社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
道路沿いの「小さな鳥居」の正体は?
神社はないのに鳥居だけ……?
山や雑木林へとつながる道路脇などに、小さな鳥居が建っていることがあります。この鳥居は大人の膝や腰くらいの高さで、赤く塗った木材やプラスチックなどでつくられています。鳥居といわれてすぐに思い浮かべるようなくぐれる高さではなく、つくりも簡素なものです。そしてなにより不思議なのは、周辺に神社はないということ。鳥居は神様が住む聖域を人間が住む俗界と分けるための結界の役割を持ち、神社の入り口を示すシンボルです。それなのになぜ、小さな鳥居の周辺には神社がないのでしょうか。
その理由は、鳥居が神様を連想させる心理を利用した“ある目的”のために置かれているからなのです。
「罰が当たる」という心理
小さな鳥居が置かれている場所は都市部と山間部の中間が多く、車の通り道であると同時に人目にはつきにくい環境です。このような場所には「見つからなければいいや」というよからぬ考えを持った人がやってきて、ゴミを不法投棄していってしまいます。中には軽い気持ちでポイ捨てする人や、用を足していく人まで……。東北地方の不法投棄に悩む自治体では、年間約2トンものゴミが勝手に捨てられていたといいます。そこで登場したのがこの小さな鳥居でした。鳥居は神様がいる場所。そんな場所にゴミを捨てたら「罰が当たる」という心理にはたらきかけられるのではないかという考えのもとに、不法投棄が多い場所に設置されたのです。
その効果はてきめんでした。年間約2トンの不法投棄に悩んでいた自治体は年間約400キログラムまで減ったそうです。「鳥居は神聖なもの」、「鳥居に失礼をはたらいたら天罰が下る」という考え方は日本人のDNAにしっかり刻まれていることがわかりますね。誰も見ていなくても神様は見ているのです。
鳥居を置いているのは誰?
“神様の力”で劇的な不法投棄撃退能力を発揮した小さな鳥居ですが、周囲に神社がないことからもわかるとおり、実際には神社とは関係ありません。設置しているのも神社の関係者ではなく、不法投棄に悩む自治体の行政やボランティアが担当していることがほとんどです。中には自治体の許可を得た清掃会社が設置していることもあります。小さな鳥居の正式な発祥はどこなのかわかっていませんが、日本全国の山道近くの道路脇に設置されています。はじめは自治体の人々が木材を切ったりプラスチックのパイプを組み合わせたりして手作りしていましたが、近年ではれっきとした不法投棄対策用品として販売もされています。
たとえば、埼玉県の環境対策製品製造会社・ニューマテリアル社の製品には、間伐材を再利用した「ごみよけトリー」という名称の小さな鳥居があります。ごみよけトリーは鳥居に似せてありますが、正式な神社の鳥居の形式とは異なっており、宗教的には無関係であるという配慮もされている製品です。
ゴミを勝手に捨てる人たちが小さな鳥居を見て不法投棄をためらうのは、それが“いけないこと”だとわかっているから。これからも小さな鳥居は心ない人たちの心にいけないことを自覚させるためにがんばってくれるのです。
<参考サイト>
道路沿い謎の「小さな鳥居」いったいコレは?何のために?調べてみたら深ーいワケが・・・│TBS NEWSDIG
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/173441
「神様が見てるよ」小さな鳥居があちこちに 近くに神社もなく…そのナゾを調査した【長崎発】│FNNプライムオンライン
https://www.fnn.jp/articles/-/198177
「ごみよけトリー」不法投棄対策・不法投棄防止製品│ニューマテリアル
http://www.new-material.com/gomiyoke-tori.htm
道路沿い謎の「小さな鳥居」いったいコレは?何のために?調べてみたら深ーいワケが・・・│TBS NEWSDIG
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/173441
「神様が見てるよ」小さな鳥居があちこちに 近くに神社もなく…そのナゾを調査した【長崎発】│FNNプライムオンライン
https://www.fnn.jp/articles/-/198177
「ごみよけトリー」不法投棄対策・不法投棄防止製品│ニューマテリアル
http://www.new-material.com/gomiyoke-tori.htm
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは
地政学入門 ヨーロッパ編(9)EUの深化・拡大とトルコの問題
国際政治の理論として国同士の経済交流、相互依存が安全保障、つまり平和を維持できると伝統的に考えられてきたが、今般の国際政治ではそれは必ずしも当てはまらないようだ。そこでEUの問題である。国の垣根を越えて世界国家に...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/30
最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか
第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ
反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か
昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
遍歴とアバター…多様な仏、多様な菩薩が変容する面白さ
おもしろき『法華経』の世界(5)遍歴するアバター
『銀河鉄道の夜』の著者・宮沢賢治にとってもそうだが、『法華経』の重要なテーマは「遍歴」であると考えられる。遍歴や修行の旅は、仏教的には方便を用いて悟りに向かうことだが、『大日経』住心品には悟りと大悲こそが究境と...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/06/29
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24