意見が十分に反映されないことが少なくありませんでした。しかし、現代では、地域の問題に最も深く関わるのは地域住民自身であり、その住民が主体的に参加する形でまちづくりを進めることが、住みやすい社会を築くために重要だと考えられています。
今回ご紹介する『コミュニティデザインの現代史 まちづくりの仕事を巡る往復書簡』(饗庭伸・山崎亮著、学芸出版社)は、コミュニティデザイナーである山崎亮氏と、都市計画家である饗庭伸氏の往復書簡形式で、コミュニティデザインの歴史を探る一冊です。二人は、まちづくりの現場や先駆者たちとの対話を通じて「コミュニティデザインとは何か」という問いに対する答えを探求していきます。読者はこの探検の記録を通して、コミュニティデザインやまちづくりの将来像を考えるヒントを得ることができるはずです。
コミュニティデザイナー×都市計画家の文通
本書は、二人の人物の文通がもとになっているユニークな書籍です。著者の一人である山崎亮氏は、日本を代表するコミュニティデザイナーであり、地域の課題を地域住民が主体的に解決するための取り組みを幅広く手掛けています。1973年愛知県生まれで、大阪府立大学および東京大学で学び、工学博士の学位を取得しています。2005年に設立したデザイン事務所「studio-L」を通じて、地域再生や住民参加型の総合計画作り、パークマネジメントなど、さまざまなプロジェクトに関わっています。主な著書に『コミュニティデザイン』(学芸出版社)、『コミュニティデザインの時代』(中公新書)、『コミュニティデザインの源流』(太田出版)、『縮充する日本』(PHP新書)などがあります。もう一人の著者である饗庭伸氏は都市計画家であり、現在は東京都立大学の教授を務めています。1971年兵庫県生まれで、早稲田大学で学び博士号を取得しています。専門は都市計画やまちづくりで、特に人口減少時代における都市計画や、住民参加型の都市デザインに関する研究で知られています。主な著書として、単著では『都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画』(花伝社)、『平成都市計画史 転換期の30年間が残したもの・受け継ぐもの』(花伝社)、編著では『初めて学ぶ都市計画』(市ヶ谷出版社)、『まちづくりの仕事ガイドブック まちの未来をつくる63の働き方』(学芸出版社)などがあります。
「コミュニティデザイン」の先駆者たちにインタビュー
本書では、「コミュニティデザイン」の現代史を語る上で欠かせない先駆者たちを、1920年代以前の生まれから、1950年代後半~1960年代前半生まれまでの4つの世代に分類しています。それぞれの世代から5名の重要な人物にインタビューし、その記録が「パイオニア訪問記」として収められています。最初にインタビューされるのは、1936年生まれの都市計画家であり、参加型まちづくりの草分け的存在として知られている林泰義氏です。林氏は1969年に「計画技術研究所」を設立し、町田市、世田谷市をはじめとする各地の市民参加型プロジェクトに民間側から関わってきた人物です。
インタビューでは、林氏のこれまでの活動を振り返りつつ、彼のワークショップに影響を与えた「冒険男爵」のエピソードや、玉川まちづくりハウスで取り組んだ地域通貨DENの話、まちづくりと経済システムに関することなどが語られます。
このインタビューを受けて、著者の二人は手紙のやり取りを続けます。まず山崎氏がインタビューを振り返りながら、林氏が1970年代に行っていた活動について話を広げます。当時すでに、住民参加型の総合計画づくりが始まっていたのか。もしそうであれば、どのようなワークショップが行われていたのか。山崎氏は、林氏にとっての冒険男爵のような存在である「メリーさん」についても言及しています。また、林氏が世田谷でまちづくりに関わっていた頃、都市計画家の木下勇氏や建築家の新居千秋氏がどのような活動をしていたのかにも書いています。
文通から広がる「コミュニティデザイン」のこれまでとこれから
山崎氏が話題を広げ、いくつか質問をすると、それを受けて饗庭氏が回答し、情報を整理するというパターンで文通が進んでいきます。今回は、林氏がまちづくりの歴史の中で導入してきたことが整理されていきます。まず、コミュニティ計画について。これは1970年代に盛んに議論されたテーマです。コミュニティデザインには複数の流れがあり、それは林氏を中心にいくつかの流れをたどることができるといいます。本書ではそれぞれの流れを追っていくことになりますが、ここでは少し時代をさかのぼり、1960年代後半に試行錯誤されていた住民参加型のコミュニティ計画づくりに関する議論が紹介されています。
次に、1970年代の町田でのまちづくりについてです。ここでは「考えながら歩くまちづくり」というスローガンのもと、住民参加型のプロジェクトが実践されました。住民が積極的に関わり、そこで得られたアイデアや知見を全体にフィードバックするという、動的な総合計画の作成手法が取られていました。このように、住民の声を反映しながら進行するコミュニティ計画が、すでに1970年代から存在していたのです。
そして、コミュニティデザインを論じる際に欠かせない「アソシエーションデザイン」についてもまとめられています。饗庭氏によると、コミュニティ計画は「特定の土地に根ざした、はっきりとした地区を基盤にする」もので、いわゆる狭義のコミュニティに基づく計画です。一方、アソシエーションは、人とのつながりを基盤とするものであり、町田市の「考えながら歩くまちづくり」はこのアソシエーションを根拠に進められました。
当時は、コミュニティが主流で、アソシエーションは邪道と見なされていましたが、その後50年間でコミュニティは次第に流行らなくなり、代わりにアソシエーションが注目を集めるようになっていきました。それに伴い、「コミュニティ計画」という言葉も使われなくなっていったのです。饗庭氏の手紙では、コミュニティ計画、まちづくり、そしてアソシエーションデザインの歴史が簡潔にまとめられており、その流れが非常にわかりやすく整理されています。
本書で描かれたコミュニティデザインの歴史は、まちづくりの方法だけでなく、市民参加が地域社会の発展にどれほど重要な役割を果たしているかを示しています。これからの地域の未来を考える上で、本書は市民参加型のまちづくりがいかに重要であるかを再認識させてくれる、貴重な一冊となるでしょう。
<参考文献>
『コミュニティデザインの現代史 まちづくりの仕事を巡る往復書簡』(饗庭伸・山崎亮著、学芸出版社)
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761529000/
<参考サイト>
饗庭伸氏のX(旧Twitter)
https://x.com/shinaiba
山崎亮氏のフェイスブック
https://www.facebook.com/ryo.yamazaki
『コミュニティデザインの現代史 まちづくりの仕事を巡る往復書簡』(饗庭伸・山崎亮著、学芸出版社)
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761529000/
<参考サイト>
饗庭伸氏のX(旧Twitter)
https://x.com/shinaiba
山崎亮氏のフェイスブック
https://www.facebook.com/ryo.yamazaki
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