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DATE/ 2024.12.14

スマホゲームの嘘広告は違法にならないのか?

 近年、ネットにくわえて、テレビでも多くみかけるようになったスマホゲームの宣伝。そんな時代において、やはりというべき問題が浮上しています。それは、広告内容と実際のゲーム画面が大きく異なるという誇大広告や広告詐欺という問題です。

 SNSやWEBを導線としてゲームを擬似体験できる「プレイアブル広告」という手法が、スマホゲームの広告手法として普及しています。ゲームの面白さやユーザビリティをダイレクトに伝えることができるのですが、この疑似体験を過剰に魅力的にしようとした結果、実際のゲームと違う印象になってしまったり、通常の広告においても、ゲームの最も魅力的な部分だけを強調し、単調な繰り返し作業や時間制限などの面倒な部分は省略するために、実際のプレイ感の印象から誇大広告と見做されるというケースです。

誇大広告が疑われるスマホゲームとは?

 敵の拠点に攻め入ったり、敵陣地を制圧したりするド派手で戦略的な戦闘シーンが広告で表現されていながら、実際ダウンロードしてプレイしてみると単純なパズルゲームでしかなく、広告で表現された戦略的な要素はほとんどなかったり、また、広告では美少女キャラクターのグラフィックと過激なコピーライティングで煽っておきながら、実際のゲームでは比較的単純な戦略シミュレーションゲームで、期待させるようなセクシャルで萌えな要素はほとんどないというケースです。

なぜスマホゲームの広告詐欺は増加するのか?

 スマホゲームにおける広告詐欺の増加は、ひとつに法的規制の緩さに起因します。

 イギリスなど広告基準協議会が内容をチェックし、広告表示の禁止を通告する国があるのに対し、日本では広告表示に関する法的規制が緩く、その違法性を問うことが難しい環境なのです。

 加えて、もう一つの原因は、スマホゲーム運営会社の切迫した状況とモラルの低さが挙げられます。

 多くのスマホゲームは基本プレイ無料であり、ゲームを有利に進めるためのアイテムを売ったり、イベントを開催してランキング上位にのみ与えられるインセンティブを付与することで課金を促しています。

 その課金が運営会社の収益となりますが、課金してくれるユーザーを獲得するためには、まずは無課金でもゲームをプレイしてくれるユーザーの母数を増やす必要があります。スマホゲームの選択肢が無数にある現在では、ダウンロード数を増やすこと自体が簡単ではないため、ユーザーを増やすために多少の誇大広告はやむを得ないという考え方です。

広告詐欺のゲームを減らすための対策

 詐欺的なイメージの誇大広告は、一時的にダウンロード数を増やすことはできますが、実際のゲーム内容と大きく異なる広告を出すことで、少なからず悪影響となりかねません。

 広告で見たゲームと実際のプレイ体験が大きく異なると、ゲームをプレイする意欲を失わせ、プレイヤーの減少に繋がります。ダウンロードした流れで、イメージしたゲームとは違っていてもプレイを持続するユーザーがいないとはいいきれませんが、結果的にそのゲームのプレイヤーが減少する原因となります。

 もっとも大きな問題は、広告詐欺蔓延によるゲーム業界全体の信用失墜です。モラルと節度ある広告を展開しているゲームに対しても疑念を抱かせ、新しいスマホゲームを試す意欲をなくしてしまっては本末転倒といえるでしょう。

 誇大広告に対しては、プレイユーザー自身も目を光らせていくことが大きな対策となります。

 レビューを確認する、試用版をプレイするなどして、ダウンロード前に広告の内容とゲームの内容が一致しているか確認し、問題があればアプリストアや開発会社に報告しましょう。

 誇大広告や広告詐欺による不正を報告することで他のユーザーを守るだけでなく、ゲーム業界浄化のための一助となります。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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