DATE/ 2026.07.20

仕事や冠婚葬祭で差がつく漢字マナー

丁寧に書こうとするほど堅苦しくなる?

 上司や目上の人に送る文面は、失礼のないように書き上げたいですよね。しかし、丁寧に仕上げようとすればするほど、できあがったものはなんだか堅苦しくなってしまうなんてことも……そんなときに注目したいのが、漢字の使い方です。

 漢字を使った文章は丁寧さや信頼感を演出できますが、多すぎると圧迫感が強くて堅苦しい雰囲気まで出てしまいがち。実は、文化庁の文化審議会がまとめた公用文作成のガイドでも、漢字をあえてひらがなで書くパターンが紹介されています。それはおおまかに次のようなもの。

・基本的に常用漢字のみ使う:常用漢字は、現代日本で通常使用される漢字の目安として国が定めたもの。これ以外の漢字は基本的に使わないほうがよいとされています。ただし、人名や地名などの固有名詞は常用漢字以外も使用してよいことになっています。

・常用漢字以外はひらがなで書く:常用漢字以外の漢字はひらがなで書く、いわゆる「開く」ことが推奨されています。「敢(えて)」や「叩(く)」は常用漢字ではないので、「あえて」や「たたく」。また、ひらがなで書いても意味が伝わりやすい「杜撰」や「石鹸」は「ずさん」や「せっけん」と書くほうがよいとされています。

・常用漢字でもひらがな表記が推奨されるパターン:程度を表す「位」、「程」は「くらい」、「ほど」。形式を表す「時」、「所」は「とき」、「ところ」。当て字や熟語になっている「流石」、「一寸」は「さすが」、「ちょっと」。挨拶などで漢字の意味が薄れている「今日は」、「有難う」は「こんにちは」、「ありがとう」など。

・動詞、副詞、形容詞でひらがな表記が推奨されるパターン:動詞、副詞、形容詞は基本的に漢字が推奨ですが、一部でひらがなが推奨されているものも。動詞の「出来る」は「できる」、副詞の「色々」は「いろいろ」、形容詞の「無い」は「ない」など。

 意外とひらがな表記をおすすめされている漢字が多いことに気づいていただけるのではないでしょうか。このガイドに沿って文章を書くと堅苦しくなりすぎず、それでいてきちんとした雰囲気が出せるので参考にしてみてください。

いろいろな場面での漢字の使い方

 文化庁のガイドはどのようなシチュエーションにも使える汎用的な指標です。このほかにも慣例での使い分けや、ビジネスメールや冠婚葬祭などの場面で気をつけたい漢字表現があるのでご紹介しましょう。

・「お」と「御」の使い分け:言葉を美化する接頭語「お」と「御」の使い分けは、基本的に飾る言葉が訓読みか音読みかで決まります。訓読みの場合は「お」がついて「お手紙」、「お美しい」。音読みの場合は「御」がついて「御返信」、「御親切」のようになります。ただし、日常会話でも使われる親しみのある言葉は音読みでも「お電話」、「お元気」のように「お」をつけることが一般的です。

・同じ読みの漢字が複数あるとき:「おか(す)」と読む漢字には「犯」、「侵」、「冒」があり、それぞれに成り立ちや意味は違います。そして「病におかされる」という文章の場合、「ルールを破る」を意味する「犯」は違うとしても、「入り込む」を意味する「侵」と「押し切る、けがす」を意味する「冒」はどちらも間違いではありません。このように明確な使い分けが難しいときは、ひらがな表記でも問題ないとされています。

・「様」と「殿」の使い分け:敬称の「殿」は同等か目下の人に使うものなので、特にビジネスメールで社外の人には使わないようにしましょう。「様」は目上の人にも目下の人にも使える敬称なので、基本的に「様」を使えば失礼になることはありません。また、「様」と「殿」は個人につける敬称なので、会社や部署にメールや手紙を送るときは「御中」を使うのが適切です。

・「お疲れさまです」の使い方:「お疲れさまです」は労をねぎらう言葉なので、目上の人が目下の人に使うという考え方もありました。しかし近年では上司に使うこともポジティブにとらえられており、あまり気にせず使って大丈夫です。ただし、ねぎらいの言葉なので朝一番やメールの最初に使われると違和感を持つ人もいます。挨拶として失礼ではありませんが、使いどころは気にかけたほうがいいかもしれません。

・結婚式での漢字ルール:おめでたいからこそ地雷もたくさん潜んでいる結婚式。縁起のいい言葉を選び、不吉な言葉は徹底的に避けなければなりません。避けるべき漢字の代表格は「別」、「離」、「冷」。「終」、「切」も避けてください。「忙」は「亡」が入っているのでこれもタブー。忌み言葉といわれるこれらの漢字は、たとえば「ご多忙」は「ご多用」のように言い換えて、お祝いの気持ちを適切に伝えましょう。

・お葬式での漢字ルール:お葬式に不可欠な、お悔やみの気持ちを表す香典。この表書きにはいくつか種類があります。これは仏教の考え方で、亡くなった人の魂がどこにいるかの違いです。四十九日前はまだこの世にいるので「御霊前」、四十九日後は成仏するので「御仏前」となります。ただし宗派によって違いがあるため、宗派がわからず不安なときはどの宗派でも失礼にならない「御香典」と書くのが無難です。

 こんなに決まりがあると、頭が混乱して不安になる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、一番大事なのは言葉を伝える相手への思いやりです。漢字の間違いを心配するよりも、受け取った相手はどう感じるかを考えて、丁寧に漢字をつづってくださいね。

<参考サイト>
・公用文作成の考え方|文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/93651301_01.pdf
・ことば研究館「国語兼研の窓」|国立国語研究所
https://kotoba.ninjal.ac.jp/category-mado/mado_qa/
・【結婚式の忌み言葉】使ってはいけない理由&言い換え一覧|ゼクシィ
https://zexy.net/article/app002004019/
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